自治体国際化フォーラム

地域の国際化活動に有益な情報を、地方公共団体をはじめ関係者に広く紹介する“自治体のための国際化情報誌”「自治体国際化フォーラム」を毎月発行し、都道府県、政令指定都市、特別区、全国の市町村、地域国際化協会等に無料で配布しており、発行部数は6,000部に上っています。 特集等のテーマについてのご要望、地域の情報、ご意見等を担当課までお寄せください。


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オーストラリアにおける自治体合併―ニューサウスウェールズ州を例に


ボタン はじめに

ボタン ニューサウスウェールズ州
における合併の状況

ボタン 合併の手続き

ボタン
最近の合併例
−アーミデール・デュメリック市

ボタン まとめ





ボタンはじめに

 オーストラリア(以下、豪州)では、英国やニュージーランドでの地方自治体改革にならい、1980年代より自治体合併に取り組んでいる。豪州では、州政府が州法によって自治体を設置しており、自治体に対し強大な権限を持っている。このため、各州がそれぞれの方針で合併を進めている。

 本稿では、豪州における代表的な州であるニューサウスウェールズ州(以下、NSW州)の近年の自治体合併例を紹介する。



ボタンニューサウスウェールズ州における合併の状況

 当州は1981年に強制的な合併を行って、自治体数が200から176へ変化した。その後は「自治体の自主的な取組みを尊重する」という姿勢で臨んできたため、合併の動きは緩やかであった。しかし、1999年に入ると、州自治相が州内の全自治体に対し、構造改革と自発的な合併に取り組むよう指導したため、にわかに合併の動きが活発化してきた。

 2000年中に4件の合併が成立し(現在NSW州の自治体数は173)、3件の合併案が協議中である()。隣り合う複数の自治体の合併案が多いが、2001年3月には、NSW州のオルバリーとビクトリア州ウォドンガとの間で、州境をまたいだ合併計画も浮上している。

表 2000年の自治体合併事例(2001年3月26日現在)

旧自治体又は協議自治体(人口) 新自治体名、経過 備 考
リッチモンド・リバー(10,000)
カジノ(11,800)
合併成立2000.2.21
リッチモンド・ヴァレー
地方部の隣接自治体
アーミデール(22,000)
デュメリック(3,950)
合併成立2000.2.21
アーミデール・デュメリック
農村地帯のデュメリック内に核都市アーミデールが存在する
ニンボイダ(4,700)
ウルマラ(6,200)
合併成立2000.7.1
プリスティン・ウォータース

コンコード(26,000)
ドルモイン(32,400)
合併成立2000.12.2
カナダ・ベイ

ストラトフィールド(27,000)
バーウッド(30,000)
協議中 当初、アシュフィールド市との3自治体合併案が出たが、ストラトフィールド市議会はバーウッド市とのみ合併に賛成
ヌンドル(1,400)
キリンディ(5,000)
協議中 ヌンドル市は合併に反対
ウィンドウラン(500)
コナーゴ(1,500)
協議中
ボタニー(36,000)
サウスシドニー(77,800)
ランドウィック(119,000)
2000.3.1協議打ち切り 財政的に裕福なボタニーが、そうでない自治体との合併に消極的



ボタン合併の手続き

 1999年に州地方自治体境界委員会(The Local Government Boundaries Commission)が作成した「自発的な合併のためのガイドライン」は、合併成立までの手続きについて、次のとおり規定している。

 まず、自治体同士が協議して、州自治相あてに合併案を発議すること。この発議を行うことができるのは、自治体議会および一定数の有権者である。一定数とは、(1)自治体全地域における合併発議の場合、250人または全有権者数の10%のうちどちらか多い方の数、(2)自治体のある一部だけの発議の場合、250人または全有権者数の10%のうちどちらか少ない方の数をいう。地方自治体は合併を協議するに当たって、その過程を地域住民に公開し、周知を図るとともに、公聴会を開かなくてはならない。

 自治体からの発議を受けた自治相は、地方自治体境界委員会に合併案の審査を求める。委員会は8つの項目(財政面、地理的条件、歴史的条件、住民意見、議員の意見、行政サービスの提供能力と施設、職員の雇用、運営の効率性と有効性)について調査を行い、公聴会を開催するなどして、当合併案が適当であるかどうかを審査する。

 適当であると判断すれば、委員会は承認を自治相に答申する。そして州総督の告示をもって合併が成立し、数カ月後に新しい議会の選挙が実施される。




ボタン最近の合併例ーアーミデール・デュメリック市

 アーミデール・シティ・カウンシル(以下、アーミデール市)とデュメリック・シャイア・カウンシル(以下、デュメリック町)は、シドニー市街から北へ約400kmに位置し、デュメリック町(人口3,950人、面積4,168平方km)の中にアーミデール市(人口2万2,000人、面積34平方km)がぽつんと浮かぶ、変わった地理条件の自治体である。

 2つの自治体が合併の可能性を検討し始めたのは1960年代に遡る。それは、先に述べた地理的条件や、それゆえに両自治体が共通の課題を抱えていたこと、両自治体の管理する施設などを有効的に利用することを狙ったためであった。その後も、周辺自治体や近郊の大学とともに、「自治体の効率的な運営のための統合」という問題を議論してきた。

 1999年に州自治相の指導を受けて同年7月に両市町の間で合併協議を始め、境界委員会の審査を経たのち、12月には合併案が承認された。正式に成立したのは2000年2月21日である。

 この「スピード結婚」の過程で、どのような課題に取り組んだのか、アーミデール・デュメリック職員のスティーブ・ゴウ氏にお話を伺った。それによると、2つの自治体が1つに統合される際に、予想された懸案事項とは、

  1. これまでの施策、運営方法を変えなくてはならないこと
  2. 議員数が減少することによって、民意が反映されなくなること(特に僻地)
  3. 職員の雇用数をどうするのか

 であり、そして、これらの問題を次のように解決した。

  1. 専門家の参加を得て、コスト分析を行った。99年8月にワーキンググループを設置して、両自治体の職員間で協議を重ね、両自治体職員は「共同の意識」を育んでいった。この努力の結果、合併施行日の前後も住民サービスが寸断されることはなかった。
  2. 住民と議会間のパイプ役として、地域ごとに議員が長を務める地域委員会(Local Area Committees)を設置した。
  3. 最低3年間は職員の削減を行わないこととした。ただし、退職後の補充をしないなど、その後の緩やかな定員減を図ることとした。

 2000年2月の合併後に、どのような変化があったのかの問いには、「財政的には、2つの自治体が合わさったことによって予算額が大きくなり、僻地で受けられる行政サービスに変化が起こった。つまりサービスの幅が広がり、これまでは予算不足でできなかった事業を実施できるようになった」との答えであった。




ボタンまとめ

 新自治体の名称とマークは公募により決定した。名称は、旧自治体のものを連ねたものだが、マークは、それぞれのシンボルである教会と山を重ね、2つの自治体の結びつきを願っている。

 アーミデール市とデュメリック町が、1999年7月の発議から加速度的に短期で成し遂げた合併は、(1)議員および職員が積極的に取り組み、(2)常に情報を公開して住民が議論に参加するよう配慮したうえで、十分に協議を行ったことによると言われている。「自治相の指導というトップダウンと、長年にわたる議論に基づいた地元の取組みというボトムアップの両方がうまくバランスがとれていた」として、評価されている。