|
はじめに 第1部 フランスの社会保障制度 第1章 社会保障制度の枠組みとその変遷 第2章 社会保障関連予算 第3章 フランスの社会保障及び社会扶助の概要 第2部 社会福祉関連組織 第1章 地方分権化による権限委譲 第2章 行政組織 第3章 社会福祉関連機関 第3部 フランスの高齢者福祉制度 第1章 フランスにおける高齢者問題の背景 第2章 フランスの高齢者福祉の体系 第3章 所得政策 第4章 在宅維持 |
|
はじめに ------------------------------------------------------- 第1部 フランスの社会保障制度 ---------------------------------- 第1章 社会保障制度の枠組みとその変遷 ------------------------ 1 社会保障の概念 ----------------------------------------- 2 社会保障制度の変遷 -------------------------------------- 第2章 社会保障関連予算 -------------------------------------- 第3章 フランスの社会保障及び社会扶助の概要 ------------------- 1 社会保障 ----------------------------------------------- 2 社会扶助 ----------------------------------------------- 第2部 社会福祉関連組織 --------------------------------------- 第1章 地方分権化による権限委譲 ------------------------------ 1 地方分権化 --------------------------------------------- 2 地方分権化以降の国と県の役割 --------------------------- 第2章 行政組織 ---------------------------------------------- 1 国 ----------------------------------------------------- 2 州 ----------------------------------------------------- 3 県 ----------------------------------------------------- 4 市町村 ------------------------------------------------- 第3章 社会福祉関連機関 -------------------------------------- 1 市町村社会福祉センター ---------------------------------- 2 社会保障金庫 ------------------------------------------- 3 民間組織 ----------------------------------------------- 第3部 フランスの高齢者福祉制度 -------------------------------- 第1章 フランスにおける高齢者問題の背景 ----------------------- 1 高齢者の定義 ------------------------------------------- 2 人口の高齢化 ------------------------------------------- 3 高齢者の収入と健康状態 --------------------------------- 第2章 フランスの高齢者福祉の体系 ----------------------------- 1 高齢者福祉の体系 --------------------------------------- 2 高齢者対策の調整 --------------------------------------- 第3章 所得政策 ---------------------------------------------- 1 財政的援助 --------------------------------------------- 2 社会保障負担及び税制上の優遇措置 ----------------------- 3 その他の優遇措置 --------------------------------------- 第4章 在宅維持 ---------------------------------------------- 1 家事援助 ----------------------------------------------- 2 生活補助サービス --------------------------------------- 3 在宅介護 ----------------------------------------------- 4 デイ・センター ------------------------------------------- 5 居住環境の改善 ----------------------------------------- 6 その他 ------------------------------------------------- (参考文献) (以下については「フランスの高齢者福祉(2)」に掲載) 第5章 収容施設対策 1 高齢者施設の分類 2 ホスピス 3 高齢者住宅 4 老人ホーム 5 要介護老人受入施設 6 ユニテ・ド・ビ 7 一時的収容施設 8 民間の老人ホーム 9 長期滞在施設 10 収容施設に関する共通事項 第6章 高齢者の有料家庭委託 1 認定 2 契約 3 福祉的・医療福祉的検査 4 研修 5 報酬 6 社会保険、社会扶助等に関する措置 7 所得税に関する措置 8 保険 (参考文献)(再掲) |
1 2 2 2 3 6 9 9 14 18 18 18 18 20 20 20 20 21 22 22 23 24 26 26 26 26 27 30 30 30 31 31 37 40 41 41 47 48 55 56 57 |
|
OECDの資料によれば、1950年における65歳以上人口の割合は、日本では5.2%、フランスでは11.3%であったが、2000年には日本は15.2%に達し、フランス(15.3%)とほぼ肩を並べる。 さらに高齢化の状況について日本とフランスを比較してみると、日本の高齢者世帯の割合は、1990年には全世帯数の10.4%であるが、同時期にフランスでは、若干統計の取り方は違うが、高齢者世帯の割合は26.6%にもなっている。 このように日本とフランスの高齢者問題の背景には大きな相違がうかがえるが、高齢化が早くから進行し、また高齢者世帯の割合が高いフランスにおける高齢者対策は非常に関心のあるところである。特に、最近試みられている要介護者のための小規模(10戸程度)の集合住宅等など見るべきものが多いように思われる。これが、このレポートに取り組んだそもそもの動機であった。しかし、実際にそれらに関する文献を収集し、調査を進めていく過程で、高齢者施設の設置や運営についても、様々な法や機関、また高齢者の家事援助や在宅介護などのサービスが複雑に関連しているため、まず高齢者福祉制度の全体的な把握が必要不可欠であることを感じた。 そのため、当レポートでは、フランスの高齢者福祉の施策の全体的な枠組みを把握することを目的とした。本書の構成は目次のとおりであるが、今回、「フランスの高齢者福祉(1)」として、フランスの高齢者福祉について、社会保障体系における位置付けと所得政策及び在宅維持について紹介し、後日「フランスの高齢者福祉(2)」で収容施設対策及び高齢者の有料家庭委託について紹介する予定である。今回紹介できなかった要介護者のための集合住宅等の個別的事例については、別の機会に紹介したい。 なお、このレポートは(財)自治体国際化協会パリ事務所において、松田聰所長の指導のもとに大竹久弥所長補佐がとりまとめたものである。 |
|
フランスにおける高齢者福祉制度について紹介する前に、社会保障制度の枠組みの中でフランスの高齢者福祉がどのような位置を占め、どのような体系で運営されているかを理解するために、まず、フランスの社会保障制度について概観する。 第1章 社会保障制度の枠組みとその変遷 1 社会保障の概念 まず、ここで注意しなければならないのは、フランスの社会保障と日本の社会保障の概念の相違である。日本の社会保障制度に関しては、社会保障制度審議会が1950年に出した「社会保障制度に関する勧告」において、社会保障は憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」の保障を図る制度であり、その構成要素として社会保険、公的扶助、社会福祉、公衆衛生・医療の四部を含むものを「狭義の社会保障」、これに戦争犠牲者対策、恩給を含めて「広義の社会保障」とし、さらに社会保障関連制度ということで、住宅対策と雇用対策の一部をあげている。 これに対し、フランスの社会保障は、法律や規則にその定義を見出だすことはできないものの、一般的には社会保障法典(Code de la sécurité sociale)に規定されている社会保険(assurance sociale)及び家族給付(prestation familiale)という限定的な概念で、日本の狭義の社会保障に含められている公的扶助及び社会福祉が含まれていない。従って、フランスの社会保障は疾病、老齢及び労働災害からなる社会保険に家族給付が加わったものといえる。 フランスでは社会保障より広い概念として、社会保護(protection sociale)という概念がある。これも明確な定義がされているわけではないが、毎年政府の予算案の付属資料として作成される社会保護勘定に関する報告書では、社会保護を「ある種のリスクの発生または存在の結果として生じる個人または家計の支出を保障することであり、集団的保障により、ニーズの増加または所得の減少の一部または全部が補償される。」と定義している。社会的リスクとしては、疾病、身体障害・廃疾、労働災害・職業病、老齢、遺族、母性、家族、労働不適格、失業があげられている。従って、社会保護制度には、社会保障のほか、公的扶助、社会福祉、戦争犠牲者援護も含まれることになるため、日本の「広義の社会保障」に近く、さらに住宅政策や雇用対策も含まれているという点では、一般的な意味での「福祉」に近いものである。 以上のフランスの社会保護制度及び社会保障制度について整理してみると図−1のとおりとなる。 |

|
2 社会保障制度の変遷 フランスの社会保障制度の歴史的発展は、中世からフランス革命まで、革命から19世紀末まで、20世紀初頭から第二次世界大戦終結まで、第二次世界大戦終結以降の4つの段階に区分することができる。 (1)中世からフランス革命の時代 この時代には、キリスト教の信仰に基づく、主として教会や修道会が運営する慈善院(Maison-Dieu)や施療院(Hôtel-Dieu)などの救貧施設における救済(assistance)が実施されていたが、これはあくまでも任意的、慈善的な施策であった。この間、特に中世末までは施政が宗教と結び付いたままなされていた。 16世紀の始め、現在の市町村社会福祉センターの祖先ともいえる救貧事務所(Grand bureau des pauvres)がフランソワ1世により創設され、救済の世俗化(施政と宗教の分離)が進められたが、依然として任意的、慈善的な施策であった。この時代には被救済者の利益よりも公共の秩序の維持に重きが置かれていた。 (2)革命から19世紀末までの変革期 「社会契約論」において「貧困は悪徳ではなく社会機構の欠陥とみなされる」とした啓蒙思想家ルソーの影響を受け、革命時には、救済の考え方に大きな変革がもたらされた。1793年の憲法では「公的救済は聖なる負債である」と規定された。しかし、具体策としての制度・規定はほとんど実現されなかった。 一方、慈善事業は聖職者によるものから民間人による社会事業へと変わっていく。 19世紀の前半には、産業革命の進展による都市労働者の増大、家族の扶養機能弱化等により貧困問題が次第に重要性を増した。19世紀の後半は工業化の進展と労働者人口の増大がさらに進み、社会保険の整備と公的扶助の確立が必要とされる時代に入った。1889年にはパリで公的扶助に関する国際会議が開催され、連帯性の思想に根差す憲章において救済が公共団体の義務であることが確認された。その後、第三共和制の政府の下で救済に関する法が整備されていったが、19世紀の生活保障に関する政策の基本は、経済的自由主義の原則に基づく私的自助及び私的な集団的自助(共済組合)であった。 (3)20世紀初頭から第2次世界大戦終結まで この時期は社会保障制度、公的扶助の制度体系の確立と民間社会事業(共済組合)の発展の時期であった。従来の扶助とは異なり、財源が被用者と使用者の双方の拠出による社会保険は、フランスでは他のヨーロッパ諸国に遅れて制度化されていった。ようやく総合的な社会保険法が1930年に制定されたが、これは給与生活者のみを対象として、疾病、出産、廃疾、老齢、死亡に対処するものであった。家族手当も徐々に整備され、1939年の家族法典では家族給付制度の全体的な改革が実現され、給付の対象が拡大された。このように社会保障制度は、社会保険と家族手当を中心に確立されてきたが、これは主として給与生活者のためのものであり、これが適用されないケースについては公的扶助が当てられた。 (4)第二次世界大戦終結以降 第二次世界大戦終結以降は、社会保障制度の一般化と統一、及び全般的社会福祉の整備に向かう時代である。 1942年に発表されたイギリスのべヴァリッジ報告の影響を受け、全国民を貧困と疾病から守るための国家的連帯の確立を理念として、一般化と統一に向かう社会保障制度の計画が検討され(ラロック報告)、「職業間の連帯」が重視された。ラロック報告が作成された時点のフランスの制度は医療、年金等に関する社会保険、労災保障制度、家族給付制度が並立しており、しかもそれぞれの保険機関は不統一できわめて多様なものになっていた。適用対象の面からみても、家族給付はほぼ全国民を対象とするものになっていたが、社会保険は労働者保険としての性格を残しており、農業従事者、自営業者等は対象とされていなかった。また、全国的な集団協定により失業に対する義務的保険が組織されたのは、ようやく1958年になってからである。 一方、救済(assistance)は社会保障制度の発展に伴い、社会保障制度とのよりよい整合を図り、適用条件、手続き等の統一と単純化等を目的とした1953年のデクレ*業により、その名称が「社会扶助(aide sociale)」と改められた。 以上、フランスの社会保障制度の歴史に簡単に触れてきたが、その発展を通じて根底には「社会連帯」という考え方が存在し、当初累進所得課税、ついで共済保険、さらに社会保障制度として具体化されてきた。しかし、社会保障による経済的・職業的連帯にも自ずと限界があるため、1981年の地方分権化以降は、国民的連帯と地域的連帯が強調され、国庫負担の国の社会福祉事業と地方独自の財源で賄われる県及び市町村の社会福祉事業が整備されてきている。
第2章 社会保障関連予算 フランスの一般予算における社会問題・同化省(日本の厚生省に相当)関連の予算は、国の社会保険制度への関与の低さを反映して少なく、1992年度の当初予算では、一般予算(1,321,856百万フラン)のうち約3%(39,279百万フラン)を占めているにすぎない。これは、フランスの社会保障に関連する様々な分野において、多種多様な機関が活動していることのあらわれでもある。従って、フランスの社会保障関連予算の規模をつかむためには、これらの機関の予算全体をみる必要がある。 ここでは、新国民経済勘定に基づいて作成される国民経済勘定の付属勘定(compte satellite)の一つである社会保護勘定(Comptes de la protection sociale)を参照することにより、社会保障関連予算の概要を紹介する。 この社会保護勘定では、「社会保護」が社会保護制度がカバーする疾病、廃疾、労働災害、失業、老齢、家族などの社会的リスク及びそれらの保障を行う機構により定義されている。これらの機構は、次の5つに区分されている。 ・社会保険制度(régime d'assurance sociale) 一般的には職域ごとの義務的制度である。被保険者と使用者の負担による保険料が財源となる。社会保険の補足制度や失業に対する保障もこのカテゴリーに含まれる。 ・使用者制度(régime d'employeurs) 法が規定する制度ではなく、使用者が任意に組織するものである。 ・共済組合(sociéte mutualiste) 共済法典に規定されている制度で、その加入は一般的には任意的なものであり、被保険者は保険料を支払う。 ・公的部門の社会的介入制度(régime d'interventions sociales des pouvoirs publics) ほとんどが県と市町村の負担である社会扶助や戦争犠牲者制度等が含まれる。 ・民間部門の社会的介入制度(régime d'interventions sociale des administrations privées) 資金を主として贈与や寄付に依存する赤十字(Croix rouge)や救世軍(Armée du Salut)等の非営利の民間組織が含まれる。 以下に、社会保護制度全体の収入・支出の状況、リスク別の社会給付、1991年度の制度別・リスク別の社会保護予算の内訳を示す。これらの数字をみると、フランスの社会保護関連予算の規模がいかに大きいものであるか理解できる。1991年のフランスの国内総生産(Produit intériuer brut:PIB)は、約6兆8000億フランであったが、一方、社会保護制度全体の支出は約2兆2000億フランで国内総生産の32%に達しており、フランスの社会保護制度の巨大さを物語っている。また、社会保護制度の様々な分野において様々な機構が複雑に関与していることがうかがえる。 |



|
第3章 フランスの社会保障及び社会扶助の概要 ここでは、フランスの社会保護制度の中で、特に高齢者福祉に関連が深い社会保障制度のうちの社会保険及び社会扶助について概略を説明する。 1 社会保障 (1)社会保障制度の概要 フランスの社会保障は、複数の制度から構成されており、国民のほとんどがこれらの制度のいずれかに所属し、社会保障上の保護を受けることになっている。これらの制度は、ほぼ職域ごとに分立しており、民間の被用者のための「一般制度(régime général)」、その他公共部門や鉄道、海運、鉱山等特殊な職域に働く者について設けられた多様な「特別制度(régime spécial)」、商工業主、職人、自由業者等について設けられた「独立制度(régime autonome)」と農業経営者のための「農業制度(régime agricol)」の4つの制度で構成されている。疾病保険について制度別の加入者数の推移をみると表―4の通りであるが、「一般制度」の占める割合が非常に高いため、以下フランスの社会保障制度について「一般制度」を中心に解説する。 |

|
「一般制度」は、給付部門ごとにみると、疾病保険(医療給付及び金銭給付)、労働災害・職業病補償、年金保険(老齢年金、障害年金、遺族年金)、寡婦保険、家族給付などで構成されている。失業保険の部門が法定制度として存在していないことや、社会扶助や社会福祉サービスが制度上社会保障の外に置かれていることなどがフランスの社会保障制度の特徴となっている。 社会保障の財源は、一般制度の場合、主として被用者及びその雇用主が負担する保険料に依存しており、一部が公費でまかなわれる。公費は、国の負担部分であるが、年々その割合は上昇してきている。疾病保険や老齢年金を中心として社会保障支出の増加傾向が続くなかで、主要な財源となる保険料収入の伸びは十分ではなく、保険料のみに依存する収支の均衡は難しい状況になってきている。 フランスの社会保障は労使双方による運営が基本原則とされており、国は社会保障制度の監督権は有するが、社会保障の運営は財政的に独立した機関が行っている。従って、社会保障制度に赤字が生じた場合には、同じ給付部門内の各制度間で財政調整を行い、次に異なる給付部門間で赤字埋め合わせを行う。そして最後に国が社会保障制度への援助を行うという方法が取られている。 1967年の社会保障制度の改革以来、一般制度はリスク別に、全国被用者老齢保険金庫(Caisse nationale d'assurance vieillesse des travailleurs salariés : CNAVTS)、全国被用者疾病保険金庫(Caisse nationale de l'assurance maladie des travailleurs salariés:CNAMTS)及び全国家族手当金庫(Caisse nationale des allocations familiales:CNAF)の3つの全国金庫により運営されている。リスク別に分けられたこれらの全国金庫全体の財政を管理する組織として社会保障機関中央機構(Agence centrale des organismes de sécurité sociale:ACOSS)があり、その下部組織として保険料徴収組合(Union de recouvrement des cotisations de sécurité sociale et d'allocations familiales:URSSAF)がある。また、社会保障機関の職員の労働条件の調整や研修等を行う機関として、社会保障全国金庫連合(Union des caisses nationales de sécurité sociale:UCANSS)がある。 |

|
(2)疾病保険(assurance maladie) 疾病保険も職業活動部門ごとに制度が分立しており、日本の国民保険制度のような地域保険制度や、老人保健制度のような老人のみを対象とした横断的制度はない。退職者については退職前の制度に加入し続けることになる。制度そのものは、一般制度を始めとして20を越える制度が存在するが、各制度が必ずしも運営組織を有しているわけでなく、さらに、制度ごとに給付対象が異なっており、例えば一般制度のように労働災害給付、障害年金給付、死亡一時金まで対象とするものもあれば、独立制度では医療給付と出産給付だけを支給し、しかも医療給付のうち現金給付は行われない。また、国家公務員や地方公務員の制度は、一般制度の仕組みを用いて医療給付が行われている。 疾病保険の財源のほとんどが保険料である。保険料率は、1993年1月1日現在、一般制度の場合、被用者の全給与の19.6%である。その内訳は被用者本人が6.8%、使用者が12.8%で使用者負担が高いことが特徴となっている。 |

|
疾病保険の医療給付は、疾病に対する「現物給付(実際にはその医療費補償)」と疾病時の生活救済を目的とする「現金給付」からなる。これらの給付はいずれも疾病保険金庫の制度を通じて管理されている。現物給付は、医療および薬剤の支給からなるが、外来の場合、医療費、薬代をいったん全額支払い、後に州疾病保険金庫から償還を受ける。償還率は制度により異なるが、一般制度の場合、被保険者、被扶養者ともに医療費の75%および薬剤費の70%となっている。入院の場合は、入院費(治療費、手術室費、食事代、室料などを含めて)の20%を支払えばよく、残りの80%については、金庫から医療機関への直接払いとなる。 現金給付としては、疾病のため労働不可能となった場合に、その不能の期間につき4日目から3年を限度として疾病手当金が支給される。疾病手当金の額は基準賃金日額(休業の日の前3ケ月間の賃金総額の90分の1)の2分の1である。3人以上の子を養育する被保険者については、労働不能となった日より起算して31日目から、疾病手当金が3分の2へ引き上げられる。入院の場合には、2人以上の子を養育する者を除き、疾病手当金は減額される。 出産給付に関しては、分娩費、医療費、薬、入院出産等の医療サービスの経費について100%の償還が行われ自己負担はない。 (3)老齢保険(assurance vieillesse) フランスの年金制度は、基礎制度、補足制度、再補足制度の3層制になっている。基礎制度は公的年金制度で、職域ごとの分立した制度になっており、制度の運営も各老齢保険金庫を通じて行われ、フランスの退職者に対する所得保障の中心となっている。補足制度はいわゆる企業年金と呼ばれるものであるが、個々の企業が支給するのではなく、労働組合と経営者団体との間で締結された全国的な団体協約(convention collective)により設立された組織が支給機関となっている。なお、1972年12月29日から一般制度加入者及び農業被用者は補足年金制度に加入することが義務付けられている。補足制度は400近く存在するが、そのうち対象者が多いのは幹部職員を対象とした幹部職員退職制度総連合(Association géneralé des institutions de retraites des cadres:AGIRC)と一般職員を対象とする補足退職制度連合会(association des régimes de retraites complémentaires:ARRCO)である。再補足制度は上級幹部を対象とする任意加入の制度である。その他、生命保険会社などとの契約による任意加入の個人年金がある。 基礎制度である公的年金制度においては、全国民に共通な基礎年金は存在しない。一般制度については、全国老齢保険金庫(CNAVTS)が、年金の給付を始め、年金受給者のための社会福祉サービスを行っている。 老齢保険には老齢年金、障害年金、遺族年金等の年金給付部門が含まれる。いずれの部門もその管理は老齢保険金庫の制度によって一括して行われ、ここでも疾病保険同様労使による自主管理方式がとられている。 老齢年金の財源は、疾病保険と同様に保険料であり、保険料率は一般制度の場合(1993年1月1日現在)全給与の14.75%で、その内訳は被用者本人が6.55%、使用者が8.2%となっている。年金会計の赤字分に対して国庫からの援助があるが、近年は高齢化や失業(1992年12末時点の失業率は10.5%)などの影響により、構造的赤字が続いている。 老齢年金は37.5年以上の被保険者期間を有する者が60歳に達したとき、その受給権を取得する。年金額は過去もっとも高い賃金収入のあった10年間分の平均賃金年額の50%に相当する額とされている。被保険者期間が37.5年に満たない者については、60歳に達したとき、期間比例の減額年金が支払われる。この給付額に、扶養される子が3人以上ある場合、扶養される配偶者があり、その者が65歳以上であるか60歳以上の労働不適格者でかつ所得が一定額以下の場合、労働不適格の者が日常生活を送るうえで第三者の介護が必要な場合、付加年金が支給される。裁定を受けた老齢年金の年金額については、その実質価値がその賃金や物価などの変動によって低下するのを防ぐため、賃金水準の変動幅を基準とした年2回(1月1日と7月1日)の自動的調整が行われることになっている。 以上のいわゆる拠出制老齢年金を受給できない者については、65歳以上の高齢者に対しては、非拠出制老齢手当である老齢被用者手当や「国民連帯基金(FNS)」の「老齢補足手当」が支給されることになっている。これらについては第3部で詳述する。 |


|
2 社会扶助(aide sociale) (1)フランスの社会扶助の概要 家族及び社会扶助法典(Code de la famille et de l'aide sociale)第124条で、「フランスに居住するあらゆる者が、受給の法的条件を満たす場合、この法典に定義されている社会扶助を受ける。」と規定され、社会扶助を受ける権利が保障されている。 フランスの社会扶助の特徴としては、
フランスでは1978年1月2日の法律により、すべての国民が社会保障制度に加入できることとなったが、それでも社会保障制度によってカバーされない者の場合、社会保障の画一的措置が適当でない場合等、それらを個別的に補足する社会扶助が必要とされており、社会保障制度と共に社会的負担をカバーしている。 社会保障制度と社会扶助の共通の領域としては、医療扶助、高齢者現金扶助、障害者扶助がある。医療扶助においては、社会保障と社会扶助は関与の面で一致しており、手当として在宅医療扶助、入院医療扶助、社会保険料の拠出負担、医療扶助受給者に対する月額手当がある。高齢者現金扶助に関する手当としては、特別単純手当、家賃手当、家事サービス代替手当がある。障害者扶助については、1975年の障害者基本法以降、障害者を社会保障の枠組みの中で保障していくという方針が取られているが、この分野の社会扶助として差異手当、補償手当などがある。 また、社会扶助の固有の領域としては、高齢者現物扶助、住宅・宿泊に関する扶助、児童福祉がある。高齢者現物扶助としては、在宅医療扶助、家事援助がある。住宅・宿泊に関する扶助は、生活資力が極めて乏しい人のための家賃手当と社会的不適応の状況にある者に対する宿泊・社会再適応に関する扶助がある。児童福祉の分野に関しては、健常児の医療社会的保護(母子性保護、学校保健事業)、不適応児もしくは危険な状態に置かれた児童の全般的保護、特別手当児・一時保護児などの伝統的児童福祉がある。 |

|
(2)社会扶助の認定 社会扶助の手当を受給するためには以下の3つの条件を満たす必要がある。 ・社会扶助のいずれかのカテゴリーに入っていること。例えば高齢者扶助の場合であるなら、65歳以上または労働不適格の場合60歳以上でなれればならない。 ・十分な収入を有していないこと。すなわち、社会扶助の手当を受給するための条件として設けられた収入上限額を超える収入や、入院等に要する費用を負担できるだけの収入があってはならない。収入には、年金や給料を始めとして民法に規定される扶養義務から生じる収入も含まれる。 ・フランス人であること。またはフランスに居住する外国人の場合には、旧フランス連合(Union françise)の国籍を有する者、相互扶助条約の締結国の国籍を有する者または合法的な亡命者、無国籍者であること。これ以外の外国人については、滞在期間による制限がある。 申請者は、1978年10月19日の通達第49号に規定されている書類(収入を証明する書類等)を、申請者の住所地の市町村社会福祉センターに提出する。申請のあった日から1か月以内に、市町村社会福祉センターはその他必要な書類を補完し、所見を付したうえで、申請のあった社会扶助の権限を有する県の社会扶助担当部局、または県保健・社会局(これらの機関については第2部参照)に送付する。送付を受けた機関は、申請をさらに審査・補足したうえで、県議会議長または県地方長官の名で、申請に対する措置を社会扶助認定委員会に対し提案する。これをもとに社会扶助認定委員会は審議を行い、認定、認定の拒否または申請者と扶養義務者の両方またはいずれかの負担による部分認定の決定を行う。 緊急の手続きが必要とされる場合、市町村長による緊急認定(admission d'urgence)が行われる。この緊急認定は、医療扶助や施設入所及び家事援助のための高齢者に対する社会扶助等に関して規定されている。緊急認定を行った場合、市町村長はこの決定を県議会議長、場合によっては県地方長官に通知する。社会扶助認定委員会は、この緊急認定について2か月以内に決定を下す。決定が追認されなかった場合、拒否の決定以前の経費は当事者の負担となる。 カントン(canton)単位(県議会議員の選挙区)もしくは小規模カントンの場合は複数のカントンの委員会である。委員会は、調停判事(Juge de la paix)が委員長を務め、県地方長官が指名する国家公務員2名、申請が提出された市町村を含むカントンの県議会議員、申請者が居住する市町村の市町村長で構成される。県の権限に属する申請について決定する場合は、委員長及び県議会議員のみが投票権を有する。国の権限に属する社会扶助の申請については、委員長及び国の公務員だけが投票権を有する。委員長は裁決権を有する。また、委員会においては県の社会扶助担当部局、または県保健・社会局の代表が発言権を有するほか、社会保障機関の代表、県地方長官と県議会議長の共同で指名される市町村社会福祉センターの代表も発言権を有する。委員会の管轄区域と会議の開催間隔(通常月に一度開催される)は県地方長官の意見を徴した後、県議会議長により決定される。 認定委員会は、申請者の収入、扶養義務者による負担の可能性を考慮し、社会扶助額を決定する。委員会の決定は申請者、場合によっては扶養義務者に通知される。 決定に不満のある場合、決定の通知から1か月以内に県社会扶助認定委員会に対し不服申立てを行うことができる。不服申立てを行うことができるのは、申請者、その扶養義務者、申請者が入所している施設、市町村長、地方長官、県議会議長、関係する社会保障機関、または訴えの利益を有する県,市町村のすべての住民、納税者などである。不服申し立てがあっても社会扶助認定委員会の決定は停止されない。さらに、県社会扶助認定委員会の決定に対しても通知のあった日から1か月以内に中央社会扶助認定委員会へ審査請求を行うことができる。 第2部 社会福祉関連組織 第1章 地方分権化による権限委譲 1 地方分権化 フランスの地方制度は、1982年3月2日の「市町村、県及び州の権利と自由に関する法律」及びそれに続く一連の地方制度改革法により大きく変化した。1982年法による主な改正内容は、
その後、1982年法に続いて1983年1月7日の「市町村、県、州及び国の権限配分に関する法律」及びこれを補完する同年7月22日の法律により国から地方への権限の委譲が規定された。 この法律によって、社会福祉については県が一般的な権限を有するものとされ、また、社会扶助については一定の例外的な給付の権限(住民登録を欠く者の救護等国民的連帯に適する扶助)を除き、多くの権限が国から県に委譲された。これらの実施に必要な財源及び組織も移転されることとなった。また、州はこの分野においてはほとんど関与せず、市町村は補完的な役割を担うことになった。県は社会福祉、社会扶助に関する県の権限を協定を結ぶことにより市町村に委任できる。 2 地方分権化以降の国と県の役割 (1)国 国は社会政策の基本的方針を決定し、これに関連する法律、規則の制定を行う。また、地方長官は県の決定に対し、行政裁判所を通じての事後的な統制を行う。社会扶助に関しては、住民登録を欠く者の扶助等、国民的連帯に関わる一定の例外的な給付の権限のみを有している。 (2)県 前述のとおり、県が社会扶助の一般的権限を有する地方自治体である。県議会は、法律や規則に定められる範囲内で、社会扶助に関する県規則を制定し、これにより県の権限に属する法定の社会扶助の手当及び県による任意の手当が支給される。県議会は手当の支給に関して有利な条件を定めたり、法律が規定する以上の給付額を決定することができる。この場合、県議会はこの決定による財政的負担を保障する義務を負う。
県議会は、福祉・医療福祉施設及びサービス提供機関に関する県計画を決定する。この計画では、社会的二ーズ、特に福祉・医療福祉施設及びサービス提供機関の設立が必要とされる二ーズや、自県や近県における設備の状況及び財政状況を考慮し、施設及びサービス提供機関の展開と再編の展望が明確にされねばならない。また、実施される活動の評価基準や、他の公共団体との協力及び調整の方法を明記する必要がある。県の独占的な権限に関する施設及びサービス提供機関に関する計画は、県議会により決定され、県が国または社会保障機関と共同で経費を負担する施設及びサービス提供機関については、県議会及び地方長官と共同で決定される。なお、県計画に法的な拘束力は与えられていない。 県は県の所管となった諸事業を実施する。県議会議長は、社会扶助認定委員会及び職業厚生指導専門委員会(COTOREP)の決定に基づき、県の権限に属する給付を行う。県は、これらの給付を行う施設やサービス提供機関の設立を認可し、これらに社会扶助の手当の受給者を受け入れるための資格を与える。また県は、認可された施設やサービス提供機関によって提供される給付の料金を決定する。県と社会保障の機関によって給付が負担される医療福祉施設(特に医療部門付の老人ホーム)の設立については、県議会議長と県地方長官との共同認可の手続きが規定されている。 第2章 行政組織 1 国(État) 1993年3月1日現在、フランスで社会保障、社会扶助、社会福祉等を所管しているのが、社会問題・同化省(Ministère des affaires sociales et de l'intégration)である。社会問題・同化省には、大臣の他に家族、高齢者及び退職者担当閣外大臣(Secrétaire d'Etat à la famille, aux personnes agées et aux retraités)を始めとする3人の閣外大臣が置かれている。高齢者に関する問題については、社会福祉局(Direction de l'action sociale)が担当し、社会保障制度を所管しているのが社会保障局(Direction de la sécurité sociale)である。 また、保健活動(病院関連を含む)に関しては保健・人道的活動省(Ministère de la santé et de l'action humanitaire)の保健総局(Direction générale de la santé)や病院局(Direction des hôpitaux)が所管している。また、施設、住宅及び運輸省(Ministère de l'équipement,du logement et des transports)も高齢者に関する社会福祉的な役割を担っている組織としてあげることができる。
2 州(région) 各州に州地方長官の監督下にある州保健・社会局(Direction régionale des affaires sanitaires et sociales:DRASS)が置かれ、社会問題・同化省を支援している。州保健・社会局は社会保障制度機関の指導のほか、社会福祉分野においては直接的な介入は行っておらず、主として社会保険・社会福祉計画の推進、調整を行っている。 3 県(département) 1983年法による国から県への社会扶助に関する権限の委譲に伴い、県地方長官の指揮下にあった県保健・社会局(Direction départementale des affaires sanitaires et sociales;DDASS)が、1985年に県地方長官の指揮を受ける県保健・社会局と、県議会議長の指揮下に置かれる県に属する組織とに分割された。この分割は実際に所管していた給付に応じて行われ、分割後の県保健・社会局は国に属する権限のみを担当することとなり、県に属することとなった権限を担っていた部分が県に移管された。 この分割により旧県保健・社会局の定員の約70%の職員が県に移管されることになったため、県の組織内に新しく部署が設置された。この部署の名称は、県によって様々で統一されていない。一例を挙げると、コート・ドール県(Côte d'Or)では保健・社会保護局(direction de la protection sanitaire et sociale)という名称を使用している。 4 市町村(commune) 市町村においては、保健・社会活動を担当する市町村独自の組織は存在しない。一般的には、市町村長が保健活動を行う一方で、次に述べる市町村社会福祉センターが社会福祉サービスの実施と調整を行っている。 第3章 社会福祉関連機関 1 市町村社会福祉センター(Centre communal d'action sociale:CCAS) (1)市町村社会福祉センターの歴史 1953年以前には、市町村レベルにおいて二つの組織が存在していた。一つが任意の救済を行っていた慈善救済事務所(Bureau de bienfaisance)であり、もう一方が法定救済を担当し、設置が義務付けられていた救済事務所(Bureau d'assistance)であった。1953年の社会扶助の改革により、これらの二つの事務所は統合され、社会福祉事務所(buerau d'aide sociale)となった。その後、1986年1月6日の法律によりその名称が変更され、市町村社会福祉センターとなった。 (2)市町村社会福祉センターの概要 市町村社会福祉センターは個別市町村、または市町村事務組合により設立される公施設法人(établissement public)である。 センターは市町村長(または市町村事務組合の長)が主宰する理事会(Conseil d'administration)により運営される。理事会は市町村議会議員(または市町村事務組合の執行機関である組合委員会の委員)、及び市町村長(または市町村事務組合の長)が市町村レベルで社会福祉活動に参加している者の中から指名する者の同数により構成される。また、センターはセンターの事業を行うために固有の職員を雇用する。 市町村社会福祉センターの主な役割は、社会扶助の申請の受付け及び県が市町村に委任した権限の執行である。また、センターは、市町村における社会福祉の発展のための一般的活動の推進を担っており、福祉・医療福祉施設の運営も行うことができる。 センターは特に高齢者福祉の分野で活発な活動を行っている。市町村内の高齢者に対する社会福祉活動の促進や調整を行い、また在宅維持、家事援助、住宅整備、老人ホーム・老人クラブ・高齢者食堂の運営など多くの事業を実施している。 市町村社会福祉センターの予算は市町村(市町村事務組合)とは別個の独立したものである。財源は市町村の補助金、事業による収入、県の補助金等である。 センターの予算について、人口約13万のツール(Tours)市の市町村社会福祉センターの予算を例に取ると、1990年の度収入総額は3,790万フランで、その52.2%が事業収入、46%が市の補助金、1.8%が県の補助金であった。また、支出総額の56.1%が人件費、17.3%が社会扶助費であった。 2 社会保障金庫 (1)全国被用者老齢保険金庫(CNAVTS) 被用者の老齢保険の一般制度を運営する全国被用者老齢保険金庫は、被保険者のための保健・福祉活動も行っている。この活動に必要な資金として金庫の保険料の一部が割かれており、この額は保険料の約0.7%に相当する。この活動は金庫が運営する高齢者のための保健・福祉活動全国基金(Fonds national d'action sanitaire et sociale en faveur des personnes agées:FNASSPA)を通じて行われている。 金庫の保健・福祉活動は、被保険者に対する個人的援助、及び集合的な社会福祉施設に対する財政的、技術的援助の二通りの方法で実施されている。 個人的援助には、在宅家事援助、住宅の改善のための援助がある。在宅家事援助は古くから基金(FNASSPA)の主たる支出である。1991年にこの給付に充てられた予算は、17億8100万フランに達し、基金の予算の77%を占めている。これにより提供された家事援助の時間は、1991年で3200万時間に相当する。また、住宅の改善のための援助は、ここ10年かなり伸びてきている。その他の援助として、バカンスに対する援助(4500万フラン)などがある。 福祉施設に対する援助としては、金庫は全国疾病保険金庫と協同で、ホスピスの老人ホームへの転換と老人ホームの近代化に対する援助を行っている。1991年度予算で金庫が認定した計画の総額は4億3700万フランで、そのうち3億8300万フランが援助の対象となっている。 |

|
他の老齢保険金庫(補足制度も含めて)も、一般制度と同様の保健・福祉活動を実施している。しかし、各金庫の規模をみれば、一般制度と同程度の予算を割けないことは明らかである。この点に関しては、制度間の連帯というメカニズムは機能していない。このため、一般制度以外の退職制度の各金庫の行う援助は、一般制度よりも不利な条件によるものとなっている。 (2)全国疾病保険金庫(CNAM) 全国疾病保険金庫は、高齢者のための任意的な保健・福祉活動として、福祉施設に関する予算を有する。1989年に全国疾病保険金庫が認定した福祉施設の計画の総額は、1億8390万フランであった。援助の対象となるのは、ホスピスと老人ホームの医療体制の改善(金庫の援助の25%)、高齢者のための長期滞在施設(同 19%)である。援助は無利子融資の形で行われ、ホスピスと老人ホームについては経費の14%、他については30%の範囲内で貸付が行われる。 3 民間組織 (1)協会(association) 1901年7月1日の法律に基づく非営利団体である協会(社団法人)は、特に保健・社会福祉活動のために設けられた制度ではないが、この分野で活動する多くの団体が協会組織である。協会には、税制上の優遇措置や市町村等の補助金を受けることができるなどのメリットがある。協会の福祉・医療福祉分野での活動は様々で、各種サービスの実施、施設の運営、現金または現物による援助、研究及び情報提供等を行っている。市町村社会福祉センターや全国老齢保険金庫が提供するサービスも協会に委託されて実施されることが多い。 ![]() (2)その他 その他の民間部門としては、営利を目的とする老人ホーム等の経営のほか、社会保障制度の補完的役割を果たしている共済法に基づく共済(mutuelle)の機関も、保健・社会福祉活動の分野において、福祉施設の建設や余暇活動の促進等の活動を行っている。 第3部 フランスの高齢者福祉制度 第1章 フランスにおける高齢者問題の背景 1 高齢者の定義 フランスにおいても「高齢者」を明確に定義することは非常に困難である。かつては高齢者の定義は容易であった。すなわち、退職年齢を超えた者が高齢者であった。社会保障、社会扶助関連の法においても、例えば、一般制度の老齢年金の支給開始年齢は60歳、社会扶助(高齢者扶助)の対象となるのは65歳(労働不適格の場合は60歳)以上と定められている。 しかし、最近の経済、社会の発展に伴う社会問題の変化の中で、この概念が再検討されている。 一方では、常に若年退職者(特に軍人)が存在しているが、近年の経済危機によりさらに増加している。これらの者も高齢ではないが、社会への同化という高齢者と同じ問題に直面している。同様に、失業も高齢者問題と関わりあっている。また一方では、高齢者が、疾病である場合や身体障害を有する場合もある。 従って、高齢者対策を検討するにあたっては、高齢者を特定の領域に閉じ込めておくのではなく、他の分野と調整を図りながら進めていくことが求められる。 2 人口の高齢化 フランスも他の先進国同様、人口の高齢化が進んでいる。フランスでは、出生率の低下が早くから始まったため、日本と比較すると高齢化の進展は緩やかであった。 フランスの1990年の人口の年齢階層別男女構成比を見ると、50歳までは男性の人口が女性の人口を上回っているが、50歳を越えると逆転する。65歳以上の人口は788万人で(そのうち75歳以上が385万)、65歳以上75歳未満では女性が56%を占め、75歳以上では66%を占める。また地域別では高齢者の割合は特に農村部において高い傾向がある。 国立統計経済研究所(INSEE)の予測によれば、最も年齢の高い層が相対的に早いペースで増えるとされ、85歳以上人口は、1985年から2015年の30年間で倍増するとの予測がなされている。高齢者の社会的、医療的ニーズを考慮すると、85歳以上人口が最も多くの問題を抱えているといえる。 |

|
3 高齢者の収入と健康状態 「第3世代(troisième âge)」という呼称を与えられた高齢者の中には、健康で経済的にも恵まれ、社会によく適応している者も多い。しかし、経済的、健康的理由で自立できない状態になった高齢者の場合が問題となる。 高齢者の収入は、ここ10数年で明らかに改善されてきている。年金の受け取り額が改善され、高齢者ミニマムが引き上げられてきたためである。少々数字は古いが、1970年から1984年の間に、労働者の平均給与は1.4倍にしか増えていないのにもかかわらず、65歳以上の高齢者の購買力は平均で1,8倍に増えた。高齢者の収入の最低保障である高齢者ミニマムは2.6倍となっている。 |


社会的な援助や介護を必要とする高齢者の数については、その性格から正確な人数を把握することはできないが、国立衛生・医療研究所(Institut national de la santé et de la recherche médical:INSERM)が、65歳以上の高齢者をそれぞれのニーズにより次の4つのグループに分類し、1988年にイル・ド・フランス州を始めとする3州においてサンプル調査を実施した結果が表―14及び表―15である。
この調査では、痴呆症に苦しむ高齢者の数は示されていない。従って痴呆症の高齢者はその度合いに応じて上記の4つのグループに区分されていると考えられる。この調査により自立が最も難しい高齢者も、多くは自宅で生活していることがわかる。 ![]() |

|
第2章 フランスの高齢者福祉の体系 1 高齢者福祉の体系 フランスにおける高齢者福祉のシステムは、多種多様な制度、組織、方法により極めて複雑に構成されている。本書においては、これらを所得政策、在宅維持政策、収容施設対策及び高齢者の有料家庭委託の4つのカテゴリーに整理して、フランスの高齢者福祉について解説する。 所得政策は、高齢者対策として最も成功を収めている方法である。高齢者の生活水準は向上し、すべての高齢者に対し最低保障がなされている。この点では社会扶助は補完的な役割を果たしているにすぎない。しかし、年金制度の進展も不確実なままであり、制度の調和・統一化、さらには年金支給条件の緩和が求められている。 在宅維持政策に関しては、政府の経済社会計画(5年ごとに策定され政策の基本的方針が示される)においては、常に在宅維持が重視されてきた。在宅維持は高齢者が望むことであり、また最も経済的な解決方法でもある。政策の内容は、まず住宅に関連するものからあげると、家事援助、在宅介護、居住環境の改善などがある。これに続いて、高齢者の孤立を回避するための近隣とのネットワークづくり(電話、修理サービスなど)や文化的活動・余暇活動の奨励(高齢者クラブ、旅行など)などの活動が実施されている。 これまでは、基本的には在宅維持が重視されていたため、収容施設対策は相対的に軽視されてきた。しかし、収容施設は自立できなくなった高齢者にとっては不可欠なものである。ホスピス(救済院)はあまり恵まれた環境を提供していなかったため、その廃止が決定されており、また、老人ホームに関しても改善すべき点が多い。最近は、新たな形式による施設の運営が多数試みられている。 また、施設への入所を希望しない高齢者のための補足的な措置として、個人の自宅へ高齢者を受入れる有料家庭委託がある。 2 高齢者対策の調整 高齢者対策の実施主体は県である。県は高齢者に対する社会扶助の権限を有し、保健活動と福祉活動の調整を行う。また、県地方長官が議長を務めてはいるが、「県退職者・高齢者委員会(Comité départemental des retraités et des personnes âgées)」が県レベルでの調整を行う組織の一つとして機能している。市町村レベルでは市町村社会福祉センターが、市町村レベルの高齢者対策の調整に関して重要な役割を果たしている。 第3章 所得政策 1 財政的援助 (1)総論 高齢者に対する手当は、主として社会保障及び社会扶助の2つの制度によるものである。なお、老齢保険の拠出制年金については、すでに第1部で取り上げているので、ここでは解説しない。 ・社会保障制度 老齢保険の非拠出制老齢手当(prestation vieillesse non contributive)によるものである。非拠出制老齢手当は社会保障の各制度によって支給されているが、制度により手当の内容は異なっている。そのため、様々な制度を統合するために、年齢、収入の限度額等の支給条件に関して、いくつかの方策が取られている。さらに、統一的な補足手当の組織である国民連帯基金(Fonds national de solidarité:FNS)がすべての老齢年金(拠出制の手当であるかどうかは問われない)に付加される。 ・社会扶助 長い期間、収入のない高齢者にとって唯一の生計の方法であった。現在は社会保障制度の補完的な役割を担っている。 (2)高齢者ミニマム(minimum-vieillesse) 拠出制老齢年金を受給できない者については、65歳以降、所得制限つきの非拠出制老齢手当(allocation non contributive)である被用者老齢手当(allocation aux vieux travailleurs salariés:AVTS)が設けられている。この種の手当は、被用者老齢手当を始めとして、非被用老齢者手当、配偶者手当などいくつか存在するが、一般的には、非拠出制手当と総称されている。1993年1月1日現在、手当額(上限)は年1万6010フランで、年間所得が3万8480フラン以下の者が支給対象となっている。手当額や所得制限の額は、年2回、1月と7月に改定される。被用者老齢手当として実際に支給される額は、所得制限の額から、受給者の所得を引いた額となる。 さらに、拠出制老齢年金や無拠出制老齢手当などの老齢給付の受給者の収入総額が老齢被用者手当(AVTS)の受給の条件となる所得制限の額を超えない場合には、国民連帯基金(FNS)の老齢補足手当が支給される(1993年1月1日現在、手当の上限額は年2万1560フラン)。老齢補足手当として実際に支給される額は、所得制限の額から、受給者の所得を引いた額となる。 被用者老齢手当及び国民連帯基金の老齢補足手当の支給は、一般制度だけでなくその他の制度の適用を受ける者にも行われる。この二つの手当を合わせた額は、十分な収入を持たないすべての高齢者に対しなされる最低保障となるため、高齢者ミニマムと呼ばれる。高齢者ミニマムは6か月毎に見直される。1993年1月1日現在の高齢者ミニマムは、単身の場合、年3万7580フラン、世帯の場合6万7400フランとなっており、所得制限の額はそれぞれ年3万8480フラン、6万7400フランである。 国民連帯基金の補足手当の受給者は、基金の創設以後しばらくの間は増加したものの、その後の拠出制年金の改善により減少してきている。受給者の中では、男性よりも女性の占める割合が非常に多いことが特徴となっている。 なお、国民連帯基金の補足手当として支給される額は、受給者の相続財産が25万フラン以上の場合、その相続財産から支給された補足手当の一部または全部が回収されることになっている。また、受給者が一定以上の不動産を有する場合、支給額回収の保障のために抵当権が設定されることもある。
|




|
(3)単純手当(allocation simple) 単純手当は、使途が定められていない国の社会扶助の手当である(家族及び社会扶助法典第158条)。支給条件、支給額は老齢保険の老齢被用者手当(AVTS)と同じである。この手当は高齢者に対する他の現金給付との併給が禁止されているため、補完的な役割を担っているにすぎない。従って、その受給者数は少ない(1990年は6100人)。なお、この手当に国民連帯基金の補足手当を加算することが可能である。 (4)家事サービス代替手当(allocation représentative de services ménagers) 高齢者に対する県の社会扶助の手当(家族及び社会扶助法典第158条)であり、家事援助サービスが提供されていない場合や十分でない場合、または受給者が家事援助の現物給付よりも現金給付を希望する場合、家事サービス代替手当を受給することができる。この手当の受給条件は、家事援助の現物給付と同じである。 この手当の支給額は、家事援助の現物給付の価格の60%を越えることができない。また、受給者は手当が支給目的に従って使用されたことを証明しなければならない。 現物給付は物質的な援助を提供するだけでなく、家事援助を通し孤立しがちな高齢者との関係を構築することが可能であるため、社会扶助認定委員会は、現金給付よりも現物給付の支給を勧めている。 (5)第三者補償手当(allocation compensatrice pour tierce personne) この手当は、1975年6月30日の法律第75−534号「障害者対策基本法(Loi d'orientation en faveur des personnes handicappées)」によって創設された、障害者に対する社会扶助の現金給付である。障害者進路指導職業斡旋技術委員会(Commission technique d orientation et de reclassement profesionnel des handicapés:COTOREP)が手当の支給を決定し、県の社会扶助として県議会議長により支給される。 この手当は、障害者が第三者に援助を求めたり、職業を実践することにより必要となる追加出費を補償するための手当である。この手当の支給条件は、
第三者による援助のための追加出費の補償に関しては、生活基本行為のために第三者の援助が常に必要とされる場合、社会保障の第三者加算の額(1993年1月1日現在で月5226.28フラン)の80%の手当、第三者の援助が部分的な場合、第三者加算の40〜70%の手当が支給される。また、職業実践のための追加出費の補償に関しては、実際の追加出費に応じて第三者加算の0〜80%の手当が支給される。第三者による援助のための追加出費の補償、及び職業実践のための追加出費の補償のための手当は併給することができるが、支給の合計額は第三者加算の額を超えることはできない。これらの支給率は、障害者進路指導職業斡旋技術委員会(COTOREP)により決定される。 また、この手当の受給者が老人ホームや長期滞在センターなどの施設に入所した場合でも補償手当を受給できることになっている。支給は、入所45日目以降中断され、社会扶助により入所の経費が負担される場合、社会扶助認定委員会が決定した額を限度として減額される(最低保証額は手当額の90%)。なお、他の社会扶助の手当と同様、相続の場合の事後回収の規定もある。 (6)社会保障の第三者加算(majoration pour tierce personne) 社会保障法典L351−1条に規定される労災年金、障害年金、老齢年金の受給者を対象とする収入制限のない社会保障の給付であり、日常基本行為を単独で行えない場合など、第三者の援助の料金の支払に充てられる手当である。 支給条件が満たされていれば、被保険者の保険期間にかかわらず第三者加算は支給される。老齢年金及び障害年金の受給者に支払われる第三者加算は、1993年1月1日現在で月5226.28フランである。 (7)住宅手当 高齢者が受給できる住宅援助としては、建築及び住宅法典(Code de la construction et de l'habitation)に規定されている住宅個人援助(aide personnalisée au logement :APL)及び社会保障における家族給付の住宅手当(allocation de logement)がある。他に社会扶助の家賃手当(allocation de loyer)があるが、ほとんど受給者がいないためここでは取り上げない。 1977年に創設された援助で、徐々に家族給付の住宅手当に取って代わりつつある。この援助は年齢の制限がないため、高齢者に対しても支給される。 この手当は住居費の負担がその所得と家族構成に対し過大となっている世帯に対し、適正な負担額を越える額を直接補助しようとするもので、当該住居費が借家の家賃であるか、持家のローンの償還金であるかは問われない。援助額は、居住者の所得と家族構成とを考慮して算定される。支給条件として、所得制限は設けられていない。また、援助が融資者または賃貸人に直接支払われることも、この制度の特徴である。 この援助の対象となるのは、賃貸住宅の場合、賃貸住宅援助融資(prêt locatif aidé:PLA)または協定融資(prêt conventionné)を受けて新築・取得された住宅、または住宅改良助成金(prime à l'amélioration de l'habitat:PAH)を受けて改良されたもので国と賃貸条件等に関して協定を結んでいる住宅であり、持家の場合は、持家取得援助融資(prêt aidé en accession à la propriété:PAP)、または協定融資を受けて新築、取得または改良を目的として取得された住宅である。
もともと、1948年9月1日の法律に規定される家族給付の住宅手当(allocation de logement)が存在していたが、この手当は子供等同居の被扶養者を有する世帯を支給対象としていた。1971年6月16日の法律では、支給の対象が高齢者や障害者にまで拡大されたが、これを福祉住宅手当(allocation de logement à caractère sociale)、従来の住宅手当を家族住宅手当(allocation de logement à caractère familiale)として区別している。 高齢者は住宅個人援助の支給の対象とならない住宅に居住している場合、以下の条件を満たしていれば福祉住宅手当を受給することができる。
手当の額は、高齢者の収入、扶養義務のある者の人数、住宅に関する費用(家賃、融資の返済、管理費等)、住宅の場所などが考慮され決定される。 なお、福祉住宅手当は、社会保障法典R832−2条に規定される居住条件(一人部屋の場合9u以上、二人部屋の場合16u以上)を満たしている場合、老人ホームに入居している高齢者に対し支給される。逆に1970年12月31日の法律に規定される医療機関である長期滞在施設(centre de long séjour)に入所している高齢者に対しては、福祉住宅手当を支給することはできなかった。しかし、1990年の1月23日の法律第90−86号により、長期滞在施設に入所している者に対してもこの手当が支給されることになった。 |

|
(8)地方自治体による任意の財政的援助 法定の高齢者ミニマムに加えて、高齢者に対する手当を支給している地方自治体(特に市町村)がある。さらに、パリ市の場合などは、この手当のほか住宅手当が支給されている。しかしながら、このような援助を全く実施していない自治体もあり、地域間格差が問題となっている。 2 社会保障負担及び税制上の優遇措置 (1)社会保障負担の優遇措置 在宅援助(aide à domicile)サービスの利用者として、70歳以上の高齢者がサービス提供者に支払う報酬にかかる社会保険、労働災害、家族給付など社会保障の使用者負担分は、高齢者が高齢者住宅または自宅に居住していることを条件として免除されていたが、1989年7月10日の法律第89−475号の7条及び1990年1月23日の法律第90−86号による改正により、それまで適用外とされていた有償で個人の住宅に受け入れられている高齢者等についてもこの制度が適用されることになった。 この制度の適用を受けるのは、年齢が70歳以上でなければならないが、夫婦の場合はどちらか一方が70歳を超えていれば良い。この年齢に達していない高齢者でも生活基本行為を第三者の援助に頼る必要のある場合は、一定条件の下に免除を受けることができる。 (2)税制上の優遇措置 所得税の減免に関する様々な措置が規定されている。これらは直接高齢者に適用されるものと、高齢者に財政的、物質的援助を提供している者に適用されるものとがある。 原則的には、高齢者の収入となる年金(pension)、手当(allocation)等いずれの形態でも、原則としてすべて収入が課税の対象となるが、軍人年金・傷痩軍人及び戦争犠牲者法典に基づく年金、社会保障の第三者加算、社会扶助や社会保険に関する法律及びデクレの適用により国、公共団体、公施設法人(établissement public)などから提供される手当や補償金、福祉住宅手当については所得税が免除される。同様に、職業活動による収入が年4万2800フラン(1990年12月31日現在、毎年見直される)を超えない65歳以上の高齢者については、所得税が免除される。 所得の控除に関しては、65歳以上の高齢者、また年齢に関係なく障害者は年間の収入が5万3100フラン以下の場合は8580フラン、収入が5万3100フラン以上8万5800フラン未満の場合は4290フランの控除を受けることができる(1990年)。控除額は世帯の場合は倍になる。収入の限度額と控除額は毎年引き上げられる。また、1977年以降、すべての老齢年金に10%の控除が認められている(1990年の控除の上限額は2万8400フラン)。さらに、給与生活者に認められている20%の給与所得控除も適用される。 また、1988年の所得課税から、単独で生活する70歳以上の高齢者、または自宅で生活する夫婦(この場合は一方が70歳を超えていれば良い)の場合、在宅援助サービスの利用料金は、1万3000フランを限度として、出費した額の25%の額の控除を受ける権利が開かれた。同様に、障害手帳を有している者であれば70歳以下でも、この控除を受けることができる。1990年以降、70歳以上の高齢者であれば、扶養義務を有する者の住宅に受け入れられている場合でもこの控除が適用されるようになった。これらは1992年の課税分から見直される予定で、自宅で在宅援助を利用する高齢者は年に2万5000フランを限度として、費用の50%の控除を受けることになる。1989年分の課税以降、夫婦の一方が長期滞在施設の医療部門に入所している場合、一方が自宅にとどまっていても、年に1万3000フランを限度として在宅援助の場合と同じ控除がこの夫婦に適用される。 高齢者に財政的、物質的援助を提供している者については、その者が75歳以上の高齢者を受け入れている場合、高齢者(尊属である必要がある)の収入の不足及び高齢者のために支出された額を証明すれば、高齢者に支払われる年金は、家族の収入全体から控除される(フランスの場合、所得税は家族単位に課税される)。扶養義務が現物(食事の提供等)で行われている場合、納税者は実際に負担した経費の額を証明すれば、その額の控除を受けることができる。しかしながら、以下の場合は経費の証明は必要とされない。
扶養義務のない75歳以上の高齢者を受け入れている場合は、その高齢者に与えられる現物の給付は、高齢者の収入が国民連帯基金の補足手当の支給条件の所得制限に達していない場合、1万5730フランを限度として(1990年の課税分)、収入全体から控除される。 (地方税に関しては当協会発行の「フランスの地方行財政のあらまし」を参照) 納税者の主たる住居に課される住居税(taxe d'habitation)は、以下の条件が満たされる場合、自動的に減額される。 ・国民連帯基金の補足手当の受給者、60歳以上の者、配偶者を失った者、成人の障害者に対する手当の受給者、障害者か廃疾者で労働によりニーズを満たすことができない者のいずれかに該当すること。 ・住居税の課税対象となる年の前年に、所得税が課税の対象とならなかったか、または納税額が徴収限度(1990年で400フラン)を上回らなかったこと。 ・単独か一定の範囲の者と共に、主たる住居を占有していること。 また、納税者の主たる住居として使用される住宅に課される住居税に関しては、扶養家族控除が適用される。この場合の扶養家族とは、納税者の尊属、または納税者の配偶者が70歳以上または身体障害者である場合の配偶者の尊属(納税者の自宅に同居し所得税を課税されていないことが必要)である。 また、国民連帯基金の補足手当の受給者及び所得税を課されない75歳以上の高齢者のみが居住する建物については、既建築固定資産税(taxe foncière sur les propriétés bâties)の全額が自動的に免除される。 60歳以上の高齢者については、前年の収入が課税されない場合、または納税額が徴収最低額に達しない場合など、高齢者のテレビ視聴料が免除される。 3 その他の優遇措置 国鉄(SNCF)を利用する場合、165フラン(1991年)のカルト・ベルメイユ(carte vermeil:老人優待割引券)を購入することにより、一定の行程が50%割引きされる。男性は65歳以上、女性は60歳以上が利用でき、出発が国鉄の指定する閑散期であれば割引きが適用される。海上交通に関しては、60歳以上の高齢者は閑散期に限り、マリティム・コルス・地中海国営会社(SNCM)の船を50%の割引きで利用できる。また、国営のエール・アンテール社(主として国内線)は高齢者カード(Carte retraite)を無料で発行し、一定の便に限り低料金で利用できるようになっている。また同じく国営のエール・フランス社は、フランス本土内に限りエール・アンテール社と同じ割引きを行っている。 また、文化活動面でも、60歳以上の高齢者について、歴史的建造物、美術館、映画館、劇場等の入場料割引制度がある。 第4章 在宅維持 1 家事援助(aide mémagère) (1)総論 家事援助は高齢者の在宅維持のための基本的な援助形態であるが、いわゆる家事労働に制限されるわけではなく、高齢者の自立を促進し、また外部との関係を維持するための援助も含まれている。 当初、家事援助は任意の社会扶助として創設されたが、1962年4月14日のデクレ第62−443号により法定給付とされた。一方、老齢金庫の任意的給付としての現物給付も増加してきており、現在、その給付金額は県による法定給付を超えている。 家事援助により、日常の住宅の維持、買物、食事の準備、簡易な衛生的介護が提供される。公式の資格が必要とされる介護は行われない。家事援助の受給者の96.8%が高齢者であり、その5分の4が単独で生活している者である。 1988年10月にフランスの7州において行われた調査の結果によれば、家事援助の総支給時間数において、各制度が提供する家事援助の割合は、表―21の通りである。また、月あたりの援助時間数に関しては、30時間以上の者が4%、16時間以上29時間以下が45%、15時間以下が50%であった。 |

|
(2)社会扶助による家事援助の給付 十分な収入を持たないすべての高齢者に対する法定援助で、県の社会扶助の規則に規定される。県の社会扶助としての受給者数は1984年以来減少している。給付は各県によりかなり異なっている。 |

|
・県の権限 県は給付の管理責任を負う。給付時間数及び受給者数は各県により決定され、県議会議長が、料金を決定する。 ・給付基準 給付の対象となるのは、年齢が65歳以上または労働不適格と認定される場合60歳以上の者で、家事援助のニーズを有する者である。ニーズの評価は必ずしも健康状態とは結び付けられる必要はなく、在宅維持の物質的ニーズを有すればよいとされる。収入については被用者老齢手当(AVTS)の給付条件の所得制限を超えてはならない。収入の上限額は1993年1月1日現在で、単身の場合は年3万8480フラン、世帯の場合は年6万7400フランである。 ・援助の方法 現物給付が原則である。しかし、市町村内で家事援助サービスが提供されていない場合、または不十分な場合に、受給者が現物給付よりも現金給付を希望すれば、家事サービス代替手当が支給される。家事サービス代替手当の額は、現物の家事援助の価格の60%である。 援助の期間は月30時間を限度に社会扶助認定委員会により決定される。二人以上の受給者が共同で生活している場合には、それぞれ月25時間を限度に支給される。経費については受給者にも負担が求められる。負担額は県により様々であるが、受給者は平均で経費の6%程度を負担している。 ・給付の手続き 申請者は、居住する市町村の社会福祉センターに、本人または在宅援助のサービス提供機関を通じて申請する。申請がなされると書類が作成され、場合によっては訪問調査が行われることもある。申請は提出の日から1か月以内に県議会議長に送付され、議長は申請を審査した後、社会扶助認定委員会に判定を委ねる。また、高齢者に対し緊急に援助を行う必要があると認められる場合、市町村長は緊急認定(Admission d'urgence)を行うことができる。市町村長はその決定を3日以内に県議会議長に通知しなければならない。規定された期日が守られない場合、通知の日までの経費は市町村の負担となる。 ・不服申立て(recours) 不服申立てについては社会扶助の訴訟に関する一般規定に従う。当事者に対し決定通知がされた日から2か月以内に、県社会扶助認定委員会に対し不服申立てを行うことができる。さらに県社会扶助認定委員会の決定の通知から2か月以内であれば、この決定は中央社会扶助委員会に対し審査請求を行うことができる。 ・事後回収の原則 社会扶助としての援助は前貸金とみなされるため、受給者あるいはその扶養者の経済事情が好転した場合は返還しなければならない。 (3)老齢金庫(caisse de retraite)の家事援助の給付 老齢金庫の家事援助の給付は、収入が社会扶助の給付の所得制限を超える高齢者のための、また月あたり最大30時間を超えるニーズに応えるための、法定給付を補足する任意的な給付である。従って、前貸金とみなされる社会扶助とは反対に、老齢金庫の任意的手当は、受給者の相続の場合にも回収されない。 家事援助の支給は、受給者が最も長い保険期間を有する制度を通じて行われ、基礎制度、補足制度の一方または両方から給付される。基礎制度の全国被用者老齢金庫(CNAVTS)と補足制度である補足老齢年金連合会(ARRCO)により、家事援助の負担の配分について調整が行われる。各金庫の理事会は料金を決定する権限を有する。 1988年にフランスで提供された家事援助の時間全体の約40%が老齢保険の一般制度の組織である全国被用者老齢金庫が単独で負担している。ここでは、全国被用者老齢金庫により提供される家事援助について紹介する。 ・支給基準 家事援:助は、自立性を失った高齢者か、在宅維持のために必要な日常基本行為を単独でできない高齢者に支給される。申請者のニーズの検討は、環境を考慮した評価一覧表に基づいて行われる。自分の卑属と共同生活をしている高齢者については、高齢者が占有している場所においてのみ家事援助を受けることができる。 収入は、社会扶助の家事援助受給のための所得制限を超えていることが必要となる。年齢に関する制限はないが、申請者は全国被用者老齢金庫の手当を受給していることが必要である(一部例外あり)。同様に、申請者の配偶者が他の基礎制度に属していない場合、配偶者にも全国被用者老齢金庫の援助が支給される。 しかし、社会保険の第三者加算及び寡婦手当、社会扶助の第三者補償手当の給付を受ける高齢者は除外され、また原則として国民連帯基金の受給者も除外される。 ・援助の方法 現物給付が原則であり、食事の宅配が家事援助の一部を成している。例外的に、現物の家事援助が市町村内で提供されていない場合、家事サービス代替手当(現金扶助)が直接高齢者に対して支給される。援助の時間数は月30時間を限度として金庫により決定される。例外的にまた一定の期間のみ、90時間の範囲内で支給することができる。 医療部門のない、または日常の介護サービスしか利用できない高齢者住宅に入所している高齢者は、15〜20時間、例外的に30〜40時間の家事援助の支給がなされる。家事援助の支給期間は原則1年間で、更新が可能である。70歳以上の高齢者については、更新の際には支給期間が3年間まで認められる。 ・経費負担 全国被用者老齢保険金庫の負担率は、平均で経費の27%である。市町村や補足老齢金庫などがこの自己負担分(ticket moderateur)を減額するために限定的ではあるが援助を行う。利用者の負担は金庫の理事会により決定される全国的な計算表(表―24)を適用して決定される。高齢者の自己負担分は、51時間を超える時間から15時間の制限内で減額される。1992年の全国被用者老齢金庫の家事援助の予算は19億フランであった。なお、全国被用者老齢保険金庫の負担率の計算基礎となる1時間あたりの家事援助の料金(1993年1月1日現在)は、イル・ド・フランス州は81.73フラン、その他の州は80.23フランである。 ・給付の手続き 金庫と協定を締結している家事援助サービスを提供する協会が、申請者により作成された申請書を調査した後に金庫に提出する。書類には、収入証明書や家事援助の支給時間数とその理由を付した提案書が含まれる。申請者の社会的な状況をニーズ評価表により検討し提案が行われる。申請の審査は、イル・ド・フランス州においては全国被用者老齢保険金庫、他の州については州疾病保険金庫(CRAM)が行う。金庫はその決定を協会と申請者に送付する。 ・在宅監視(garde à domicile) 在宅監視は、高齢者が夜間や週末に援助を必要とする場合(家事援助が提供されない時間帯)に、家事援助を補足するためのサービスである。在宅監視サービスは営利を目的とする組織や個人的に雇用する者により提供されることが多い。高齢者の在宅監視に対する援助は、家事援助と同様、老齢金庫の任意的給付として、1992年から開始された。収入が単身の場合月9000フラン(世帯の場合1万3500フラン)を超えない高齢者に対し、7200フラン(世帯の場合1万800フラン)を限度に、1時間あたり25フランが金庫から支給される(1992年1月1日現在)。なお、1992年の全国被用者老齢金庫の在宅監視の予算は3億フランであった。 |


|
(4)家事援助サービス提供機関(service d'aide mènagére) 県や老齢金庫は、自ら家事援助サービスを実施するのではなく、家事援助サービス提供機関により実施される家事援助の経費の負担を行う。 ・設立条件 家事援助サービス提供機関は1975年6月30日の法律75−535号に規定される福祉・医療福祉施設に該当しない。従って、家事援助サービス機関の設立にあたっては、認可の手続き等は必要とされず、自由に設立することができる。 ・県の社会扶助の資格授与(habilitation à l'aide sociale) 家事援助サービス提供機関は県と協定を締結することより、県の社会扶助により負担される家事援助を提供する資格を得ることができる。経費が県の社会扶助により負担されるのは、この資格を得た家事援助サービス提供機関が提供する家事援助のみである。 ・老齢金庫との協定(conventionnement) 家事援助サービス提供機関は、全国被用者老齢金庫(イル・ド・フランス州の場合)、またはその他の州の各州疾病保険金庫(CRAM)との間で、一定の協定の書式により締結される協定により、経費が老齢金庫により負担される家事援助の提供を行うことができる。 ・運営組織とサービス 協会及び他の民間部門の組織が総時間の62%の家事援助を実施している。公的部門においては、市町村社会福祉センターの役割が非常に大きく、総時間の32%に相当する家事援助を実施している。 社会連帯省の調査によれば、家事援助サービスを実施している機関のうち、3千近くが家事援助のみを行っており、全体の55%が在宅介護、生活補助、在宅監視、食事の配達などのサービスも同時に実施している。家事援助サービス提供機関1か所あたり、約150人を1年間に援助しているが、提供機関の3分の2では、援助の対象が80人以下となっている。 ・ホームヘルパー(aide mènagére) ホームヘルパーの数は約8万人であるが、そのうち4万人強が常勤である。社会連帯省の調査の対象となった機関においては、ホームヘルパーの半分が一月の間に70時間以下の援助を行っていた。一か月間に、一人のホームヘルパーが平均5人を担当している。 2 生活補助サービス(services d'auxiliaires de vie) 生活補助サービスは、障害者の在宅での生活を可能にするため、1981年の通達(circulaire)により創設されたもので、現在は県の社会扶助となっている。このサービスは特別に高齢者だけに提供されるものではないが、実際には多くの高齢の障害者が受給している。 生活補助サービスは、基本的生活行為(起きる、寝る、トイレなど)のために第三者に頼る必要のある者に対し、家事援助よりも定期的で反復される性格の援助を行う。また、このサービスにより心理学的な支援、外部の環境との関係の構築を行う。生活基本行為を行うために第三者を必要とすることを進路指導職業斡旋技術委員会(COTOREP)に認められた障害者か、社会保障制度の第三者加算の受給者が対象となる。 サービス提供機関は、社会連帯省と協定を締結することにより、補助金を受けることができる(地方自治体の補助金もあるが任意的なものである)。利用者は、給付の自己負担額を支払う。サービス提供機関として、1901年法の協会や市町村社会福祉センターなどにより運営される約250の機関が存在する。これらの機関により、約4千人の生活補助者(auxiliaire de vie)が雇用されている(うち1864人が常勤)。生活補助者により約6000人の障害者にサービスが提供されているが、その多くが高齢者である。 3 在宅介護(services de soins à domicile) (1)在宅介護サービス 在宅維持のための援助の中でも、在宅介護は医療機関への入院や福祉施設への入所を回避するため、高齢者の特別なニーズに対し医療福祉的な回答を提供している。高齢者のほとんどが在宅維持を希望しているため、在宅介護は大きく発展している。 フランスでは、1977年以来、在宅介護が実験的に実施されていたが、1975年6月30日の法律75−535号を修正した1978年1月4日の法律78−11号により、在宅介護は、その経費が疾病保険または社会扶助(医療扶助)により負担される医療福祉制度(institution médico-sociale)として位置付けられた。 1991年現在で、合計4万3964人の収容力を有する1199カ所の在宅介護サービス提供機関が存在するが、その配置は地域によってばらつきがある。また、医療保険の負担額は1990年分には14億フランに達している。 |


|
在宅介護が必要とされるのは、高齢者の疾病や依存(自立性を失った状態)の場合で、
・介護とマザリング療法(maternage)による総合的な方法 在宅介護サービスは、疾病の者もしくは身体の機能の低下による障害を有する者に対して、医師の処方に基づき看護婦(infirmière)(もちろん看護士も存在するが、本書では便宜的に看護婦と表記する)が行う衛生的介護である。医療補助者(auxiliaire médical)による介護もそれに付随する。同時に、家事援助により提供されるサービスを除いた生活基本行為を行うための特別な援助が提供される。これらの場合、介護は看護婦及び看護助手(aide-soignant)のチームにより提供される。在宅介護では、必要な小型の医療器具は提供されるが、薬品は提供されない。 実施されている介護の80%以上が、予防、衛生、マザリング(母性的態度で患者に接する精神病の治療の一種)による介護である。介護を受ける者の3分の2が生活基本行為を行うため常時援助に依存しており、その40%が失禁、40%近くが精神的障害に苦しみ、また36%が週に平均10回の訪問を必要とする重度のケースとみなされている。 ・サービスの連続性 サービス提供機関は、日曜日や祭日、また午後8時から午前8時までの夜間も含め、介護が必要とされる場合はいつでも、提供機関自体または外部の者により、あらゆる介護の提供ができる体制を整えなければならない。 ・受給者の選択の自由 受給者は、主治医、常勤看護婦(infirmière salariée)、または在宅介護サービス提供機関と協定を締結している自由看護婦(infirmière ibérale)の中から自由に選択することができる。 ・受給者の年齢 原則は60歳以上の高齢者であるが、疾病保険機関の医療検査部門(contrôle médical)の意見に基づき、60歳以下の者でも器官の老化が見られる場合、または疾病により日常生活に支障をきたす場合には介護を受けることができる。なお、1984年の調査では、介護を受けている者の2%が60歳以下、80%が75歳以上、35%が85歳以上であった。 ・給付の開始 サービス提供機関は、介護の方法を明示した主治医(médecin traitant)の処方(prescription médicale)に基づき介護を行う。主治医は処方した介護の指導を行い、その責任を有する。 ・在宅介護の場所 サービス提供機関は、高齢者の自宅、福祉施設(例外的に転換前のホスピス)で介護を行う。入所施設での介護の場合、医療部門を持たない施設において、在宅介護サービス提供機関が行うサービスは、在宅介護として社会保険により負担される。しかし、医療部門を有する施設においては、医療部門のスタッフが十分でない場合にのみ、介護の一部を在宅介護サービス提供機関に頼ることが可能となる。この場合も、提供機関によるサービスは、在宅介護としてではなく、医療部門の介護として社会保険により負担される。 ・他の機関との調整 在宅介護サービス提供機関は、在宅介護を施設入所を避けるための有効な手段とするため、医療福祉施設や医療機関、市町村社会福祉センター、社会福祉従事者(travailleurs sociaux)等との密接な協力により、総合的な介護を提供しなければならない。 ・サービス提供機関による被介護者の全体的評価 サービス提供機関は各被介護者について、医療の処方、介護の医学的必要性、身体的・精神的自立の程度、及び介護の記録を作成する。処方医もこの記録を利用できることになっている。また、1年間適用される介護料金の決定(11月1日)以前に、直近の6か月間の介護報告及び事業年度の会計に関する年次報告書を作成し、疾病保険機関の医療検査部門に提出しなければならない。 介護に要する経費については疾病保険または社会扶助により負担される。 ・疾病保険 在宅介護の提供は、原則的には事前に疾病保険機関の合意を得る必要はなく、事後的に管理される。疾病保険機関の事前の合意が必要とされない場合は、疾病保険機関の顧問医師(médecin conseil)に対し、介護の開始が通知され、続いて30日後、以後3か月毎に通知される。介護の手順は顧問医師に提出されるが、顧問医師が疾病保険機関の負担が不当であると判断する場合は、介護を終了させることができる。 60歳以下の場合は疾病保険機関の事前の合意が必要とされる。在宅介護サービス提供機関は、被保険者が属する制度の医療検査部門に対し、在宅介護により入院を回避すること、または短縮することができる旨を証明する書類を送付しなければならない。10日以内に医療検査部門の意見がない場合は、疾病保険による経費の負担が同意されたものとみなされる。原則として、この期限の到来以前または明確な同意の前に介護を行うことはできない。しかし、処方医が緊急であると認めた場合、介護は申請直後に開始される。このケースでは、医療検査部門が拒否した場合、拒否の通知があった日に中断される。疾病保険の負担による介護が終了した後も、一般の有料サービスとして介護を受け続けることができる。 ・社会扶助 疾病保険制度の給付を受けることができない者のために、州地方長官が社会扶助により負担される1日あたりの定額料金を設定する。この料金の上限は国により定められ、1993年は161.4フランである(表―24)。 (2)在宅介護サービス提供機関の設立及び拡張 県地方長官が在宅介護サービス提供機関の設立の認可の権限を有する。受給者のカテゴリーの変更も同様である。県地方長官の決定は、申請の提出から6か月以内に申請者に通知される。この期間内に通知がない場合、認可されたものとみなされる。認可により、在宅介護サービス提供機関は被保険者に介護を行うことを許可され、同時に介護を提供する地理的範囲、受け入れることのできる人数が決定される。 設立時に認可された収容人数の30%までの拡張については、県保健・社会局に通知すれば足りる。30%を超える拡張はすべて、設立と同じ手続きの対象となる。 在宅介護サービス提供機関の設立の認可にあたっては、事前に自由看護婦の組合組織に対し意見聴取が行われ、その意見は州福祉・医療福祉制度委員会(commission régionale desinstitutions sociales et médico-sociales:CRISMS)に提出される報告書に記載される。同様に他の診療補助部門の組織にも意見聴取が行われる。 県地方長官は、州福祉・医療福祉制度委員会(CRISMS)との協議を経た後でなければ、在宅介護サービス提供機関の設立、または当初認可された収容人数の30%以上の拡張の認可を行うことができない(1975年6月30日の法律75−535号第1条に規定される福祉・医療福祉施設の設立及び大規模拡張は、すべて州福祉・医療福祉制度委員会への事前協議が義務付けられている)。 提供機関の設立・拡張計画は、州福祉・医療福祉制度委員会が評価するが、関係する住民の量的、質的ニーズに応えるものでなければならない。特に地域的なニーズを考慮するための基準は課せられていないが、病院施設、長期滞在施設、福祉施設の医療部門の入所者の状況は、地域的なニーズを評価するために注意して検討されねばならない。サービスの独占状態を招く可能性があるため、一つの地理的な区域が一つの提供機関に割り当てられるわけではない。逆に提供機関の過剰も避けるべきである。複数の提供機関の設置の場合は、地域のニーズを考慮して、各提供機関にとって最適と判断される収容人数が検討される。1990年には、提供機関の平均的な収容人数は38人であった。 (3)在宅介護サービス提供機関の運営 在宅介護サービス提供機関は、学際的なチームの協力の下に在宅維持のための医療福祉的な活動を主たる活動として連続的に提供する、公立、または私立の医療福祉組織である。提供機関は、特に市町村社会福祉センター、公立・私立の老人ホーム、家事援助の協会、看護婦介護センター(centre de soins infirmiers)、病院などによって設立、運営されている。提供機関の31%が市町村または県に関連するもので、57%が民間の協会部門、9%が社会保障及び共済、3%が他の民間組織により運営されている。運営形態がどんなものであれ、提供機関は高齢者のために他の機関と密接に協力する必要があり(例えば、提供機関の87%が家事援助サービスに関与している)、また、退職者や高齢者が提供機関の運営に参加することが求められる。 (4)在宅介護サービス提供機関のスタッフ 在宅介護の特殊性は、高齢者のために看護婦及び看護助手(aide soignant)のチームとして介護を行うことである。従って、在宅介護では、看護婦だけの介護や、家事援助に近いような介護が実施されるのではなく、看護婦と看護助手との密接な協力及び仕事の分担により、チームとして総合的な介護を行われる。特にチームに関する基準はないが、1984年の社会問題省の調査によれば、一つの提供機関が平均で、週に24回の訪問を行う常勤看護婦を2人強、1週間に38回の訪問を行う看護助手6人弱を雇用し、週に8回の訪問を行う6人の自由看護婦と協定を交わしていた。 看護婦は、その責任の下に看護助手、場合によっては他の医療補助者の仕事を組織する。提供機関の看護婦として、二つの資格がある。 ・常勤看護婦 提供機関の固有のスタッフには、少なくとも1人の常勤の賃金看護婦が含まれていなければならない。 ・自由看護婦 提供機関と自由看護婦との契約(vacation)、または提供機関と看護婦介護センターとの協定(convention)の場合がある。このシステムにより、高齢者が普段利用している看護婦に頼ることが可能となる。契約または協定の期間は一年で、いずれか一方の破棄通告があった場合を除き自動的に更新される。 ・提供機関と自由看護婦の関係 高齢者は提供機関と契約を締結している自由看護婦の中から自由に選択できる。指名された看護婦はその責任の下にまた処方医の指示に従い介護を行う。看護婦は自分の器具、車を使用する。あらゆる有用な情報を提供機関に伝達する義務を有し、また高齢者の状態を評価し、介護の計画を作成することを目的とする提供機関の会議に出席しなければならない。看護婦は、実施した行為の数及びその価格、移動に要した経費を記載した明細書を提供機関に送付することにより、報酬を請求する。 資格を有する看護助手が看護婦の責任の下に、一般的な衛生的介護、家事援助に属するものを除く生活基本行為を行うために必要な援助を行う。 高齢者は必要があれば、足治療医(pédicure)を利用することができるが、この料金は提供機関の介護料金に含まれている。運動療法(kinésithérapie)(運動、マッサージなどによる療法)については、提供機関の外部のマッサージ師、運動療法施術者により実施されるが、これは介護料金には含まれておらず、利用者は利用の都度、料金を支払う必要がある。運動療法による介護が多い提供機関は、マッサージ師や運動療法施術者を雇用し、その利用料金を含んだ介護料金を設定することもできる。 調整役の看護婦が行う仕事以外の提供機関の管理的事務は、提供機関に所属する管理スタッフ、または提供機関が利用可能な外部のスタッフにより行われる。事務所は、高齢者のための他のサービス機関と同居していることが多い。 ・介護経費の負担 社会保険の加入者に提供される在宅介護の経費は、疾病保険により負担される。この経費は、疾病保険機関から在宅介護サービス提供機関に対し、年間の総括的料金(forfait global)という形式で支払われる。また、疾病保険に加入していない者については、県地方長官が認定する1日あたりの定額料金(forfait journalier)を計算基礎として、県の社会扶助(医療扶助)が高齢者に支給される。 各在宅介護サービス提供機関の1日あたりの定額料金は、提供機関の年間予算の総支出額を予想される介護の日数で割ることにより得られる。この場合、1日あたりの介護時間は問題とされず、すべて1日として計算される。また、年間の総括的料金は、提供機関の年間予算の支出額から、社会扶助の受給者により支払われる料金による収入を差し引くことによって求められる。 予算の支出額には、提供機関の経常的な経費全体が含まれる。経費の内容としては、人件費、スタッフの移動経費、小型の医療器具(医薬品は含まない)の提供経費、一般的経常経費である。なお、予算には前年度の収支は編入されない。人件費には、提供機関に雇用される管理職員及び介護者(看護婦、看護助手、足治療医、場合によってはマッサージ師・運動療法施術者)の報酬が含まれる(1989年の調査では、人件費が平均で提供機関の支出全体のの79.62%を占めていた)。介護が自由看護婦により提供される場合も、予算の中で人件費として計上される。 ・1日あたりの定額料金の決定方法 県と社会扶助の受給者を受け入れるための協定を締結し、実際に受け入れている公立及び民間の提供機関については、県地方長官が、疾病保険機関の意見を徴した後、1日あたりの定額料金及び疾病保険機関が負担する年間の総括的料金の額を決定する。このため、提供機関は、会計及び管理に関する資料、提供機関の活動報告を遅くとも11月1日までに県保健・社会局に提出しなければならない。疾病保険機関は12月1日までに、提供機関から提出される資料に意見を付し、県地方長官に送付する。 社会扶助の受給者の受入れを行わない民間の提供機関については、総括的料金と1日当たりの定額料金が、疾病保険機関と提供機関との間で交わされる協定により決定される。この協定には、提供機関が所在するる州の地方長官の認可が必要となる。疾病保険機関との協定が締結されていない場合は、疾病保険により負担される介護の総括的料金は、疾病保険機関の権限で州内に位置する在宅介護の提供機関に適用される総括的料金の平均の75%を限度として決定される。 ・1日あたりの定額料金の上限額 毎年、保健担当、社会保険担当、予算担当の各省の共同の決定により、在宅介護サービスの1日あたりの定額料金の上限額が決定され、各在宅介護サービス提供機関の1日あたりの定額料金は、この範囲内で決定される。1993年1月1日現在、1日あたりの定額料金の限度額は161.4フランである。 ・料金の改定 会計年度の閉鎖以降、前会計年度の財政結果の検査が進められる。この全年度の収支は、提供機関の翌年度の予算には編入されない。実際の支出が、疾病保険制度の負担分である総括的料金と相違する場合、その差額が、翌年度の総括的料金から減額または増額されることになる。実際の支出額が、予算の支出額を下回った場合は、提供機関の資金状況の分析の後、超過額は現年度の総括的料金から差し引かれるか、提供機関が活動を停止している場合には疾病保険機関に支払われる。 提供機関の現年度の支出の予算額が、活動の変更(30%以下の拡張の場合)のため十分でないことが明らかに証明される場合には、追加予算が支給され、1日あたりの定額料金が全国上限額の範囲内で改定される。財政状況を正常化するための追加予算は、収入の不足が認定された予算の2%を超える場合にのみ支払われる。活動が予測を下回る場合も、介護の総括的料金及び1日あたりの料金は改定される。活動が予測を長期的に下回る場合、提供機関に与えらていた方法が再検討され、料金は減額される。いずれの場合も、提供機関は事前に州地方長官と疾病保険金庫の承認が必要となる。 ・制度間の配分 疾病保険機関により負担される介護の総括的料金は、社会保障法典D174条2項から11項に規定された条件で制度間で配分される。提供機関は各四半期の初日に負担している人数の疾病保険の制度別ごとの表を作成する。制度間の支出の暫定的及び最終的な配分は、全国配分委員会(Commission nationale de repartition)により行われる。1984年における制度間の配分は、一般制度62%、農業者制度16%、特別制度14%等であった。 4 デイ・センター(centre de jour) デイ・センターは、1975年から1980年にかけて、国、疾病保険金庫、老齢保険金庫の共同で行われた実験的な試みであるが、結局これに法的な基盤は与えられなかった。しかし、現実には現在も100弱ほどのセンターが存在しており、その多くは収容施設に付属している。資金調達の不確実性や比較的高い料金が、デイ・センターの発展の妨げとなっている。 デイ・センターは、日常の医学的介護だけでなく、より総合的に人の世話を行う高齢者の受入れ・介護施設である。センターは、開かれた環境にある介護施設であり、病院とは区別されている。そこで提供されるサービスには、医学的介護(治療)を始め、運動療法(kinésithérapie)、足治療(pédicurie)、精神療法(psychothérapie)、社会適応療法(sociothérapie)、作業療法(ergothérapie)などが含まれる。センターのサービスに社会援助的なもの、余暇活動的なものが含まれてはいるが、単なる介護センターや老人クラブではない。 デイ・センターの資金調達方法に関しては、特別な規定はないが、通常、地方自治体、老齢金庫、協会の補助金を受けている。また、利用者は、疾病保険により費用の払い戻しを受けるが、自己負担分もある。社会扶助による負担は行われていない。 5 居住環境の改善(amélioration de l'habitat) 高齢者の居住環境の改善を目的とする工事のための援助が設けられている。 (1)住宅改良助成金(prime de amélioration de l'habitat:PAH) 建築・住宅法典(Code de la construction et de l'habitation)に規定される国の助成金で、一定以下の収入の者に対し、自己所有の住宅の改良及びアクセスの改善を目的とする工事に対して支給される。安全面、衛生面の改善のための工事(費用は7万フランが上限とされている)の場合には、費用の20〜35%、アクセスの改善工事の場合(費用は2万8000フランが上限とされている)は、費用の20〜35%、場合によっては50%までの助成金が支給される。 (2)全国住宅改良機関(agence nationale pour l'amélioration de l'habitat) 全国住宅改良機関は、住宅・設備省及び大蔵省が所管する公施設法人で、主な財源は国の補助金(1992年度は195億9百万フラン)である。2年以上の賃借期間を有する賃借人が、住宅の改善工事に関して賃貸人の許可を得たうえで、金国住宅改良機関の手当を受給することができる。快適な設備に重点を置く工事が対象となるため、住宅は1948年以前に建築されたものでなければならない(アクセスの改善のための工事は1975年以前の建物)。補助率は25〜50%(アクセス改善のための工事は70%)で、工事の費用の上限は4万フランとなっている。 (3)老齢金庫の住宅改良手当(aide à l'amélioration de l'habitat) 全国被用者老齢保険金庫(CNAVTS)、補足老齢年金制度総連合(ARRCO)等は、相互に調整し一定の枠内で、その加入者に対し住宅改良のための個人手当を支給する。受給者は主として一般制度の加入者である。高齢者の在宅維持を容易にする住居の改良やアクセス改善のための工事が援助の対象となる。援助は受給者の収入に応じて、支給限度額の範囲内で支給される(表―25)。全国老齢保険金庫(CNAVTS)の支給額の上限は、1992年では1件あたり1万89フランである。1992年には総額2億2200万フランの援助が予定されている。 ![]() 6 その他 高齢者の社会生活、余暇活動の促進を図るための様々な活動が行われている。1901年法に基づく協会は、家事援助や在宅看護サービスの提供のほか、スポーツ、旅行、文化等に関する活動を行う高齢者クラブの運営を行っている。全国被用者老齢金庫では、年金の受給者に対しバカンスのための手当の支給を行っている(1991年には5万6000人に対し約4000万フランが支給された)。 また、市町村社会福祉センターにおいても、高齢者クラブを運営する協会に対する補助金の支給を行ったり、高齢者食堂を経営し、安い費用で食事を提供すると共に、高齢者のための交流の場所として活用している。 (参考文献)
|
