CLAIR REPORT


韓国地方公務員制度について



(財) 自治体国際化協会 CLAIR REPORT NUMBER 186 (August 30, 1999)



Council of Local Authorities
for lnternational Relations











財団法人自治体国際化協会





目      次


はじめに ......................................................................................................................

1

第1章 地方公務員の服務規律
  第1節 全体の奉仕者
  第2節 懲戒処分

............................................................
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第2章 公務能率と定員管理
  第1節 公務能率の向上
  第2節 身分保障・救済
  第3節 定員管理

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第3章 地方公務員の勤務条件
  第1節 勤務条件の概要
  第2節 地方公務員の給与と諸手当
  第3節 その他の勤務条件
  第4節 地方公務員の社会保障制度

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第4章 地方公務員と労働基本権
  第1節 労働組合
  第2節 地方公務員の労働基本権制限 

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おわりに

別表(2〜4)

参考文献
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は じ め に

 韓国では、1948年に憲法、翌49年には地方自治法が制定された。52年からは3回にわたり地方議会議員選挙が実施され、60年にはソウル市長及び道知事選挙が実施された。しかし、61年9月の軍事クーデター以降、地方自治は停止されていた。その後、全斗煥政権とそれに続く盧泰愚政権下で地方自治法が全面的に改正され、91年には30年ぶりに地方議会議員選挙が実施された。95年6月には民選による基礎・広域団体長選挙(第1回統一地方選挙)が実施され地方自治制が復活、98年6月には第2回統一地方選挙が実施されて本格的な地方自治制度が定着しつつあるところである。
 韓国の地方公務員制度は、「地方自治法」、「地方公務員法」、大統領令を根拠に、形式的には日本の制度と類似している。しかし、人事、給与及び手当等の決定・支給内容、労働基本権の制限においては差異がみられる。
 本レポートは、韓国地方公務員制度について実地調査を踏まえながら考察したもので、韓国地方自治を理解される際の一助になればと作成したものである。
 なお、地方公務員の職、種類、任用、人事交流等については、すでにクレアレポート第127号「韓国地方公務員の人事制度について」で報告したので、地方公務員の服務、定員管理、勤務条件、労働基本権制限等を中心に報告する。
 ただし、韓国地方公務員は日本の地方公務員に比べ種類が多く、このレポートで地方公務員全体を網羅できないため経歴職公務員(一般職公務員、特定職公務員及び技能職公務員)を中心に扱った。地方公務員法第3条で、同法は報酬及び服務を除いて特殊経歴職公務員(政務職公務員、別定職公務員、専門職公務員及び雇用職公務員)に適用しない旨規定している。また、実地調査は全羅北道のみで行ったため勤務条件、服務等が他の自治体によっては若干の相違が見られるかもしれない。
 現在、韓国ではIMF体制管理下で国を挙げてドラスティックな経済改革が行われているところであり、地方公務員制度においても公務員報酬が一部年俸制に移行するなど制度が変わりつつある。本レポートは、主に1998年度の制度内容について作成したため、発刊される時期には、既に制度が一部変わってしまっているところがあるかもしれないので御了承いただきたい。
 最後に、本レポート作成に当たり、御指導及び情報提供、実地調査等に御協力いただいた方々に、この場を借りて感謝申し上げたい。





第1章 地方公務員の服務規律
 第1節 全体の奉仕者
  1 全体の奉仕者
 大韓民国憲法第7条第1項に「公務員は国民全体の奉仕者であり、国民に対して責任を負う。」と規定されている。地方公務員は地方自治体と特別身分関係(日本と同様の公務員の特別権力関係)にあり、公共の福祉の増進という基本的な任務遂行のため、種々の義務を課され、労働基本権を制限されている。

  2 公務員の義務
 公務員の義務は大きく分けて次のように分類される。
(1) 宣誓義務
 公務員は就任するとき所属機関長の前で条例が定めるところにより宣誓しなければならない(地公法第47条)。
 例えば、全羅北道地方公務員服務条例第2条第1項には「公務員は地方公務員法第47条の規定により、就任するときに所属機関長の前で宣誓をしなければならない。」、第2項「第1項の宣誓は別表1の宣誓文による。」と規定されており、就任時に次の宣誓文を読み上げなければならない。


別表1 別表1


(2) 誠実義務
 すべての公務員は法規を遵守し、誠実にその職務を遂行しなければならない(同法第48条)。この義務は公務員に負わされた一番基本的でかつ重要な義務であり、公共の利益のために、全人格と良心を捧げて誠実に職務を遂行しなければならない。

(3) 職務上の義務
ア 法令遵守義務
 すべての公務員は法規を遵守し、………………………(同法第48条)。公務員は一連の手続きを経て効力を有している法令に拘束されるが、立法予告段階の法令案、公布されているがまだ施行されていない法令には拘束されないので、公務員はこのような法令の形式的用件について審査権を持っていると考えられる。

イ 服従義務
 公務員は職務遂行について、所属上司の命令に服従しなければならない。ただし、これについて意見を陳述できる(同法第49条)。
 この義務は階層的組織体として行政組織の原理上、必須である。

ウ 職務専念義務
(ア) 職場離脱禁止
 公務員は所属上司の許可または適当な理由なく職場を離脱できない。(同法第50条)
(イ) 営利業務及び兼職の禁止
 公務員は公務以外の営利を目的とする業務に従事できず、所属機関の長の許可なく他の職務を兼務できない(同法第56条)。
(ウ) 栄誉制限
 公務員は大統領の許可なく外国政府より栄誉又は贈与を受けることはできない(同法第54条)。
(エ) 政治運動の禁止
 公務員は国民全体の奉仕者であり、憲法はこの政治的中立性を法律の定めるところにより保証し、地方公務員法は憲法の規定を具体化し、一定の政治的目的を持った行為を禁止、罰則によりこれを強化している(同法第57条)。
(オ) 集団行為の禁止
 憲法第33条2項に「公務員である勤労者は法律が定める者に限り団結権・団体交渉権及び団体行動権をもつ。」と規定、地方公務員法第58条は公務員の労働運動とその他公務以外のことによる集団行動をすべて禁止している。ただし、事実上労務に従事する公務員(現業機関の作業場で単純労務に従事する者)については除外している。
 従って、現在でも地方公務員の職員組合は組織化されておらず、日本の地方自治体で年末に見かけられる、給与・手当その他勤務条件に関する職員団体による当局との団体交渉はない。
(カ) 親切・公正義務
 公務員は住民全体の奉仕者として親切・公正に執務しなければならない(同法第51条)。親切・公正は単に道徳上の義務にとどまらず、法的義務であり、これに違反すると懲戒処分の事由となる。
(キ) 秘密厳守義務
 公務員は職務上知り得た秘密を、在職中はもちろんのこと退職後も厳守しなければならない(同法第52条)。問題は何を秘密事項とみるかということで、多数説は法令により秘密事項に定められた事項、関係機関が秘密文書として分類しておいた事項が秘密事項に該当するとしている。

エ 清廉の義務
 公務員は職務と関連して直接、間接を問わず謝礼、贈与又は饗応を受けることはできず、職務上の如何を問わず所属上司に贈与し、上司はこれを受けることはできない(同法第53条)。これに違反すると懲戒事由に該当するだけでなく、刑法上の贈収賄罪にあたる。上司への贈与を禁止しているのは、人事処遇の公平さを保つためである。一方、公職者倫理法(1981年12月31日法3520号)は、公務員の清廉義務の制度確保のため公職者及び公職候補者の財産登録義務と公開制度、膳物申告(外国又は外国人からの一定額以上の贈呈物申告義務)、退職公職者の就業制限などに関して規定している。

オ 品位保持義務
 公務員は、その品位を傷つける行為をしてはならない(同法第55条)。

 第2節 懲戒処分
  1 懲戒処分の種類
 これまで述べてきた義務について、公務員が違反した場合、特別身分関係の秩序維持のために課される制裁が懲戒処分である。懲戒処分は次のとおりである。
 懲戒処分には罷免・解任という排除懲戒と停職・減俸・誼責という矯正懲戒がある(同法第70条)。
 罷免と解任は公務員関係を解除する点では同じだが、罷免は処分後5年間、解任は3年間再任用することができず、罷免の場合は公務員年金法上給与が制限される点に違いがある。
 矯正懲戒は、将来の義務違反防止を目的として、公務員の身分的利益の一部を一時的に剥奪する処分である。
 停職は1ケ月以上3ケ月以下の期間、公務員の身分を保有しながら職務に従事できず、報酬の3分の2を減ずる処分である。
 減俸は、1ケ月以上3ケ月以下の期間、報酬の3分の1を減ずる処分である。
 譴責は、前過について訓戒し悔恨させる処分である(同法第71条)。

  2 懲戒処分の手続き及び救済
 懲戒処分は人事委員会の議決を経て任命権者が行う(同法第72条)。人事委員会については、地方公務員法第7条から11条にかけて規定されているが、韓国地方自治体では日本の地方自治体のように常設の委員会として設置しておらず、必要に応じて召集される。人事委員会は5人以上7人以下の委員から構成され、その委員として当該地方自治体の公務員及び法官・検事又は弁護士資格がある者、大学の法律学・行政学又は教育学の副教授以上の者又は初・中・高等学校の校長以上の者、公務員として20年以上勤務し退職した者を任命又は委嘱する。委員の任期は2年とする(同法第7条)。
 全羅北道では、職員採用、職員の懲戒処分議決などの際、行政副知事を委員長にして全6名のメンバーが召集され議決等がおこなわれる。通常事務は総務課人事係が担当している。
 懲戒処分を受けた者で処分に不服のある者は、処分事由説明書を受け取った日から30日以内に訴請審査委員会に審査を請求できる(同法第67条)。訴請審査委員会は、訴請事件の審査をするにおいて、必ず訴請人を出席させ、意見陳述の機会を付与しなければならない(同法第18条)。また、審査委員会の審査・決定を経由しなければ行政訴訟を提起できない(同法第20条の2)。委員会は7人の委員から構成され、その委員として法官・検事又は弁護士の職にいる者、大学の法律学を担当する副教授以上の者、地方自治体の所属局長以上の公務員を任命又は委嘱する。委員の任期は2年とする。(同法第14条)
 韓国地方自治体における訴請審査委員会も人事委員会と同様に、常設の委員会として設置されておらず、必要に応じて召集される。
 全羅北道では、必要な都度、企画管理室長を委員長にして全7名のメンバーが召集され議決等がおこなわれる。通常事務は法務担当官室訟務係が担当している。





第2章 公務能率と定員管理
 第1節 公務能率の向上
  1 成績主義(メリットシステム)の採用
 地方公務員法第25条で「公務員の任用は試験成績・勤務成績・経歴評定その他能力の実証により行う。」と規定されており、スポイルズシステム(職員の待遇を縁故や情実によって行う制度)の非能率性、非専門性という弊害を除去するため競争試験という能力検定手続きを経て、公務員を任命・昇進させる制度を採っている。韓国の地方公務員制度を要約すると、民主的・職業的公務員制度ということができる。公務員になる機会は均等であり、任用ほか服務、報酬など基本的な事項はすべて法律に基づき行われている。また、憲法第7条2項に「公務員の身分と政治的中立性は法律が定めるところにより保証する。」と規定しており、職業公務員制度により政策の安定的、能率的執行を保証しようとしている。
 ただし、特殊経歴職公務員の中で政務職公務員(任命時に議会の同意を必要とする地方公務員、又は他の法律・条例が地方公務員として指定する公務員)、例えば政務副市長、政務副知事などについてはスポイルズ・システム的色合いがある。

  2 職員研修
 地方公務員は競争試験・選考の方法により、全体の奉仕者としてふさわしい能力・適格性を有すると判定された者であるが、高度化する行政需要に対応し、公務能率を向上するには自己の能力開発を絶えず図らなければならない。能力開発には、研修・訓練による方法と職員個人の自己啓発がある。地方公務員法第74条第1項に「すべての公務員と試補公務員(試用期間中の公務員)になる者は、担当職務と関連ある学識・技術及び応用能力の養成のため法令の定めるところにより訓練を受けなければならない。」、第2項「行政自治部長官又は教育部長官は公務員訓練に関する総合的な企画・調整及び監督を行う。」、第3項「地方自治団体の長および各級監督職位にある公務員は日常業務を通じて継続的に部下職員に訓練を命ずる責任を負う。」と規定されている。これを受けて地方公務員教育訓練法(1995年1月5日法律第4871号)、地方公務員教育訓練法施行令(1995年4月20日大統領令第1463号)が定められ、地方自治体では条例が定められている。
 全羅北道では全羅北道地方公務員教育学則規則(1990年2月21日規則第1653号)が定められており、毎年度、教育訓練計画を地方公務員教育訓練法及び行政自治部長官の指針により作成し、年度前に対象者の属する機関長へ報告しなければならない旨規定されている。教育訓練計画には教育課程及び課程別教育対象区分、教育科目別教育要目及び配定時間、期別・機関別研修生選出計画、その他必要事項が記載されていなければならず、日本の地方自治体で行われている研修制度に比べ、研修課程が多く、期間が長く、合宿制を採用するなど集中して研修できる制度になっている(具体的な1998年度訓練計画は別表2のとおり)。これらの教育訓練は全羅北道地方公務員教育院で実施されている。

 第2節 身分保障・救済
  1 身分保障について
 公務員は刑の宣告・懲戒処分または法に定める事由によらなければ、その意思に反して休職・降任又は免職処分をうけない。ただし、1級公務員(行政副市長、行政副知事等)はこれに該当しない(同法第60条)と地方公務員の身分保障の原則が規定されている。
 休職は、心身の故障のため長期療養を必要とする場合、兵役に就く場合などは命ずることができ、研修に参加する場合、1歳未満の子女を養育する場合、父母・配偶者・子女又は配偶者の父母が長期間療養するときの看護をする場合などは、休職願いを受けて命ずることができる。
 降任は、職制もしくは定員の変更又は予算の減少などにより廃職又は過員を生じた場合、本人の同意を得て処分に付することができる。
 免職は、勤務実績が良くない場合、職務遂行に支障がある場合、地方自治体の廃置・分合及び職制と定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合など処分に付することができる。ただし、人事委員会の意見を聞かなければならない。
 このほか、禁治産者又は限定治産者となった場合、禁固以上の刑に処せられた場合などは当然に職員はその職を失う。

  2 救済について
 訴請審査委員会については懲戒処分の手続き及び救済のところで述べたとおりである。
 地方公務員法第67条の2に、公務員は誰でも人事・組織・処遇など各種勤務条件とその他身上問題について人事相談や審査を請求でき、任用権者はこれを理由に不利益な処分や待遇をしてはならない、と規定されている。その他に同条項には、任用権者及び関係機関が苦悩の解消に努めなければならない旨規定されている。

  3 停年・名誉退職
 公務員の停年は5級以上の一般職公務員は60歳、6級以下は57歳で、停年に達する月が1月から6月の間は6月30日に、7月から12月の間は12月31日に退職する(同法第66条)。
 日本では管理職クラスの勧奨退職年齢が58歳から59歳で、一般職員は法律で規定された60歳であるが、韓国では管理職クラスと一般職員の定年年齢が日本とは逆転している。これは、大学卒の多い5級以上の職員とそうでない6級以下の職員の学校卒業後の勤務年数を等しくするためのものである。
 名誉退職については、公務員として20年以上勤続した者が停年前に自ら退職する場合、予算の範囲内で名誉退職手当を支給できる(同法第66条の2)。日本の自治体においては地方自治体の事情により勧奨退職が実施されているが、韓国では地方公務員法に根拠を置いた名誉退職制度がある。

 第3節 定員管理
  1 公務員数
 1997年末時点の公務員数は、地方公務員355,690人、国家公務員561,952人の計917,642人で、地方公務員が全体の38.8%、国家公務員が61.2%を占めている。また、人口1000人当たりの構成比は地方公務員約8人、国家公務員が約12人である。日本と違うのは学校教員と警察は特定職の国家公務員として分類されている。1998年3月31日現在の定数は地方公務員357,202人、国家公務員576,697人である。公務員数の推移は下表のとおりである。


行政府公務員数の推移 行政府公務員数の推移
行政府公務員数の推移 行政府公務員数の推移


  2 定員管理
 1998年以前の韓国における定員管理制度は、内務部(現行政自治部)長官の個別承認制で定員数は各地方自治体の規則で定められていた。1988年内務部令により「内務部長官承認制」から「総定員管理制」に変更された(定員算式の法定化)。さらに、1988年4月6日「地方公共団体の地方公務員定員基準に関する規則」を根拠法令として制定し、ソウル市を除く全自治体に適用した。その後、1991年7月8日からソウル市についても国務総理による承認制から内務部令が適用されるようになり「総定員管理制」の基盤が整えられた。
 定員については、地方自治法第102条第1項「地方自治体は行政事務を分掌するために必要な行政機構を置き、市・道においては大統領が定める範囲内で当該地方自治体の条例で定め、市・郡および自治区に置いては大統領が定める基準により市・道知事の承認を受けて当該地方自治体の条例で定める。」、同法103条第1項「地方自治体は当該地方自治体の経費で負担する地方公務員を配置し、その定員は大統領令が定める基準により当該地方自治体の条例で定める。」、地方公務員法第62条第1項「公務員は次の各号の一に該当するときには任命権者は職権によりこれを免職させることができる。」、第3号「地方自治体の廃置・分合及び職制と定員の改廃又は予算の減少による廃職又は減員になるとき。」と規定されており、大統領令に基づき定員縮小が行われている。
 1995年1月1日、地方自治体の定員管理規定を内務部令から大統領令に、各地方自治体における定員数の規定は規則から条例で規定することとされた。1997年1月には、既存の「総定員管理制」を基本に、地方の自立性と中央の統制が調和するよう改正され、名称を総定員から標準定員に改称した。
 定員算式については、その後いくつかの改正がなされた。また、標準定数を超過してしまう場合、以前は内務部長官の承認を得る必要があったが、定員算式に補正率を掛けて、ある一定の範囲までは超過定数を容認するなど、自治体定員政策の自立性を拡大した。
 過去の総定員数算式においては人口が一番大きな要素であったが、社会の変化に合わせていろいろ要素を取り入れる必要性が出てきた。すなわち、地域の社会構造の変化による行政需要の変化、行政機関数、一般会計総決算額、面積などを算式に反映させなければならなかった。
 1998年に使用された広域自治体の定員算式(地方自治体の総職員数)は次のとおりである。
 <ソウル特別市及び広域市>
(0.0014378×人口)+(226.3×郡・自治区の数)+(0.0018192×一般会計総決算額)+Ci
 ※Ciは変数で自治体ごとに規定されている。
 <道>
2067.8+(0.00022240×人口)+(0.00060543×一般会計総決算額)+Ci+Ti
 ※Ciは変数で自治体ごとに規定、Tiは368.14877
 ただし、上記定数算式については、1998年8月31日に改定された「地方自治体の行政機構と定員基準等に関する規定j(大統領令第15875号)附則第6条において、新標準定員算定方法が定められるまでは適用されず、それまでの間、行政自治部長官が地方自治体別に定める定員によることと規定されており、地方自治体の第二次機構改編等に併せた新しい標準定員算定式が待たれるところである。





第3章 地方公務員の勤務条件
 第1節 勤務条件の概要
 勤務条件については、すべて法令で規定されている。
 特に、給与及び諸手当について、日本では地方自治体の条例に委任しているが韓国ではすべて一律に地方公務員法、詳細事項は地方公務員報酬規程(1986年12月31日大統領令第12057号)、地方公務員手当規程(1983年2月1日大統領令第11034号)で規定されており、額・支給内容は全て国家公務員と同じである。
 日本の地方公務員の給与改定等に関する人事委員会の権限は、韓国の地方自治体の人事委員会には与えられていない。

 第2節 地方公務員の給与と諸手当
  1 地方公務員の給与
 公務員の報酬は一般の標準生計費・民間の賃金・その他事情を考慮して、職務の困難性及び責任の程度に応じて階級別に定める(同法第44条)。政務職、一般職・別定職、研究職、指導職、技能職、雇用職、警察・消防、契約職に分けて職級別・号俸別に俸給表が定められていた。「一般職公務員と一般職に準ずる別定職公務員等の俸級表(1998年度)」(以下「一般職俸級表」という。)は別表3のとおりである。(1999年度俸給額は1998年度と変更なし。)
 一般職俸給表は、職級が1級から9級まで、号俸が1号俸から32号俸に分かれている。1級・2級は行政副知事、行政副市長、3級は地方副理事官で広域団体の局長、4級は地方書記官で広域団体の担当官、課長、5級は地方事務官で広域団体の係長、6級は地方主事、7級は地方主事補、8級は地方書記、9級は地方書記補である。
 広域団体の企画管理室長は、身分は国家公務員であり、職級としては地方3級又は地方副理事官となる。
 公務員の俸給・号俸及び昇給に関する事項、手当に関する事項、報酬の支給方法、報酬の計算その他報酬支給に関する事項は大統領令で定めるとされている(同法第45条)。地方公務員報酬規程第4条に一般職公務員の俸給額は国家公務員一般職俸給表を準用する旨規定されている。一般職公務員以外の地方公務員も国家公務員とほとんど同じ俸給表が適用されており(年俸制適用公務員を除く。)、地方自治体毎に俸給及び手当の額が違う日本の制度とは異なる。
 1999年度からは、従来の俸給表適用とは別に、地方公職社会の競争力強化、生産性向上のため年俸制を導入、それに加えて能力と業務実績を重視した成果給報酬体系が実施された。
 政務職は固定給的年俸制を、1級から3級の一般職公務員、これに相当する別定職公務員及び全契約職公務員は成果給的年俸制が導入された。成果給的年俸制適用公務員は、前年度の業務実績の評価結果が反映される成果年俸が支給される。すなわち成果給的年俸制は、基本年俸と成果年俸から構成され、初年度(1999年度)は基本年俸のみで、翌年度から成果年俸がそれに加わり、翌々年度は前年度の基本年俸に成果年俸を加えたものを基本年俸として、それに成果年俸が加えられる。初年度の基本年俸は、本給、期末手当、精勤手当、長期勤続手当、管理業務手当、名節休暇費、交通補助費の年額から算定される。


成果給的年俸制合算方法


 従来支給されていた手当について、固定給的年俸制適用対象公務員は、期末手当、精勤手当、管理業務手当及び成果賞与金が支給されず、成果給的年俸制適用対象公務員は、期末手当、精勤手当、長期勤続手当、管理業務手当及び成果賞与金が支給されない。
 また、国家経済の苦痛分担の趣旨から、1999年12月31日まで政務職公務員については年俸額の5.5%、1級から3級公務員については年俸額の1.3%を削減して支給される。


固定給的年俸制適用対象公務員の年棒表 固定給的年俸制適用対象公務員の年棒表
固定給的年俸制適用対象公務員の年棒表 固定給的年俸制適用対象公務員の年棒表


成果給的年俸制 成果給的年俸制
成果給的年俸制 成果給的年俸制


イ 契約職公務員
(ア)  専任契約職公務員(地方自治体との契約により、一定期間採用される研究または技術業務に従事する科学者、技術者等特殊分野の専門家をいう。詳細についてはクレアレポート127号:5頁を参照)


契約職公務員 契約職公務員


(イ)  非専任契約職公務員
 同一資格の専任契約職公務員の年俸限界額の5割以下に該当する金額とする。

(ウ)  評価等級別人員比率及び支給率は1級から3級(相当)公務員と同じ。

(エ)基準額


 また、大統領、国務総理を含めた国家公務員3級以上の職員にも、1999年から年俸制が導入され、国家公務員3級以上の職員には翌年度からはさらに成果給が加わる。成果給の評価基準になる目標管理制は1999年度から実施される。この目標管理制は、各職級別に戦略目標、重点目標、基準目標等3段階の目標を定めた後、上司が評価、個人別総点を算出し、この結果を翌年の年俸に反映させる制度である。政府は、この年俸及び成果給制度を今後、公務員全体に段階的に拡大する計画である。


職責別年棒額 職責別年棒額


  2 諸手当
 公務員の報酬は俸給と手当に分けられ、その他に報酬的性格を持った福利厚生費がある(別表4)。福利厚生費は、報酬、諸手当のように法的根拠を持ったものでなく、地方自治体予算として議会の議決を経て支給されている。
 手当は地方公務員手当規定(大統領令)で種類・額等が決められており、次のようなものがある。
(1)  賞与手当として、期末手当、精勤手当、成果賞与金がある。成果賞与金制度は1999年から新設された。
 期末手当は3、6、9、12月の年4回支給され、支給総額は基本給の4倍である。ただし、1999年12月31日まで年俸制の適用を受けない者で、次官級以上の報酬を受ける公務員については期末手当額の400%中120%を、1級から3級に準ずる公務員については30%を削減して支給される。
 精勤手当は1、7月の年2回勤務年数に応じて支給され、支給総額は基本給の0.5倍から1倍である。
 成果賞与金は4級以下の公務員で勤務成績その他業務実績などが優秀な公務員へ年1回(3月)支給される。業務実績が上位10%以内に該当する者には基準号俸の月俸給額の200%、10%超から25%以内の者には基準号俸の月俸給額の100%、25%超から50%以内の者には基準号俸の月俸給額の50%を支給する。


成果賞与金支給区分 成果賞与金支給区分
成果賞与金支給区分 成果賞与金支給区分
成果賞与金基準号棒表 成果賞与金基準号棒表
成果賞与金基準号棒表 成果賞与金基準号棒表


(2)  共通手当として、長期勤続手当と家族手当がある。
 長期勤続手当は、5年以上勤務している公務員を対象に、勤続年数によって40,000ウォンから130,000ウォンの範囲で支給される。
 家族手当は、扶養家族1人当たり15,000ウォンを、4人を限度に支給される。

(3)  特殊手当として、特殊勤務地手当、危険勤務手当、特殊業務手当がある。
 特殊勤務地手当は、交通が不便で文化・教育施設のない地域や、勤務環境が特殊な機関に勤務する公務員に支給される。程度に応じて特地が月46,000ウォン、甲地が36,000ウォン、乙地が25,000ウォン、丙地が15,000ウォンである。
 危険勤務手当は、海上勤務、防疫・保健・獣医部門、研究部門、上下水道・糞尿処理部門、地下鉄部門など危険な職務に従事する職員に支給される。程度に応じて甲種が月額20,000ウォン、乙種が15,000ウォンである。
 特殊業務手当は特殊な業務に従事する職員に支給される。技術業務手当、医療業務手当、研究業務手当、教材研究手当、教員補填手当など22種の手当があり、支給額もさまざまである。

(4)  超過勤務手当として、時間外手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、管理業務手当、当直手当がある。
 時間外手当は、規定された勤務時間外に勤務した職員に支給されるもので、1時間当たりの単価は基準俸給額(一般職公務員は当該階級の10号俸)の70%(以下「俸給基準額」という。)の192分の1の150%である。
 夜間勤務手当は、夜間に勤務した職員に支給されるもので、1日8時間の勤務を基準にして、1時間当たりの単価は俸給基準額の192分の1の50%である。
 休日勤務は、休日に勤務した職員に支給されるもので、1日当たりの単価は俸給基準額の26分の1の150%である。
 管理業務手当は、一般職公務員・別定職公務員・消防公務員・教育公務員の課長クラス以上に支給されるもので、支給額は俸給月額の10%である。管理業務手当が支給される職員には、時間外勤務、夜間勤務手当及び休日勤務手当は支給されない。
 当直手当は公休日又は時間外に火災、盗難、保安、その他事故予防と緊急文書処理及び業務連絡のため当直勤務をした職員に、日直は1日当たり5,000ウォン、宿直は1夜当たり同額の5,000ウォン支給される。

(5)  その他手当として、待遇公務員手当、子女学費補助手当、模範公務員手当がある。
 待遇公務員手当は、任命権者が一般職及び技能職公務員の中から昇任所要最低年数を満たし、昇任の制限事由に該当しない職員を上位職級の待遇公務員として選抜でき、当該待遇公務員に対し月俸給額の6%を手当として支給できるものである。ただし、俸給と待遇公務員手当の合算額が、上位職級の月俸給額を超過する場合には、上位職級の俸給月額との差額を待遇公務員手当とする。
 任用権者は6級以下の待遇公務員のうち、業務に継続して精励する希望をもち、実務遂行能力が優秀で、機関運営に特に必要であると所属機関長が判断し推薦する者を“必須実務要員”として指定できる。よって、併せて必須実務要員として指定を受けた職員は月100,000ウォンが加算されて手当として支給される。
 実際の運用は、ポスト数と職員数との関係等で職員を昇任させることができない場合、待遇公務員手当を支給している例が多い。
 子女学費補助手当は、中学校または高等学校に修学している子女がいる公務員に、2、5、8、11月の給料日に学費相当分を支給している。
 模範公務員手当は、模範公務員として選抜された職員に支給されるもので、模範公務員として選抜された日の属する月の次の月から3年間、月30,000ウォン支給される。ただし、次のような事由が生じた場合、事由が生じた月の次の月からは支給されない。
・退職又は免職されたとき
・懲戒処分を受けたとき
・解雇処分を受けたとき
 また、地方公務員法第63条第1項第1号の身体・精神上の障害で長期療養を必要として休職中の職員には模範公務員手当を支給するが、同法同条第1項第3号(兵役)、第4号(自然災害等による生死不明)、第5号(その他の理由による職務離脱)及び第2項(海外留学、研修等による)の休職中の職員は、復職した日の属する月から支給する。
 上記手当のうち、固定給的年俸制適用対象公務員は、期末手当、精勤手当、管理業務手当及び成果賞与金が支給されず、成果給的年俸制適用対象公務員は、期末手当、精勤手当、長期勤続手当、管理業務手当及び成果賞与金が支給されない。

 福利厚生費は、他の手当が地方公務員手当規定で手当の種類・支給方法等が規定されているのとは対照的に、地方自治体予算として計上され議会の議決を経て支給されているところに違いがある。
 福利厚生費として体力鍛錬費、定額給食費、交通費、職級補助費、名節休暇費、年暇補償費がある。これらの福利厚生費について、全羅北道では「全羅北道地方自治団体予算編成基本方針」に基づき支給されているが、内容は次のとおりである。

 体力鍛錬費は、全職員に2、5、8、11月の各給料日に支給される。支給額及び支給時期は次のとおりである。


福利厚生費


 定額給食費は、各月定期報酬支給日に各月分が支給される。
 全羅北道では月80,000ウォンが毎月支給されている。よって、月30日で土・日曜日を除く勤務日数で除すと1日当たり約3,600ウォンになる。全羅北道では職員食堂があり、ほとんどの職員がそこで昼食をとるが、メニューは日替わり定食1種のみで、価格は1,700ウォンである。ただし、一般食堂を利用すると4,000から6,000ウォンはかかる。

 交通費は、各月定額報酬支給日に各月分が支給される。
 全羅北道では職員各自の通勤距離その他の状況により、ほぼ40,000から100,000ウォンの範囲で支給されている。全羅北道では道庁職員専用大型バスが無料で朝運行され、多くの職員が利用している。

 職級補助費は、職責遂行のために職級により月定額が支給されている。全羅北道では地方4級以上(課長以上)の役職者に対し、60,000から200,000ウォンの範囲で支給されている。

 名節休暇費は韓国独特のもので、旧正月及び秋夕(旧お盆)に韓国では3日間ずつ公休日になるが、その時ほとんどの人が故郷へ帰り、実家で祖先への礼を行う風習になっており、帰郷時の土産代の意で職員に支給される。全羅北道での支給額は次のとおりである。


福利厚生費


 年暇補償費は、年次有給休暇の買い取り制度である。日本の公務員制度の中では見られない制度であり、韓国の民間企業でも実施しているところがある。地方公務員の年暇(年次有給休暇)は各団体の服務条例で定められているが、最多で年23日、繰越しはない。ただし、前年に病気休暇、年暇補償費を受けられなかった場合、翌年に年暇が加算される。そのうちの未使用年暇数を20日を限度に買取り、その年度の最終日である12月31日に支給する。


全羅北道地方公務員服務条例第18条 全羅北道地方公務員服務条例第18条


年暇補償費の算定方法
年暇補償日数=20日×(12月−除外期間(月))/12月
※小数点以下は切り上げ
年暇補償費=年暇補償費支給日の属する月の月俸給額×1/24×年暇補償日数


 まとめ
 これまで、給与、手当及び福利厚生費を見てきたが、日本の制度と異なる点は、給与及び手当の額、支給方法等について、すべて国で画一的に決定している、日本では見られない福利厚生費支給がなされている、特に定額給食費、名節休暇費年暇補償費は韓国独特の制度である。
 韓国公務員の報酬であるが、1998年度俸給表によると初任給の俸給額は地方5級(大学卒業程度)で654,100ウォン、地方7級(短大卒業程度)で473,900ウォン、地方9級(高校卒業程度)で369,100ウォンである。日本の地方公務員の場合は、大学卒業程度で約180,000円、短大卒業程度で約150,000円、高校卒業程度で約140,000円である。(1999年3月現在のレートは100円≒1,000ウォン)
 また、具体的に数人から聞き取り調査をしたところ、韓国広域自治体に勤務する国家4級職(局長級、45歳程度)の年俸は約45,000,000ウォン(税控除前)、同様に広域自治体の地方5級職(係長、50歳程度)で約35,000,000ウォン、地方行政主事(40歳程度)で約25,000,000ウォン程度であるとの回答を得た。
 日韓の年収について、強いて実生活での金銭価値として比較すると、下表のとおり物価比較で東京(日本)と韓国全都市平均物価は約2倍の開きがあるので、上記韓国公務員の年収を2倍すると日本の同ランクの公務員を若干下回る程度になる。


主要食料品小売物価


 また、韓国財閥系の一流民間企業の場合、大学卒業の初任給が年間13,000,000ウォンから15,000,000ウォン程度、日系の一流企業(電子機器メーカー)は20,000,000ウォンである。

 第3節 その他の勤務条件
  1 概要
 公務員の服務に関する必要事項は、地方公務員法又は同法による大統領令の規定する事項を除いては当該地方自治団体の条例で定める(地公法第59条)。したがって、ほとんどの事項は地方自治体の条例に規定されている。
 自治体によって若干の違いはあるかもしれないが、全羅北道の「全羅北道地方公務員服務条例」(1983年4月11日条例第1368号)によると以下のとおりである。

  2 その他勤務条件
  (1) 勤務時間
 同条例13条に、勤務時間は、3月1日から10月末までは9時から18時まで、11月1日から2月末までは9時から17時までとする。土曜日は、土曜全日勤務制(隔週交代勤務又は隔週勤務)を実施する場合は9時から17時まで、土曜全日勤務を実施しない場合は9時から13時までとする。昼食時間は12時から13時までとする、と規定されている。したがって3月から10月までは1日8時間、11月から2月は7時間労働となっている。
 全羅北道では、土曜日の勤務形態がIMF管理体制下に入る前後で勤務体制が変わっており、前は職員の隔週土曜全日勤務体制を実施していたが、後はすべて職員は士曜日9時から13時までの勤務としている。

  (2) 休暇
 同条例17条に、公務員の休暇は年暇、病暇、公暇及び特別休暇に区分されると規定されている。
 年暇については、先に年暇補償費のところで見たとおりである。
 病暇については、職員が疾病又は負傷により職務遂行できないとき、伝染病に罹患し他の職員に悪影響を及ぼすときには、所属機関長が1年60日の範囲で許可できる。道知事は長期療養を必要とするときには1年180日の範囲で許可できる。
 公暇は、所属機関長が、職員が法令等に基づく徴兵・召集、国会・法院等への召還、投票するときなどに、必要な期間を許可しなければならない。
 特別休暇のうち、慶弔事休暇は次のとおりである。


慶弔事休暇 慶弔事休暇


 女子公務員の特例として、妊娠中の女性公務員を対象に出産前後を通じて60日以内の出産休暇、生理期毎に1日とることができる女性保健休暇がある。
 日本の育児休業制度に類する制度としては、育児休職制度があり、本人の願により任用権者が命ずることができ、期間は1年以内である。その他、韓国通信放送大学在学生への授業休暇、褒賞休暇、20年以上在職者への長期在職休暇、月15日以上船舶で乗船勤務する職員への乗船休暇、退職予定者への退職準備休暇、災害に遭った職員への災害救護休暇がある。

 第4節 地方公務員の社会保障制度
  1 概要
 公務員が疾病・負傷・廃疾・分娩・退職・死亡又は災害を負うときには本人又はその遺族に法律が定めるところにより適切な給与を支給する(同法第68条)。
 したがって、公務員は一般の疾病・負傷・廃疾・分娩・死亡については保健福祉部長官が管掌する医療医療保健事業の適用を受け、退職又は死亡、公務災害については公務員年金法の適用を受ける。

  2 医療保健事業
 地方公務員も国家公務員もすべて保健福祉部長官が管掌する国民医療保険事業の被保険者となる。当事業は国民医療保険管理公団が保険者となり、被保険者及び被扶養者の疾病又は負傷に関して、診察、薬剤又は治療材料、手術、看護、移送などの給与を行う。保険料については、日本と同様、被保険者たる地方公務員本人と地方自治体が負担する。
 1998年6月3日に国民医療保険法が改正されて現行の制度になったが、それ以前は「公務員及び私立学校教職員医療保険法」が適用されていた。

  3 公務災害制度
 公務員(地方公務員及び国家公務員)の退職又は死亡、公務による負傷等については、公務員年金法により、行政自治部長官が管掌し、長官の委託を受けて公務員年金管理公団が事業を実施している。事業内容は、給与支給、費用徴収、公務員年金基金増殖事業、公務員厚生福祉事業、その他行政自治部長官が委託した事業である。
 給与支給事業の中で、公務による負傷等については療養費、療養一時金、災害扶助金、死亡弔慰金の短期給与を支給、退職・廃疾及び死亡については退職給与(退職年金、退職年金一時金などを含む。)、障害給与、遺族給与、退職手当の長期給与を支給している。費用については、国家、地方自治体、公務員本人が同法及び大統領令で定められた額を負担する。





第4章 地方公務員と労働基本権
 第1節 労働組合
  1 現況
 韓国は1997年12月3日、国際通貨基金(IMF)管理体制下に入り、金融・企業の構造調整、銀行の構造調整、公企業の民営化などを打ち出し、本格的な経済改革に取り掛かった。しかしながら、1998年末には失業者166万5,000人で失業率7.9%、平均消費者物価は前年比7.5%上昇、特に石油製品、加工食品、公共料金などの上昇が目立った。
 このような状況の中、労働組合活動も活発化した。1998年5月19日、蔚山広域市にある現代自動車が社員45,000人のうち8,189人を解雇する方針を決めたことに対し、現代自動車労組は5月27日から一斉ストライキに入り、3か月後、交渉の席に労働部長官、与党国民会議総裁まで引きずり出してようやく決着した。その後も金融機関の閉鎖命令等に対する労組による市内での示威運動、政府による財閥改革案に対する国会議事堂前での全国民主労働組合総連盟(民主労総)の集会などが行われた。
 韓国政府は、IMF管理体制以後、労働者・使用者・政府及び公益者代表から構成される大統領常設諮問機関の「労使政委員会」を設置し、労働問題の解決に当たっている。1998年2月には、労使政委員会において協議を重ね、整理解雇制が導入された経緯があるが、ここにきて韓国労働組合総連盟(韓国労総)と民主労総の労働界が企業等の構造調整中断を強く要求し、1999年2月24日民主労総は労使政委員会脱会を正式に宣言した。政府は労使政委員会特別法を制定し格付強化を図るとともに、労働界に対し対外信任度と経済回復のために労使政委員会への復帰を説得しているが、難しい状況になっている。
 労働部統計によると、1997年の労働組合数は単位組織で5,733個所、産業別連盟組織で41個所、組合員は1,484,194人である。組織状況は下表のとおりである。


組織状況


 韓国労働組合総連盟(韓国労総)と全国民主労働組合総連盟(民主労総)は産業別連盟からなる2大連合組織である。
 韓国労総は1989年5月に組織され、現在、約20の産業別連盟から構成され、組合員数は約100万人、民主労総は1987年頃から活動し、現在組合員数約40万人である。
 産業別連盟の中でも特に活発な動きを見せているのが民主労総系の金属産業連盟である。中枢業種に、機械金属、電気機械、自動車、造船業があり、現代自動車組合を含む自動車6社の組合や現代重工業、大宇造船などの組合も傘下に置いている。
 韓国政府は、現在、「教員の労働組合設立及び運営等に関する法律」を改正して、小学校、中学校、高校の教師らの市・道単位での労働組合設立を許可した。団体交渉権については、市・道または全国単位での交渉は認めるが、政治活動は禁止する方針である。教員については、以前から私立学校の教員を中心に労働基本権制限撤廃要求があり、金大中政権でやっと実現した。
 また、「労働組合及び労働関係調整法」が改正されれば、失業者が地域別労組を組織できるようになり、現在13%程度の労組組織率も上昇するものと推定される。
 今後、韓国社会では、経済改革がさらに断行される中、民間産業分野での組合活動が活発化することが予想される。

 第2節 地方公務員の労働基本権制限
  1 法の論理
 大韓民国憲法第33条第2項に「公務員である勤労者は法律が定める者に限り団結権・団体交渉権及び団体行動権を持つ。」と規定、地方公務員法第58条第1項に「公務員は労働運動その他公務以外による集団行為をしてはならない。ただし、実際に労務に従事する公務員はこの限りではない。」と規定され、労務従事者を除き公務員の労働運動等を禁止している。労務従事者とは、現業機関の作業場で単純労務に従事する者をいう。
 労働組合及び労働関係調整法第5条にも「勤労者は自由に労働組合を組織したり、これに加入することができる。ただし、公務員と教員については別に法律で定める。」と規定されており、前記地方公務員法第58条の規定をうけて、労働組合の組織化も禁止されている。

  2 代償措置
 韓国では、公務員は全体の奉仕者であるという特殊性から、公務員の報酬決定原則は、営利を追求する民間企業の賃金決定原則と確然と区分されており、国で画一的に決定されている。その上、公務員は労働三権もほぼ完全に制限され、使用者たる地方自治体と交渉する機会さえ与えられていない。





おわりに

 これまで見てきた韓国地方公務員制度を日本の制度と比較してみると、1998年6月には第2回目の統一地方選挙が実施されて本格的な地方自治制度が定着しつつあるとはいえ、やはり中央集権的色彩がまだ強い。地方自治体の人事、給与及び手当の決定・支給、労働基本権の制限等など、政府が法律、大統領令、指針等を通じて一律指導しており、地方自治体の裁量は少ない。
 1998年10月政府は、長官(日本の大臣に相当)級委員長等5名で構成される中央人事委員会を、大統領直属組織として設置する計画を打ち出した。委員長を含む委員5名は、政治的利害を排除するため全員大統領が任命する。公務員の人事制度、人事政策、1級から3級高位職採用及び昇進に関する審査、人事関係法令・制度改正に対する審議・議決等公務員の人事権を総括する予定である。
 また、1999年1月1日から「公務員職場協議会の設立・運営に関する特別法」が施行され、国家機関・地方自治体に勤務する公務員等は、勤務環境改善、業務能率向上苦情処理、その他機関の発展に関する事項を協議する職場協議会を機関ごとに設立できるようになった。
 この職場協議会は、労働三権を基礎に団結して闘争する組織である労働組合とは区別され、協議事項は拘束力を持たず、加入できる公務員は6級以下の一般職公務員及びこれに準ずる研究・特殊技術の一般職公務員、特定職公務員中6級以下の外務公務員、技能職公務員、雇用職公務員、の一般職公務員に相当する特別職公務員であるが、教員・軍人・警察・消防等や人事・予算・経理・秘書・機密・保安職等を除く職員とされており、労働組合の2大連合組織である韓国労総や民主労総には加盟できない。
 政府は公務員労働組合の前段階として職場協議会設立を認めたが、労働組合として発展するには国内外の労働界の動き、経済、国民の理解など色々な要素があり予測が難しい。
 一方、行政自治部も、21世紀の自治化、情報化時代に備えた、効率的で現在の経済社会環境に応じた、小さく生産的かつ行政需要に対応できる機能的な地方自治体の組織改革へ着手、定員についても機構改革と併せて自治体の財政自己能力を反映させながら、2002年までの5年間で30%の削減をしていく計画を立て、1998年中第1段段階の35,000名(12%)削減に続き、第2段階として2002年までに52,000名を削減する計画である。
 今後、地方自治制度が定着しつつある中、経済改革、それに対する労働界の動向、第二次政府機構改編及び地方自治体機構改編などが実施されるにつれて、公務員制度がどのように変わるのか注目していきたい。





別表2 別表2
別表2 別表2
別表2 別表2





別表3 別表3
別表3 別表3
別表3 別表3





別表4 別表4
別表4 別表4





参考文献


講義行政法II
公務員報酬体系合理化法案に関する研究
地方行政情報
地方行政基本現況
1998労働統計年鑑
1997国際統計年鑑
地方公務員制度
韓国地方公務員の人事制度について
大韓民国の地方行財政 
姜求哲 著 学研社
韓国行政研究所
韓国地方行政研究所
行政自治部
統計庁
統計庁
坂 弘二 著 学陽書房
(財)自治体国際化協会
(財)自治体国際化協会ソウル事務所





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