凶悪犯罪、全米で5年連続減少

米国連邦捜査局(FBI)は1997年10月、全米の凶悪犯罪発生率が5年連続で減少している旨の犯罪年次報告書を発表した。1992年と1996年の事件発生率を比較すると殺人事件は20%、強姦事件は16%、強盗事件は23%、暴行事件は12%それぞれ減少しており、1995年と1996年を比較しても暴力的犯罪(殺人、強姦、強盗、暴行)で7.4%、財産に対する犯罪(窃盗、車泥棒、放火)で3.2%と、ともに減少している。
さらに、ワシントン・ポスト紙が1997年12月全米大都市の警察に対し照会し、取りまとめたところによると、1997年は、多くの大都市で殺人事件率が前年と比べて急激に減少していることが分かった。同年10月のFBIの犯罪年次報告書に続くこの調査により、1997年も凶悪犯罪減少の傾向が依然として継続していることが裏付けられている。
1992年に2262件の殺人事件を記録したニューヨーク市では、1997年は前年比23%減の755件にまで減少し、1967年以来最低となった。1977年以降殺人事件の発生が年間600件を下回ったことがなく、1993年からは毎年1000件を超えていたロサンゼルス市では、前年から20%減の566件となっている。その他、シカゴ市で前年比5%減、フィラデルフィア市では3%減、ヒューストン市で1%減、フェニックス市で6%減、ダラス市で4%減、サンディエゴ市で14%減等となっている。暴力的犯罪は1960年代初頭から全米的に増加し始め、以後20年間確実に増加し続けてきたが、1980年代初頭のクラック(コカイン)蔓延による犯罪多発を頂点として以後減少を示している。
このような、犯罪減少の原因について確たる回答は得られていないが、人口構成が大きな要因となっていることは多くの専門家が指摘しており、最も犯罪に加担しやすい年齢である10代後半から20代前半の人口がこれまで減少傾向にあったことが犯罪の全体数を減少させているものと推測されている。麻薬常習者の平均年齢が上昇していることにより麻薬取引をめぐる青少年の暴力ざたが減少しているほか、好調な米国経済のおかげで生活が安定し、犯罪予備群が減少していることも犯罪減少の理由として考えられている。
また、特に大きな要因となっているのは警察官の増員、鉄砲の規制、刑罰の厳格化等による治安維持の強化であろう。クリントン政権は1994年に警察官増員のための連邦補助金制度を成立させ、全米で3万人の警察官が増員されたが、例えば1995年に麻薬犯罪による逮捕者が過去最高の150万人となったことについては、犯罪自体の増加よりも警察の取り締まりの強化を反映したものと解釈されている。
さらに、いったん犯罪が減少すると、警察に時間や人員の面での余裕ができ、犯罪発生防止に力を入れることができるようになるという相乗効果も指摘されているが、1997年の大幅な減少は研究者の間でも「通常の理由では説明できないほどである」と驚きをもって受けとめられている。
なお専門家によると、殺人事件発生率と都市の経済状況には相関関係がみられ、貧困率および失業率と殺人事件発生率は同調して動く傾向があるとされ(ただし貧富の格差の拡大と殺人事件発生率には関連はみられない)、また、刑罰の強化が犯罪発生率を低下させることは統計的に裏付けられており、刑務所への収監数が増加すると殺人事件発生率が低下し、逆に刑務所からの出所者数が増加すると殺人事件発生率が増加することが分かっている。
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