自治体国際化フォーラム

地域の国際化活動に有益な情報を、地方公共団体をはじめ関係者に広く紹介する“自治体のための国際化情報誌”「自治体国際化フォーラム」を毎月発行し、都道府県、政令指定都市、特別区、全国の市町村、地域国際化協会等に無料で配布しており、発行部数は6,000部に上っています。 特集等のテーマについてのご要望、地域の情報、ご意見等を担当課までお寄せください。

海外の地方自治体

大都市圏の中を忘れさせる緑豊かな住宅都市 レーン・コーブ市
map

 レーン・コーブ市はシドニー中心部から北西に8kmほど離れたシドニー都市圏域を形成する市の1つである。市内にはシドニー市街地から至近距離にある国立公園もある反面、新興住宅地の形成、また工場団地の造成、集積も進み、豊かな緑と調和した都市づくりを重視、発展を続けている市である。


概要


情報の共有・発信



市民サービスの向上


おわりに




市の概要

 当シドニー事務所では昨年より、職員の研修目的に近郊のカウンシル(市町村)を訪問している。今回紹介するレーン・コーブ市へは、職員のほか各種機関(総領事館、JETRO、シドニー市役所)への派遣職員、都道府県海外事務所職員も参加。レーン・コーブ市職員からの説明、また意見交換を行った。

 レーン・コーブ市は、ニュー・サウス・ウェールズ州にある173カウンシルのうちの1つであり、シドニー都市圏域の中心に程近い、ノース・ショア(北部地域)に属する都市型カウンシルである。11のサバーブ(日本の○○市の中の△△町に相当)から構成されており、カウンシルの面積はおよそ10.5平方km、人口およそ3万2000人。市庁舎のあるカウンシル中心部からハーバーブリッジを渡るフリーウェイを通り、シドニー中心部へ車でおよそ20分、バスでも30分足らずであることから、居住者のほとんどがシドニー中心部への通勤者である。市のシンボルマークにも森と水が使われるほど、緑豊かな住宅街で、医者や弁護士などの富裕層が多く居住している。市内にはレーン・コーブ川沿いにレーン・コーブ国立公園があり、休日には多くの家族連れが訪れている。

 レーン・コーブ市は、シドニーのすぐ北側に位置しているが、開拓当初は(1780年代)農業に適した土壌ではなかったことから入植がシドニー市街地ほど進まず、都市建設のための木材供給地として、林業を営む人の居住が始まりであった。

 その後、1840年にグリーン・ウィッチ、ノース・ウッド、ロング・ヴィル(いずれも現在のレーン・コーブ・カウンシルを形成するサバーブ)などレーン・コーブ川沿いをシドニー中心部と結ぶフェリーが運航を開始したことから、住宅地として発展を遂げた。また1890年にはセント・レナーズ(サバーブの1つ)に鉄道が、また路面電車も1909年に現在の市庁舎のある地域まで開通(現在は廃止)した。

 レーン・コーブという地名の由来については諸説があり定かではないが、1788年2月9日にリューテナント・ウィリアム・ブラッドレーが記した住民会議の議事録の中で、初めて登場。その後、北部地域のカウンシルに属していたが、地域住民による1885年、1893年と州政府への2回の陳情を経て、1895年2月9日、レーン・コーブ・カウンシルが正式に誕生した。

 国際交流では、現在レーン・コーブ市はパプア・ニューギニアのリゴーと姉妹都市の関係にあるほか、イギリス等に友好都市がある。



市の行政

 今日ではオーストラリア国内の各自治体において、オンライン市役所の取組みに積極的であるが、その中でもレーン・コーブ市は、早期に取組みを始めた自治体の1つである。

 庁舎内のイントラネット整備も早くに完成し、各職員間においての情報の共有、特に検索システムは他の自治体より進んでいる。例えば、ある事柄について検索を行うと、それについての情報や取るべき処理手順を示す画面にアクセスできるほか、職員の誰が担当し、コンタクトを取ればいいのかもわかるように整備されている。

 市民向けのホームページについても、必要な情報がわかりやすくシンプルにまとめられている。ここレーン・コーブ市もオーストラリアの先進的な例にもれず、レート(固定資産税に似た地方税)と各種支払いがサイト上からできるシステムが2001年12月から稼動している。

具体的には、オーストラリアで使われることの多い3種類のクレジットカードにより支払いが可能である。また、「Lane Cove Online(レーン・コーブ・オンライン)」は、それに登録すると議会の議事録、職員募集案内、報道資料、4半期毎発行のニュースレター等をEメールで送信するサービスである。



市の産業

 市庁舎の隣には2001年秋に完成したレーン・コーブ・アクアティック・レジャーセンターがある。屋内25mプール、屋外50mプールのほか、ジャグジー、サウナ、ジム、フィットネス・センターなども完備され、子どもからおとなまで楽しめる施設である。営業時間も平日で午前6時から午後9時、休日も午前6時から午後8時と長い。平日の早朝は出勤前のサラリーマンの利用が多く、また、休日は市内のみならず、市外からの利用も数多い。

 ゴミ処理の問題も都市型カウンシルである、レーン・コーブ市では重要な問題の1つとされている。生活ゴミの処分場については州政府の管理であるが、処分料(1t当たり80.35ドルを州当局に支払う)、また収集費用などが増加しており、支出削減また環境維持のため、各種啓蒙活動を行っている。

 特に学校や地域イベントにおいては、市が主体となり精力的に分別収集、ペットボトル等のリサイクルの推進指導など、環境教育、特に小学校での教育に力を入れているほか、市民にはパッケージ商品の購入を控えるよう、ゴミの減量を呼びかけている。

 また、図書館も充実している。CD、ビデオテープ、DVDなどの貸出しも行っている。特筆すべきは1つの市では図書の収集にも限界があることから、レーン・コーブを含めた近隣の図書館を運営する5つの市が共同で「Shorelink Library Network WebCat(ショア・ライブラリー・ネットワーク・ウェブキャット)」という図書館ネットワークを作り、市民の利便性の向上を図っている。

 このネットワークはレーン・コーブ市のほか、マンリー市、モスマン市、ノース・シドニー市、ウィロビー市と加入している5つの市が、それぞれ運営しているウェブサイト上で共通の図書検索システムを稼動し、住民の相互利用を可能としている。



終わりに

 レーン・コーブ市は豊かな緑に囲まれた静かな街である。また、市内にある工業地域も木々に囲まれ、住宅地とは一線を画している。あくまでも自然を破壊せず、調和した街づくりを市及び市民の両方が一丸となり取り組んでおり、その取組みが1998年にはオーストラリア美化保全協会ニュー・サウス・ウェールズ州支部から表彰された。今後も緑との調和のとれた発展が期待される都市である。