HOMECLAIR 刊行物クレア海外通信(海外事務所だより)北京事務所|中国の就学前教育事情
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中国の就学前教育事情


ボタン はじめに

ボタン 中国の就学前教育制度
ボタン 幼児園の特徴

ボタン 北京の幼児園
ボタン おわりに





ボタンはじめに

 中国では、従来から、結婚後の男女のほとんどが共働きであったため、幼児教育施設の整備が行われてきた。公立施設のみならず、各種政府機関、企業、学校、人民解放軍等の「単位」も、所属職員の子女のために施設を整備してきた。しかし、1978年以降進展してきた改革開放政策の下では、こうした単位も経済的競争にさらされることとなり、経済的利益を伴わないこうした社会サービスを提供し続けることが困難となった。加えて、1979年以降中国が実施してきた一人っ子政策は、各家庭の子どもに対する期待を増し、教育投資の増大を招いた。この結果、教育費における階層格差が顕在化してきている。

 本稿では、こうした状況の中での中国の就学前教育事情について、北京市の事例を含めて紹介する。




ボタン中国の就学前教育制度

 中国の学校教育制度は、日本と大差ない。日本では「学校教育法」により規定されている幼稚園について、中国では、1995年公布の中華人民共和国教育法第17条により就学前教育を含む学校教育制度を体系化し、日本の幼稚園に当たる教育機関を「幼児園」と名づけている。幼児園は、教育部の管轄の下、就学前の保育と教育を施すこととされ、日本の保育所の機能を併せ持っている。具体的には、日本と同様、その心身の発達のため、必要な習慣、礼儀、言葉等を学ばせている。地方によっては、幼児園以外の就学前教育を施す場として、幼児園の不足を補うため、小学校に付属して設置された「学前班」と呼ばれる1年制の幼児学級がある。

 幼児園在園期間は1年間から3年間で、在園している幼児は3歳から6歳の子どもたちとなっている。ただし、その地域の経済水準などの理由で小学校入学が7歳からの地域では、幼児園に7歳児がいる。また、統計によると、1998年には全国の幼児の43.8%しか入園していない。これは、農村において幼児園の整備が不足していることを反映していると思われる。なお、幼児園は、中国の他の学校と同様に9月が入学の時期である。

 2001年の時点では、全国の幼児園は11万1706カ所あり、在園する児童は、約2021万8000人、その内、新規に入園した児童は約1398万2000人、専任の教師は約54万6000人、その他のスタッフが、約31万6000人となっている。




ボタン幼児園の特徴

 1996年6月施行の幼児園工作規程第七条によると、中国の幼児園は、全日制、半日制、定時制など様々なコースを持つことができる。そうした中に、「全託」というコースがある。これは、一種の寄宿制であり、月曜日の朝から金曜日の夕方までの期間、24時間保育を行う制度である。これに対して、朝から夕方まで幼児園に行かせる場合を「日託」と言う。また、幼児園の運営形態としては、公立だけではなく、政府機関、企業、軍隊等が設置した幼児園、私立幼児園等各種の形態がある。例として、当事務所のある北京市朝陽区の幼児園132の分類を見てみると、市立幼児園が23、前述の単位(政府機関、企業、学校、人民解放軍等)が設置した幼児園67、北京市行政機構の末端である「街道」幼児園10、集団所有制幼児園3、教育体制改善のための実験園となっている幼児園9、私立幼児園20となっている。

 幼児園の学費については、幼児園工作規程第43条により、省、直轄市等の教育部門が学費項目、標準額を定めることとなっている。参考までに、山東省の省都である済南市の基準表を別表に掲げる。

【別表 済南市幼児園等学費月額基準表】(参考:1元≒15円)


幼児園 学前班
実験校、師範
学校付属
1類 2類 3類 食事有 食事無
日託 全託 日託 全託 日託 全託 日託 全託
保育費 20元 40元 17元 34元 14元 28元 12元 24元 8元 4元
管理費 60元 75元 50元 60元 40元 50元 35元 42元 18元 14元
雑 費 10元 10元 10元 10元 10元 10元 10元 10元 10元 10元
代行費 75元 75元 55元 55元 45元 45元 40元 40元 0元 0元

1類、2類、3類は施設の水準などを下に指定を受ける。
上記の他、食費については、家庭が負担する。
上記のうち、家庭が全額負担するのは、保育費と雑費であり、他の経費については、職場等が家庭の状況に併せて、一定の負担をしていることが多い。

 この表によると、最も高額な幼児園に全託で通わせた場合、食費を含まない学費は月200元となる。最も安価な三類幼児園への日託であれば、月97元となる。なお、山東省の統計を見ると、都市居住者の2001年平均年収は7141.16元なので、都市居住者の夫婦共働き家庭の平均月収ベースに直すと約1200元である。




ボタン北京の幼児園

 2001年の時点では、北京市に幼児園は1719カ所あり、在園する児童は約217万5000人、専任の教師は約1万2000人、その他のスタッフは約1万4000人となっている。

 今回の調査に当たり、公立の「北京市西城区曙光幼児園」と私立の「北京市大地実験幼児園」を訪問した。

 北京市西城区曙光幼児園(葛鳳林園長)は、一級一類に分類されている公立幼児園で、園児が217人に対し、先生21人とその他の職員が10人いる。7時半から17時半まで子どもを預かって、学費は月340元。その内、食費が150元で、朝、昼、夜の3食を提供している。土、日曜日に子どもを預かることはないが、夏休み等長期の休みがないため、平日ならばいつでも子どもを預けられる。

 次に、北京市大地実験幼児園(閻化宇園長)であるが、この幼児園は台湾資本と国家教育部の合作でチェーン展開している幼児園で、北京では1997年に開園した。教師数は約30名、園児約360名となっている。また、夏休みなど長期の休みを設けているが、その期間中でも、子どもを預かることは可能である。学費は月約700元と、私立幼児園としては平均的水準となっている。

 この他、両園からのヒアリングによると、(1)定員等の都合で、特定の幼児園に入園できない児童はいるかもしれないが、市全体としては、十分に定数が確保されている。学費の高い私立幼児園に行かせるか、安価な街道幼児園に行かせるかは、各家庭で経済状態等を勘案して決定することになるが、日本における保育所の待機児童のような問題は起きていない。(2)最上級クラスの児童を小学校に行かせて、授業体験させる等の試みをしている。(3)北京には宗教上の理由から豚肉を食べない回族等が居住している。このうち、こうした食事習慣に厳格な家庭の子どもは、市内に幾つかある市立回民幼児園に行くが、緩やかな家庭の子どもは普通の幼児園に通園し、他の子と同じ食事をしている等であった。




ボタンおわりに

 中国では、その多様な民族構成、地域によって異なる経済水準等のため、直接的、包括的に規定した法規が存在しないまま、各種制度が行われたり、例外事項が極めて多くなることも少なくない。この事情は、幼児園制度についても例外ではない。本稿では、中国の就学前教育のうち、都市における事情を概括的に紹介してみたに過ぎないことを御容赦いただきたい。調査過程では、家庭の所得格差による階層分化の傾向も感じられたものの、幼児を抱える共働き家庭が働きやすい環境が整えられていた。また、教育内容も、一部の幼児園では英語を勉強させる等充実ぶりは著しい。今後は、幼児園間の格差をどのように縮小していくのかが重要な問題になると思われるが、現在のところそうした取組みは具体化されていないようである。今後、この問題にどのように取り組んで行くのか、関心を持っていきたい。


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