コラム

第13回 安芸高田市

山脇啓造

広島県安芸高田市は、人口約2万9千人の小さな自治体です。1975 年の約3万7千人をピークに人口減少が続き、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は、当時の約16%から約39%へと大きく増加しています。人口の減少傾向は今後加速し、2040年には約2万1千人、2060年には約1万5千人となり、高齢化率は2040年に約46%、2060年に約47%に達することが予想されています。現在、外国人人口は612人で、総人口の約2.1%です。

安芸高田市では、2010年度に人権多文化共生推進室を設立したことを転機に、多文化共 生に向けた取り組みを本格的に始めました。同年に「多文化共生市民アンケート」や「多文化共生フォーラム」を実施し、2011年度には、多文化共生推進員や英語、ポルトガル語、中国語の翻訳・通訳員を雇用し、これら3言語による生活ガイドブックもつくりました。2012年度には、ポルトガル語の相談員も設置し、県立広島大学と連携した多文化共生事業も始めました。

安芸高田市は、2013年3月に、「外国人市民と日本人市民が互いに違いを認め合い支え合うまちづくり」を基本理念とする多文化共生推進プランを策定しました。プランの中で、浜田一義市長は「このまま人口が減り続けると、安芸高田市は深刻な担い手不足に直面することが予想されます。本市は多くの過疎地が抱えている問題と向き合い、新しい安芸高田市を創造していくために、外国人市民と日本人市民が手を携えて、この困難にチャレンジしていく」ことを謳っています。

そして、「少子高齢化、人口減少に伴う農業、福祉、工業分野の就労人口減少や地域の衰退などの課題がより深刻化」する中、2018年3月に、「多様な市民による持続可能なまちづくり」を基本理念とする第2次多文化共生推進プランを策定しました。このプランの基本目標は、「安心・安全に暮らし活躍できる地域づくり」と「移住・定住したくなる魅力的な地域づくり」です。外国人住民の活躍という「多文化共生2.0」の視点を取り入れいているだけでなく、外国人の「移住・定住」の促進に取り組むことを謳った全国初の多文化共生プランと言えます。「移住・定住」促進に向けた課題としては、「起業・就労支援による地域経済の活性化」や「まちの魅力の発信」などが掲げられています。このプランの策定については、3月のNHKの全国ニュースの番組でも大きく報道されました。

これまで、地方創生に取り組む自治体が進める移住・定住施策の対象は、事実上、日本人でした。政府は、外国人労働者の受け入れ拡充に大きく舵を切ろうとしていますが、安芸高田市のように、日本人だけでなく、外国人の移住・定住も促進するために、多文化共生を推進する自治体が今後、増えていくと思われます。

今回の安芸高田市のプランの各施策は、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)との関連が示されていますが、グローバルな観点から「多様な市民による持続可能なまちづくり」を進め、地方創生の新たなモデルを示すことを期待したいと思います。

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