自治体国際化フォーラム

地域の国際化活動に有益な情報を、地方公共団体をはじめ関係者に広く紹介する“自治体のための国際化情報誌”「自治体国際化フォーラム」を毎月発行し、都道府県、政令指定都市、特別区、全国の市町村、地域国際化協会等に無料で配布しており、発行部数は6,000部に上っています。 特集等のテーマについてのご要望、地域の情報、ご意見等を担当課までお寄せください。



海外事務所特集
特集1:シンガポールの緑化政策 〜国家の命運をかけたプロジェクト〜


シンガポール事務所所長補佐 住山 貢





 はじめに


 シンガポール国際空港の到着間際、機内の窓から見下ろせば、あたり一面に広がる緑を目にすることができる。さらに空港から市街地へ向かうハイウェイを車窓から眺めれば、整然と整備された街路樹や、南国を実感させる色鮮やかな植物が自然と目に飛び込んでくる。今日、シンガポールは「ガーデンシティ」や「クリーンアンドグリーンシティ」と呼ばれ、その街並みの美しさは世界各国から訪れる多くの旅行者などの目をなごませ、かつ賞賛を浴びている。

 実際のところ、これらの様々な種類の緑、木々や南国特有の植物は、赤道直下に位置するシンガポールの自然や気候ゆえに乱雑に生育した雨林といった、多くの人々が持つイメージと異なり、そのほとんどが人工的に整備され、明確なコンセプトのもと、シンガポール政府のたゆまぬ努力と研究に研究を重ねて実現された、いわば「政策的な緑」であり、国家の最重点政策のひとつとして実践されている「緑の創造」のための取組みなのである(注1)。

 シンガポールが国家戦略のひとつとして、なぜこうした緑化政策に全力をあげて取り組まなければならなかったのか。以下、こうした政策の背景とともに、緑化の現状や政府の取組み、今後の計画や政策の課題などについて紹介することとする。

 (注1)熱帯雨林は後述するように自然保護区などで維持・保存されている。





 政策の背景


 シンガポールで緑化のための取組みが進められたのは、初代の首相リー・クアン・ユー氏(1965年から1990年まで首相を務め、現在は上級相。以下「リー前首相」と記述。)の提唱に端を発する。そのきっかけとなったのはリー前首相が、国民が街で痰やつばをはいているのを見て考えついたと巷では言われているが、より差し迫った理由として、この緑化政策が、1965年にマレーシアからの分離・独立を余儀なくさせられたシンガポールが国家として生き残るために実践せざるを得なかった、いわば国家の命運をかけた最重点の基本プロジェクトであったという事実が存在する。

 シンガポールは当時わずか人口200万人余り、国土面積が日本の淡路島程度しかなく、特に発達した産業や資源も有していなかった。また、年間を通じて高温・多湿(表1)な気候となっており、生活するうえでも決して過ごしやすいといえる環境ではない。加えて、複数の民族で構成される多民族国家(表2)となっており、これらは国家を運営するうえではいずれもマイナスの要因であった。

 こうした事情を抱えながら、シンガポールがなお国家として生き残り、繁栄するためには、外国の投資や企業および観光の誘致など、外部の力に依存せざるを得ず、そのためには、外国人が安心して訪問し、投資・企業進出などを行うことのできる国づくりが必要であった。

 そこで、目をつけたのがこの緑化政策であり、世界トップレベルの緑の国を築き上げることで、安心、快適、清潔なイメージを海外投資家や観光客に与え、それらの力を借りることで国際的な競争力を高めることこそが、独立後間もないシンガポール政府の緊急の課題であったのである。

表1 気候

シンガポール 東  京
年平均気温
年間降水量
年平均湿度
26.8℃
2345mm
84.3%
15.9℃
1467mm
63.0%

表2 民族構成
民 族 比 率
華人系
マレー系
インド系
その他
76.8%
13.9%
7.9%
1.4%





 緑化の現状


 シンガポールには実際のところ、どれほどの緑が存在しているのだろうか。

 シンガポールの国土面積は約683平方km(注2)で、その国土の利用は表3のとおりとなっている。

 一方、現在シンガポールには合計約33カ所、約1650haに及ぶ都市公園や約2900haの自然保護区がある。また道路沿いの街路樹は4000haを超えており、管理している樹木だけでも実に約100万本にのぼり、さらには、後述するパークコネクタと呼ばれる自然の遊歩道や散策道なども整備されている。

 これらを国土の利用別の割合および実際には利用されていない土地、あるいは利用できない土地の存在などを考慮すると、実におおむね3分の1以上の国土が緑で覆われていることになる。また、国民1人当たりの公園の面積を見てみると、2000年3月末現在でシンガポールでは約6.7平方mとなっているのに対し、日本の東京都(23区)では約3.0平方m、大阪市では3.4平方mとなっている(注3)。

 以上のことから、シンガポールが人口密度6050人/平方km(東京都5404人/平方km)の都市国家であることを考慮すると、いかに多くの緑を確保しているかということが数字のうえからもうかがえる。

(注2)現在のシンガポールの国土面積は682.7平方km。1990年当時は約626平方kmであったが、その後の埋立により面積が増加。
(注3)実際には公園などの定義がそれぞれ国によって若干異なるが、ここではあえて数字で比較してみることとする。

表3 国土の利用区分
用 途 割 合 用 途 割 合
建設地域等
森 林
湿原・原野
49.1%
4.3%
2.4%
農 地
公園その他

1.5%
42.7%

出典:Singapore facts and pictures 2001
注:「建設地域等」には住宅、工業地域などを含み、「その他」には墓地、軍用地、空地、未使用地などを含む。





 緑化政策の体系


(1)政策の変遷

 緑化政策の具体化は1967年に開催された植樹キャンペーンおよびガーデンシティ政策に端を発する。前述したとおり、リー前首相の提唱、指導力の下、地域住民の協力を得ながら緑の必要性を訴え、これまで意識啓発や各種キャンペーンなどのソフト面の普及を図るとともに、公園の建設や街路樹の整備などを強力に押し進めてきた。

 しかし、都市国家シンガポールが、今日までこれだけの緑を政策的に創出し、増やすことができたのは、1967年以後、各年代における政策目標ともいえる緑化のためのコンセプトを明確に示し、かつそれらを着実に実践しながら政策を進めてきたからである(表4)。


表4 政策コンセプト
年 代 重  点  項  目
1960年代 (1)クリーン&グリーン政策の展開 (2)道路沿いの植樹 (3)公園の建設・設備
1970年代 (1)道路沿いの植栽 (2)色彩豊かな植物の植栽 (3)歩道橋などへの植栽 (4)アメニティ施設の整備 (5)埋立地の緑化 (6)駐車場への植栽
1980年代 (1)フルーツの植樹 (2)維持管理の機械化 (3)コンピュータの導入 (4)色彩豊かで香りある植物の植栽 (5)目的別アメニティ施設の整備
1990年代 (1)生態系に配慮した公園整備 (2)住民参加の公園づくり (3)公園ネットワークの形成 (4)公園の計画的改修 (5)木陰のある遊歩道整備
2000年代 (1)住民のニーズにあった公園づくり (2)住民と公園との共存・共生 (3)緑を楽しめる場の創出


 すなわち、初期には、まず何よりも緑を増やすことが先決とされたため、できるだけ多くの公園や街路樹を整備するといった、量的整備に重点が置かれていた。しかし、緑が一定量確保された70年代になると、街路樹にも見た目に美しいカラフルな木々の植樹が求められることになった。また、公園にも利用者が快適に過ごせるよう、必要なベンチや水回り施設なども、次々と付加されていくことになった。

 80年代に入ると、カラフルであると同時に香りのある樹木を植栽したり、フルーツの茂る樹木も植栽されるなど、単に緑を増加させるだけでなく、緑化に付加価値をつける試みがなされるようになった。散水や剪定などのメンテナンスをはじめとする管理面で、人手不足解消のための積極的な機械化の導入が図られたのもこの頃である。

 そして、90年代から現在にかけての政策は、自然環境との調和、生態系を考慮した緑化を図ることがコンセプトとなっており、地域住民が自然と共生し、緑を楽しむことのできる公園、環境づくりなど、様々な取組みが行われている。

(2)組織・政策体系

 シンガポールの緑化政策は現在、国家開発省が担当しており、具体的な施策はその法定機関である国立公園庁(National Parks Board)が行っている。国立公園庁はシンガポール植物園(Botanic Garden)の中に設置されており、次に掲げる国内の公園や植物園、自然保護区などを所管している(表5)。


表5 国土の利用区分
名称・区分 特 色
公園…イーストコーストパークなど
計33
海辺のジョギングコース、バーベキューピット、犬の訓練エリアの設置など、地域の特色を活かした公園づくりを進展
植物園…ボタニックガーデン
計1
1859年開園。60万種以上の標本あり。ランの多様性では世界トップクラス
自然(保護)区…ブキティマなど
計4
熱帯雨林の原生林。マングローブ林などをできる限り自然の状態で保存
道路その他地域(街路樹、やし、低木など) (本文参照)
パークコネクタネットワーク…ジュロンなど 計7
公園や自然保護区を緑の遊歩道などで結合


また、国立公園庁が行っている政策の体系は図1のとおりである。



 特に植樹などに関する維持管理などについては様々なアイデアが取り入れられており、法による規制などについてもシンガポールならではの厳格な規制も盛り込まれていて、たいへん注目に値するのではないかと思われる。

 次節以下において、具体的な取組み内容について紹介することにする。





 政策の内容  


(1)緑化のためのアイデア、工夫

 政策のポイントととしてまずあげられるのが、植物に関する徹底した研究と維持管理である。前述したとおり、緑化政策の必要性を提唱したのはリー前首相であるが、そのもとで緑化を最初に具体化させた人物は、林学に関する専門知識を持ったマレーシア人の官僚であった。高温多湿のシンガポール国内に生育する植物の種類および数は、もともと限られていたことから、他の近隣諸国やカリブ諸島などの地域から植物をシンガポールに持ち込んで、シンガポールの気候や土壌に適するかどうか、実験に実験を重ねたとされている。

 こうした実験を通じ、合計約8000種類の植物が海外から持ち運ばれてきたが、結果としてその当時シンガポールで生育する可能性があると判断されたのは、そのうちの約2000種類であり、例えば、ヒメノカリス・スペシオサのような、ほぼ1年中美しい花の咲くカリブの植物などは、残念ながらシンガポールの気候に合わず、育てることは無理であった。

 現在、シンガポールには約2500種類の植物が生育しているが、そのうち実に約60%以上のものが外来産であるとされている。1960年代以降、各年代において導入したシンガポールの代表的な植物は表6のとおり。


表6 シンガポールへの導入植物
年 代 導入 植栽された代表的な植物の種(学名、日本名)
1960年代 Pterocarpusu indicus
ヤエヤマシタン(マメ科高木:中国南部、インド原産)
Samanea saman
アメリカネムノキ(マメ科高木:南アメリカなど原産)
Swietenia macrophylla
オオバマホガニー(センダン科高木:西インド諸島など原産)など
1970年代 Delinix regia
ホウオウボク(マメ科高木:マダガスカル原産)
Cassia surattensis
モクセンナ(マメ科低木:ジャワ、スマトラ原産)
Bougainvillea
ブーゲンビリア(オシロイバナ科花木:中南米原産)など
1980年代 Michelia alba
ギンコウボク(モクレン科常緑樹:インドネシア原産)
Fagraea fragrans
テンブス(フジウツギ科中高木:フィリピンなど原産)
Murraya paniculata
ゲッキツ(ミカン科常緑小高木:ミャンマーなど原産)など


 また、植物の維持管理の方法についても、ITの先進国らしくコンピュータが活用されている。すなわち、街路樹に植栽された樹木の1本、1本がすべてデータベース化され、コンピュータに登録、管理されている。樹木の種類や名称はもとより、植樹年月や樹齢、さらには過去の病歴など、樹木を適性に管理するための多くの情報がインプットされており、常に良好なコンディションで維持管理されている。もちろんこうしたコンピュータによる効率的な管理の裏には地道な努力も隠されている。植物の専門家による樹木1本1本の現場での点検がシンガポールでは行われており、毎年、約9カ月をかけて国内すべての登録済樹木が最新の情報に更新されることになっている。

(2)厳しい法の規制

 政策の2つ目のポイントは、法による厳しい緑の保護規制である。一般的にITの活用と並び、シンガポールの各行政施策の特徴として厳しい法の規制と厳格な執行があげられる。

 緑化政策においても同様であるが、特にシンガポールにおける緑化のもつ意味合いが、前述したように他の国に比してより重要度が高いことから、非常にきめ細かなルールが定められている。その基本となっているのは、「公園および樹木法(Parks and Trees ACT)」とそれに基づく「公園および樹木の保護に関する規則」である。これらは主として、公園の整備や利用について定めるとともに、樹木や植物の育成およびその保護を図ることを目的として1975年に制定された。その規制内容は主に次の3つから構成されている。

 [1]「公園を利用したり、植物を楽しむ国民」に対する規制

 例えば、公園内でのゴミ捨て、木登り、植物の採取、昆虫類の捕獲などは禁止行為として定められており、これに違反した場合は、公園内から強制的に退去させられたり、2000ドル以下の罰金に処せられる。

 [2]「自分の土地に樹木や植物を持っている国民」に対する規制

 例えば幹の寸法が1m(地面から50cmの高さの幹を基準として計測)を超える木は当局の許可なく、勝手に木を切ったりすることは、仮にそれが個人の所有しているものであっても禁止されている。また、長く伸びすぎた植物の手入れや芝の刈入れについても、樹木などの所有者が適切に行うよう義務づけされており、これらの違反者に対しては、最大1万ドル以下の罰金に処せられることになる。必要な場合には、所有者の代わりに国立公園庁が樹木保護行為などを行い、それに要した経費を当局が所有者から徴収することも可能となっている。

 [3]「建物を建設したり、都市開発を行う事業者」に対する規制

 事業者が建築や開発の許可を受ける際には、緑化などに関する一定の基準を遵守しなければならない。例えば、道路沿いには2m程度の緑地帯を設けることや、コンクリートを使った擁壁には、景観に配慮するという観点から、フィカスプミラに代表されるつる植物などで緑化しなければならないこととされている。違反者には開発許可が下りないだけでなく、1万ドル以下の罰金が課せられるとともに、是正措置をおこたった場合には、当該措置を行わない日ごとに、1日あたり100ドルの罰金が科せられることになっている(表7)。


表7 公園および樹木の保護に関する規制
対 象 主な規制内容 罰 則
国 民
公園内などにおける(1)ごみのポイ捨て行為、(2)景観をそこなう行為(広告、看板)、(3)鳥や昆虫の捕獲行為、(4)植物に被害を加える行為を行わないこと
許可なしに樹木の伐採を行わないこと
芝などを植え込んだ道路肩などに駐車をしないこと
など
10,000Sドル以下の罰金または6カ月以内の禁固 (行為継続の場合1日あたり250Sドル)
土地などの所有者
自己の所有する樹木であっても伐採、移植を許可なしに行わないこと
必要な公共開発に対しては自己の所有する樹木などを強制的に移植、除草し、必要な保護を行うこと
自己の所有する樹木、植物の根付けおよび維持管理、雑草および長くなりすぎた芝の刈り入れなどを行うこと
など
10,000Sドル以下の罰金(行為継続の場合1日あたり100Sドル)および必要な代執行に要した経費の徴収
開発事業者など
建築、開発計画中に緑地の設置や植栽などを行う場合には、敷地内の樹木および植栽予定の樹木を提示すること
樹木を植える場合の土はトップソイル(表土:有機物を多く含み、植物の栽培に適した土)を用いること
コンクリート擁壁は一定の植物で緑化を図ること(写真)
歩道橋は緑化のための植栽、植樹を構造的に組み込むこと(写真)
裸地にはすみやかに芝を植えること(写真)
ごみ収集所などの周囲には背の高い生垣を設けること
道路沿いには緑地帯(2m程度)を設けること
舗装されていない地表面を樹木の幹の周辺に設けること
植栽帯の中央分離帯は少なくとも2mを確保すること
など
10,000Sドル以下の罰金(行為継続の場合1日あたり100Sドル)および必要な代執行に要した経費の徴収
※写真については本誌P27〜30の「世界の都市めぐり」に掲載しています。


 また、特に開発などを行う事業者に対しては、当該開発計画中に緑地の開発などが含まれるときは、建築物規制法(Building Control ACT)上の計画申請時に一定の緑化基準の審査を行い、緑化に関する基準が遵守されない場合には計画そのものの不許可あるいは罰金などの制裁を加えるなど、建築関係法令との連携をも併せて行っている。

 なお、これら計画申請の流れはおよそ図2のとおり。(現在は後述するIT政策で紹介するEDAシステムによりコンピュータで審査される。)






 今後の展開について


 以上述べてきたように、緑を増やし、適切に維持していくためのシステムがしっかりと合理的にきめ細かく確立されているのが、現在シンガポール政府が進めている緑化政策の大きな特徴である。

 政府は、今後こうしたシステムをうまく活用しながら、緑を点的な整備から面的な整備へと広げることに重点を置くこととしており、そのため、これまで整備してきた各緑化エリアをネットワークとして整備していく方針を明らかにしている。具体的には、各公園間や緑地、自然保護区などを木陰のできる並木道でつなげようとする計画で、地域住民がこれらの緑を移動しながら楽しむことのできる空間づくりを行うのがねらいである。

 これまでにも232kmの公園ネットワーク道が完成しているが、今後さらにこれらネットワーク整備を拡充していく予定である。

 また、これらハード面の整備とともに、今後の緑化政策を推進するうえで重要なカギとなってくるのが国民の意識づくりである。緑化政策の性質上、長期的な視点にたって継続的に政策を実行していくことが必要であり、そのためには国民に対する地道な啓発活動が不可欠となる。

 現在政府が行っている主な取組みは、「クリーン&グリーンウィーク」に代表される各種キャンペーンや、緑化に関するセミナーなどの開催、各学校における教育プログラムの実施などである。

 特に「クリーン&グリーンウィーク」は、毎年11月に開催される全国的な緑化環境に関する啓発活動であり、1990年に開始されて以来、継続的に実施されている。

 テレビやラジオなどの媒体を使っての広報活動はもちろんのこと、同キャンペーンの実施にあたっては、毎年、異なる緑化環境に関するテーマが設定され、このテーマに沿ったかたちでシンガポール全土において各種イベントなどが繰り広げられる。さらにこの時期に合わせ、毎年いっせいに植樹が実施され、本年度は国立公園庁の指導の下、国内50カ所で合計773本の樹木が植樹された。

 このほか、地域の住民を巻き込んだ啓発活動としての「緑化コンペティション」が開催されている。これは住宅ブロック単位で実施されている緑化推進のためのイベントであり、住民が各住居内でどの程度まで緑化を進めているかを競うものとなっている。

 前述のとおりシンガポールは国土が狭いため、1人でも多くの住民が住宅を確保することが必要であり、より効率的な土地活用の視点から、HDB(Housing & Development Board)住宅と呼ばれる高層住宅が多数建設されている。限られた住居スペースの中で、緑をどのように効果的に創出できるかを競うことにより、住民間の緑化意識づくりを進めようとするもので、特に効果が出ている啓発活動のひとつとして評価されている。

 また、2001年に発表された都市づくりのマスタープラン「コンセプトプラン二一」では、40年後のシンガポールとして、人口550万人(現在の約38%増)、面積は埋立により約15%増と見込んでおり、現在に比べてより密集した居住環境になると予想されている。

 しかし、それにもかかわらず、緑を増やす計画により、例えば現在の約2500haから約4500haに増加するとされている。このため、

(1)HDB住宅のより一層の高層化
(2)用途地域を工業、準工業、商業、住宅といった区分から公害型、非公害型の二つの区分に変更し、複合施設、混在施設の設置を可能にして土地の高度有効利用を図ること
(3)沼地や河口を緑のオープンスペースとして位置づけ、副都心の中心とする新しい概念の都市づくり

など、緑を増やすためのユニークな先取り政策が提唱されている。