小学校、中学校に入学する

多文化子育てをめぐる現状を知る

近年、日本の学校に就学する外国にルーツを持つ子どもの数は増えています。子どもたちの置かれている状況をまずは知ることが、地方自治体等の施策を考える一歩となります。

外国人児童生徒を取り巻く状況

外国人児童生徒在籍状況

日本の公立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等に在籍する外国人児童生徒数は、平成26年5月1日現在で7万3,289人となっています。そのうち、日本語指導が必要な児童生徒数については、平成24年5月現在では2万7,013人でしたが、平成26年5月現在で2万9,198人と増加しています。

日本語指導が必要な児童生徒数の調査は、毎年文部科学省が実施しているものですが、平成18年度からは「日本語指導が必要な児童生徒」の定義を明確にし、日本語で日常会話が十分にできない児童生徒だけではなく、学年相当の学習言語が不足し学習活動への参加に支障が生じている児童生徒についても日本語指導が必要な児童生徒として取り扱うよう周知されました。

また、外国人学校にも多くの外国につながりのある子どもが在籍しているといわれています。

<引用文献等>
文部科学省「学校基本調査」
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
文部科学省「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況等に関する調査(平成26年度)」の結果について
(平成27年4月24日発表)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/04/1357044.htm
「外国人児童生徒への教育支援」(自治体国際化フォーラム229号、2008年11月)
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_229/04_sp.pdf

このように、日本の公立学校に通う外国人児童生徒教育について、文部科学省が行っている主な取組みとしては、次のようなものがあげられます。

  1. 各都道府県の申請に基づき、外国人児童生徒等への日本語指導等に対応した教員定数の加算措置を行う
  2. ポルトガル語、中国語等7カ国語による「就学ガイドブック」を作成し、市町村教育委員会の就学担当窓口などで、外国人の就学案内に活用できるよう全国の自治体等に配布
  3. 文部科学省と独立行政法人教員研修センターの共催で、現職教員や校長等を対象に日本語指導者養成のための研修会を開催
  4. 「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」を実施。外国人児童生徒等を受入れる地域において、教育委員会や学校および関係諸機関の連携による就学支援の取組みや、地域にセンター校を設け、他の学校との連携による指導を行う等
  5. JSLカリキュラム(Japanese as a second language:第二言語としての日本語)の教員への普及と利活用を促進するため、「JSLカリキュラム実戦支援事業」を実施、JSLカリキュラムを用いた授業実践の事例集の作成や教員の指導力向上のためのワークショップを開催

また、平成20年6月に文部科学省が取りまとめた「外国人児童生徒教育の充実方策について」の報告では、国や地方公共団体等が取り組むべき施策の具体的な方向性について次のような内容が提言されています。

  1. 外国人の子どもの就学状況に関する調査の定期的・継続的な実施や、教育委員会と地域のボランティア団体等との連携による就学相談、就学案内の実施などの外国人の子どもに対する就学支援方策
  2. 外国人児童生徒の日本語指導に関するガイドラインの開発や、外国人児童生徒の指導にあたる教員や支援員等の確保・養成などの学校における適応指導・日本語指導の充実方策
  3. 外国人児童生徒も含めた子どもの居場所づくりや地域の日本語教育の推進などの地域における外国人児童生徒等の教育の推進方策
<引用文献等>
文部科学省「外国人児童生徒教育の充実方策について(報告)」(平成20年6月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/042/houkoku/08070301.htm
「外国人児童生徒への教育支援」(自治体国際化フォーラム229号、2008年11月)
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_229/04_sp.pdf

就学義務と外国人

日本国憲法は、教育を受ける権利について、その対象を日本国籍を有する者としています。

第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

現行では、外国人への保障については、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(「国際人権規約A規約」)(1966年採択、1979年日本批准)、「子どもの権利条約」(1989年採択、1994年日本批准)に基づき、保護者の公立学校への就学の求めがあれば、日本人と同様の無償教育を提供することになっています。 しかしながら、彼らには子女の就学義務は発生しないとされています。2005年11月に外国人集住都市会議が内閣府に対し、「我が国に90日以上滞在する外国人の子どもについて、教育を受ける権利と義務を法令上明記すること」等の規制改革要望書を提出しました。2006年1月、文部科学省はこれに対して「我が国の義務教育は、我が国の国民の人格形成と国家・社会の形成者の育成を目的としたものであり、このような義務教育を外国人に対して強制することは実際的であると考えられない」と回答しました。教育基本法第1条に規定される教育の目的は、「国民の育成」となっています。

<引用文献等>
西村 史子 『義務教育と中学校卒業認定試験』,2009

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夜間中学校

夜間中学校とは、正式には「中学校夜間学級」といい、学齢(満15歳)を超えた義務教育未修了者に中学校教育を行うため夜間に開設される学級の通称で、学校教育法第1条に定める学校(いわゆる1条学校)ではありません。
第2次大戦後、経済的理由などで義務教育を修了できなかった人を対象として、1947年に大阪市立生野第二中学校で「夕間学級」の名で始められました。「夜間学級」の名称では、49年に神戸市立駒ケ林中学校に開設された学級が最初で、これは開設1年後に市教委によって不就学対策学級として認可されましたが、文部省(当時)は、学校教育法に認められていない、労働基準法違反に通じる、保護者の就学義務不履行を助長するなどの理由で消極的でした。
しかし、近年では、中国や韓国などから帰国した子どもの日本語教育、中卒以上を要件とする資格取得を可能にするため、不登校児童生徒の増加などの状況にも照らし、行政の姿勢も弾力化している状況にあります。
在籍者数がピーク時の1954年には、87学級、生徒数4350人に上りましたが、その後、21学級、416人にまで減少しました。近年、上記の理由により外国人を中心に再びその利用者が増え、8都府県に31校、生徒数は2014年5月現在1,849人(文部科学省調査)となっています。
現在の夜間中学校では、学齢超過者にかぎり、様々な理由から十分に教育を受けられなかった人、再び学びたいという思いを持つ人、中卒認定試験を受けたい人など、幅広い年齢層からなる人が学んでいます。
外国籍の在学率が高いのは、働きながら時間をかけて勉強できることや、日本語力が十分でない学生のレベルに合う日本語のクラスを提供している夜間中学校が多いことによります。

このように、夜間中学で学習言語としての日本語を学び、次のステップを目指している外国人は少なくありません。また、近年、自治体の財源不足などが切迫する中、全国各地で民間が主導となった自主夜間中学が立ち上がっています。そこには、イジメで不登校になる中学生など公の夜間中学には入ることができなかった人々が集まってきています。

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バイリンガル教育

バイリンガル教育とは、「二言語を使うことができるようになる」ための教育といわれています。しかし、その教育は「誰が」「誰に」「どこで」「どの程度」「どの期間」「なぜ」教育するのかにより異なり、実際のところは世界中に多様なバイリンガル教育が存在します。

バイリンガル教育は大きく分けると、母語として家庭内でバイリンガルを育てる場合と、第二言語として学校で教育をする場合に区別することができます。

家庭内でのバイリンガル教育

日本語に関わるバイリンガルであれば、国際結婚家庭や南米日系人社会に住む日系人家庭が例として挙げられます。「親が子どもに母語を継承する」場合です。母語を継承するということは、「言語」だけでなく、言語の文化を継承し、また言語話者としてのアイデンティティを継承することでもあります。

学校でのバイリンガル教育

公用語を持つ国や社会、もしくは二言語以上の共存を表明している社会や集団で行われる場合は多いといわれています。国や社会単位で、二言語もしくは多言語併用の場合や多文化主義を志向している場合といえます。

バイリンガル教育の方法としては、1967年にカナダにおいて始まった、二言語(英語とフランス語)の「イマージョン教育(Immersion Education)」が知られています。カナダの英語母語話者の子どもをプログラムによりフランス語の接触量を増やし、カナダの対の公用語であるフランス語に「浸しこむ(immersion)」教育のことです。カナダのイマージョン教育以降、その方法を意識しつつ各国の状況に合わせて生み出された、アメリカの「双方向バイリンガル教育(Two-way Bilingual Education)」やオーストラリアの「英語以外の言語教育(LOTE Education : Language Other Than English Education)」などもあります。バイリンガルを社会で育てることは、日本の将来の人的資源を育てることにもつながります。

<バイリンガル教員>
群馬県太田市では、平成16年3月に「定住化に向けた外国人児童・生徒の教育特区」認定を受け、国内外(日本・ブラジル)にてバイリンガル教員を募集しました。
平成17年4月から「定住化に向けた外国人児童・生徒の教育特区」実施に係るバイリンガル教員による本格的授業(日本語教室)が開始となりました。
太田市HP
http://www.city.ota.gunma.jp/
池上摩希子、末永サンドラ輝美「群馬県太田市における外国人児童生徒に対する日本語教育の現状と課題」
(早稲田大学リポジトリ DSpace@Waseda University より)
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/28934/1/04_02_Ikegami.pdf
<引用文献等>
川村千鶴子 編著 (1998)、『多民族共生の街・新宿の底力』明石書店
川村千鶴子 編著 (2008)、『「移民国家日本」と多文化共生論』明石書店
川村千鶴子、近藤敦、中本博皓 編著 (2009)、『移民政策へのアプローチ』明石書店
小内透著(2003年)、『在日ブラジル人の教育と保育 群馬県太田・大泉地区を事例として』明石書店
『在日ブラジル人児童の教育から見る日本社会の多民族化状況』
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ukiuki/ritsumei2006.pdf

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