自治体国際化フォーラム

地域の国際化活動に有益な情報を、地方公共団体をはじめ関係者に広く紹介する“自治体のための国際化情報誌”「自治体国際化フォーラム」を毎月発行し、都道府県、政令指定都市、特別区、全国の市町村、地域国際化協会等に無料で配布しており、発行部数は6,000部に上っています。 特集等のテーマについてのご要望、地域の情報、ご意見等を担当課までお寄せください。


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フィリピンの地方自治「バランガイ」


ボタン はじめに

ボタン フィリピンの地方自治
ボタン バランガイの由来

ボタン
バランガイの組織構成
ボタン バランガイの行政サービス

ボタン バランガイの財政
ボタン おわりに



ボタン工業団地開発の経緯

 フィリピンは、複数国による植民地支配の歴史、7,000以上の島からなる地理的な統合困難性、また、数十にも上る言語や多宗教・多民族国家という分裂的要素など、統治しにくい条件がそろっているにもかかわらず、東南アジア諸国の中では、国家行政地方自治行政ともに体系的に確立している国といわれている。

 特に、地方自治行政に関しては、アキノ政権時の1991年に制定された新しい地方自治法(以下「新地方自治法」という)のもと、地方自治の強化を前面に打ち出し、積極的に地方分権を進めている。

 本稿では、フィリピン地方自治制度の特徴的な存在である行政単位「バランガイ」について紹介したい。




ボタン工業団地の概要

 フィリピンにおける地方自治体の単位は、基本的には州(78)、市(67)・町(1,540)、バランガイ(4万1,935)の三層(表1「地方自治体の構造」参照)で構成されており、これらの地方行政単位が全国12のリージョン、3つの自治区およびマニラ首都圏の全部で16の行政管区に分けられている。

 自治区を特別に設けている理由としては、独特の言語や宗教をもつ少数民族地域や反政府勢力の強い地域、また極めて経済開発の遅れている地域に対して一定の自治権を与えることによって社会の安定を確保する必要があるためである。

 バランガイは50〜100世帯の集落からなる、同国で最も小さく身近な地方自治体で、地域レベルの政策を計画し実行する上で基本となる組織である。

 市や町はこのバランガイの集合体であり、バランガイを規模だけでみれば、日本の町内会や自治体に近い組織といえるが、新地方自治法上も、法人格や税の賦課徴収などの行政事務権能、執行機関、議会を有する自治体なのである。

表1 地方自治体の構造

表1 地方自治体の構造




ボタン工業団地

 そもそも、バランガイとは「帆船」を指す言葉であるが、フィリピンがまだスペインの統治下に置かれる前、バランガイに乗ったマレー人がフィリピン諸島にやって来て、島の各地に住むようになり、その集団のことをバランガイと呼ぶようになったのである。

 その後、バランガイはスペイン統治期に一時「バリオ」に改名された経緯(※注)があるが、1973年に認可された憲法で再びバランガイに改称された。この翌年の大統領令で、「バランガイはスペイン人の到来以前からフィリピンに存在していた地方自治体単位で、われわれの先祖のコミュニティーに関する相談先はバランガイであった」と名称の変更理由を述べている。




ボタンVSIPへの進出企業<

 バランガイは行政機能をもつバランガイ政府とバランガイ議会などで構成されている。政府は、住民から公選されるバランガイ長を中心に行政サービスを行い、一方、議会は9名の議員(うち7名が公選議員)で構成され、バランガイ条例の制定や当初・補正予算の審議、バランガイ開発計画や住民福祉計画の審議などを行う(表2「バランガイの構造」参照)。

 また、バランガイには地域住民の意志を幅広くとり入れるため、議会のほかに次のような法定の組織も存在する。

(1)青年バランガイ議会

業務:青年層の意見集約、青年層に影響を及ぼす重要案件の審議

構成:議長および議員は7名で3年の任期、15歳から21歳までの青年層による公選

(2)バランガイ会議

業務:バランガイの直面する諸問題や財政状況、事業の進歩状況など活動内容の公聴・討論、バランガイ議会への法案提出

構成:そのバランガイに6か月以上居住する15歳以上のフィリピン国民全員

(3)バランガイ仲介・調停委員会

業務:バランガイにおける争議や紛争の仲介・調停、管轄の市町の地方予審裁判所への調停結果報告

構成:委員長(バランガイ長)、委員(委員長が任命した者)、事務局(バランガイ事務官)

表2 バランガイの構造

表2 バランガイの構造




ボタンVSIPの今後の展望

 バランガイの行う行政サービスについては、新地方自治法で規定されており、以下のようなサービスの提供が義務付けられている。

(1)農業支援サービス(農業栽培資材の配給システム、農業品の収集と販売所の運営)

(2)保健・社会福祉サービス(保健サービスセンター、デイケアセンター等の運営)

(3)衛生・環境美化・廃棄物収集に関するサービスと施設管理

(4)文化センター・公園・遊技場・スポーツセンター等の施設管理

(5)公共マーケットの運営 等




ボタンVSIPの今後の展望

 バランガイの財源は税収入(商店税)や賦課金、手数料の、自主財源のほか、国や州、市・町からの配当金や補助金であり、このうちの約10%が青年バランガイ議会の運営費に充てられる。予算案はバランガイ議会で審議され、条例形式で施行されることになるが、その他歳出の構成については各バランガイの状況によって様々である。




ボタンVSIPの今後の展望

 以上述べてきたように、地域の実情に応じた住民レベルでの自治が活発に行われているのは非常に珍しく興味深いことである。

 フィリピンが現在推進している地方分権については、地方自治体の財政難や人材育成など課題も多く、決して順調な歩みとはいえない。しかし、最小単位の自治体「バランガイ」の存在は、確実にフィリピン国民の行政参加意識を高めていることも事実なのである。

 日本で「地方の時代」といわれるようになって以来、「住民の行政参加」や「地域間の連携」について重要視されるようになったが、この小さな行政単位「バランガイ」に、日本の「草の根行政参加意識の高揚」に向けたヒントが隠されているような気がしてならない。

(※注)
スペインによる統治を徹底させるために組織名をスペイン語に統一したもので、機能的にも単なる税金徴収機関としての役割しか与えられていなかった。

シンガポール事務所所長補佐
山脇 深