HOMECLAIR 刊行物クレア海外通信(海外事務所だより)ロンドン事務所|ロンドンにおける混雑賦課金制度について
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ロンドンにおける混雑賦課金制度について
ロンドン事務所次長 竹内 弘明(愛知県派遣)


ボタン はじめに

ボタン 制度の概要
ボタン 実施半年間の効果と影響

ボタン おわりに


ボタンはじめに

 英国の地方自治体の交通部局は、「2000年交通法(Transport Act 2000)」の施行により、渋滞緩和のために必要であれば交通に関連した賦課金制度を独自に設定する権限を与えられた。なお、ロンドンに関しては「1999年GLA法」により既にこの権限が認められていた。

 これに基づき、2003年2月17日から、ロンドンの中心市街において混雑賦課金(Congestion Charging)制度が導入された。その目的は、ロンドンの中心市街に乗り入れる車両の数を減らすとともに、その料金収入を公共交通機関の改良に役立てるという点にあった。

 この混雑賦課金制度は、ブレア労働党政権によって2000年7月3日に創設されたロンドンの広域行政を所管するグレーター・ロンドン・オーソリティ(Greater London Authority:以下、GLA)の最初の公選市長に当選したケン・リビングストン市長の公約の目玉の1つであった。ロンドン市交通局(GLAの一部局、Transport for London:以下、TfL)は、GLA発足直後の2000年7月には既に非公式に利害関係者への協議を開始し、以後数度にわたる公式の協議を繰り返し、同年11月には制度の詳細がすべて決定された。

 ただ、実施に至るまでには、GLAを構成する32の区(バラ:Borough)の1つであるウェストミンスター・シティ・カウンシルから、「住民に対し広範な協議を十分に行わなかった」などの理由で、裁判所に対し少なくとも実施時期を遅らせるよう求める請求をされたり、保守党からは、「貧困層に過酷なものであり、公共交通が改善されない限り、自動車利用者に対して公正を欠くものである」と批判された。政府は、導入以前の段階では賦課金に対して好意的な姿勢を取ってこなかったが、制度導入後はこれをサポートする見解を表明した。

 今回は、この制度の概要と実施から約半年間の効果と影響について報告する。



ボタン制度の概要

 混雑賦課金制度とは、ロンドンの中心市街に乗り入れる車1台について、1日5ポンドの料金を課すという制度である。賦課されるのは、休日を除く月曜から金曜の午前7時から午後6時30分までの間に賦課対象となる地区内約21km2図参照を運転した自動車である。オートバイ、モーター付き自転車、自転車、タクシー、レンタカー、ブルーバッジ(身障者認定証)所有者の自動車、特定の代替燃料仕様車、バス及び緊急車両は賦課されない。また、賦課対象地区内の住民には居住者割引(9割引)が申請により適用される。

 賦課金は地区内で運転した日の夜10時までに支払わなければならず、支払いはインターネット、指定の店頭、郵送、電話、携帯電話のテキストメッセージのいずれでも行うことができる。夜10時以降に支払う場合には、賦課金は10ポンドとなる。

 当日に支払わなかった場合は罰金が科せられる。罰金の額は、14日以内なら40ポンド、15日目から28日目の間は80ポンド、28日を超えると120ポンドとなる。

 賦課は、地区内の周縁に設置された監視カメラにより行われ、カメラは規制地区内に進入する車のナンバープレートを写し、賦課金の支払いが行われたナンバーの消し込みを行うという仕組みである。

図:混雑賦課金対象区域
図
(出典)http://www.cclondon.com/download/DetailMapCCZ.pdf



ボタン実施半年間の効果と影響

 TfLは、実施から約半年間の賦課金制度の効果と影響について、2003年10月23日に報告書 Congestion Charging:6 Months On を発表した。以下、報告書の概要を紹介するが、その内容は、混雑賦課金制度は概ね成功であると高く評価するものとなっている。


導入の効果

 混雑賦課金制度は、ロンドンの交通の最大の課題であった4つの点(道路の渋滞の解消、バスの運行状況の改善、自動車による移動所要時間の信頼性の構築、持続可能で効率的な物とサービスの提供の確保)に直接取り組む手法であり、期待通りの効果とさらに市当局に収入をもたらしている。

 リビングストン市長は、「混雑賦課金制度は長い間問題となっていた交通状況に対する過激な解決方法であったが、ロンドンの交通を活性化するのに大いに寄与した。ロンドンは、世界の大都市で実質的に市内の交通混雑を減少させた初の都市である」と述べている。


交通量の減少と渋滞の解消

 導入後6カ月の平均で、ゾーン内乗り入れ車両数は1日当たり5万台減少し、その大半は公共交通機関、自転車、スクーター、カーシェアリングなどにシフトしており、ゾーン内へ入る人数の減少は4000人弱とみられている。公共交通は利用者の増加によく対応し、バスの運行状況は賦課金の効果により改善されている。また、市民の50%以上が制度を支持しており、反対者は30%程度である。

 ゾーン内の渋滞状況は、80年代後半以降で現在が最も良好である。自動車の台数は16%減少し、自動車の平均走行速度が改善され、交通事故も減少している。具体的には、ゾーン外からゾーン内への所要時間が従来は往復80分であったものが、10分程度短縮された。また、TfLのゾーン内の移動時間短縮目標値は20%から30%であったが、30%という最も高い目標値が達成されている。

 公共交通機関の対応も極めて適切である。TfLでは、朝の通勤ピーク時には1万5000人の乗客増加に対応できるようバスの運行を増やした。さらに、交通量減少の効果で、バスの運行状況が改善され、バス停での待ち時間は約3分の1短縮された。運行距離の機会損失は60%減少した。タクシーの乗り入れは20%の増加で、これはTfLの予測を上回るものである。ローリーやヴァンは10%減少、自転車は30%の増加であった。

 ゾーン周辺の交通量は7%の減少から7%の増加までで、予測の範囲内の影響を受けているが、ゾーン内からその周辺への深刻なレベルのしわ寄せは認められない。

 ゾーン内の賦課時間帯における交通事故は、前年同期比で20%減と計算されている。二輪車による事故の増加が危惧されていたが、その事態は起きていない。


経済への影響

 賦課金の経済活動への悪影響に関する危惧は的外れに終わったと見られる。小売店への客足のインデックスである「フットフォール」によれば、ゾーン内への買い物客は前年同期比で7%減少している。2002年春の時点で、1日160万人がゾーン内へ入っていたが、その85%から90%は公共交通を利用していたと見られるため、自動車利用者の減少はほとんどこれには影響していないと考えられる。賦課金の影響は、買い物客の減少数のうちの5%から7%程度を占めるに過ぎないと見られている。さらに、交通の遅滞の解消、走行時間の短縮によって、燃料消費量の減少、業務効率の向上などのプラスの経済効果も上がっている。


賦課金収納事務の改善

 導入当初より賦課金の収納については円滑に行われてきたが、TfLでは当初から支払い者への意見聴取を行ってさらに改善に努めている。2003年8月には事務委託先との契約に変更を加え、事務委託先において賦課金取り扱い要員を増員し、ITサービスのレベルを向上させることを求めた。2004年4月末までには事務委託先のサービスの改善はすべて達成される予定である。TfLでは事務の運用面についても緊密な監視を続け、必要とされる改善を逐次行っていく予定である。

 コールセンターへの照会は、発足当初、週当たり16万7000件だったのが、現在では7万件まで減少している。この数字の減少は、賦課金制度が市民に浸透したことによる。

 賦課金の不払いに対する罰金については、6カ月の平均で、週当たり10万6200件の支払い通知が発行されている。9月末時点で不服申し立ては累計1万4200件であったが、このうち現在までに1万600件が処理され、約4000件が審査中である。不服申し立て件数は、月を追うごとに減少してきており、罰金発生件数に占める割合も62%から16%にまで減少した。


収益

 混雑賦課金スキームから今年度発生する収益は6800万ポンドと見積もられ、これは交通の改善に投資されることになっている。2003年秋以降の事務改善に伴って、さらに収入は増加すると見込まれており、近い将来の1年当たりの収益は8000万から1億ポンドが見込まれている。収益が当初予測より低くなったのは、ゾーンへ乗り入れる自動車台数の減少が当初の見込みより大きかったことと、賦課金免除対象の数が当初の見込みより多かったことによるものである。



ボタンおわりに

 自動車交通の増大による慢性的な渋滞の発生、大気汚染問題、交通事故の増大などは、世界的に共通の課題である。このような中で導入されたロンドンの混雑賦課金制度は、国外においても大いに注目され、導入に際しては100以上の海外紙で報道されたようである。英国国内においても、エディンバラ市やリバプール市など、交通問題を抱えている地方自治体の注目を集めているところである。なお、本誌2003年12月号の「海外事務所だより」で、ロンドンに先立ち、2002年10月1日から混雑賦課金制度を導入したダラム県の事例を紹介しているので、参考にしていただければ幸いである。

 2004年春には、ロンドンの混雑賦課金制度の Second Annual Monitoring Report が発行される予定であり、いずれかの機会に報告したい。

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