保育園、幼稚園に入園する

多文化子育てをめぐる現状を知る

日本では、1980年代以降の経済の拡大に伴い、外国人の流入が増加しました。特に1989年に出入国管理法が改正され、日系南米人を中心とする、いわゆるニューカマーを迎え、多文化社会への対応の必要性が加速しています。法務省入国管理局の発表によると、日本における在留外国人は約212万人を超えています(平成26年末)。在住外国人の増加は、日本社会にさまざまな新しい変化をもたらしているといわれています。

例えば、国際結婚の比率は全国平均で約5.8%、東京都内で9.1%であり、多様なルーツを持つ子どもが年間3万人以上誕生しています(2006年)。2006年をピークに国際結婚比率は下がってきているものの、地域社会で一緒に暮らしている外国にルーツをもつ子どもの増加は、出産、子育て、教育をめぐるさまざまなライフステージにおいて、既存の施策や制度だけではカバーできない多くの問題があることを明らかにしています。

私たちは、多様な背景をもつ人々とともに暮らしていることを認識し、ボーダレス化しつつある社会において、暮らしをより豊かにするために、互いの違いを認め合い、互いに理解を深めあいながら、協力していくことが必要です。

<引用文献等>
川村千鶴子 編著 (1998)、『多民族共生の街・新宿の底力』明石書店
川村千鶴子 編著 (2008)、『「移民国家日本」と多文化共生論』明石書店
川村千鶴子、近藤敦、中本博皓 編著 (2009)、『移民政策へのアプローチ』明石書店
入国管理局「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」(平成28年3月一部修正)

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養育者の抱える問題

言語、文化に関わる問題

養育者とは、両親又は親に替わって子どもを養育している者を言います。外国にルーツを持つ養育者にとって最も大きな問題は、日本語とその文化を習得することと、母国語とその文化を維持することです。それは養育者自身が葛藤している問題でもあり、特に、子どもに母国語やその文化を教えることにも苦労しています。また、前述のように、日本に住む外国人の数が急増する中で、保育園や幼稚園にも外国にルーツを持つ子どもたちの入園が増えています。養育者と保育園のスタッフが日本語でうまく意思疎通ができなかったり、文化・習慣が異なることによるトラブルが起こったりしています。

養育者が保育園・幼稚園で困っていることについて、『外国人の子どもの保育』(大場幸夫他)では次のように分析しています。

(1) 病気に関すること

子どもの病気に関することは、保育園・幼稚園に子どもを預けている日本の親でも困る問題でしょう。子どもが病気の時には、仕事を休んで子どもの世話をしたり、知り合いに預けて乗り切ることができる人もいますが、外国人の場合、言葉の問題や近所付き合いがないことが問題になることがあります。

保育園・幼稚園の保育者にとっても、普段は保育者と子どもが身振り手振りや片言の日本語で話せていても、子どもの具合が悪くなったときに、「どこが、どのように悪いのか」細かいところまで分からずに困ることがあります。自治体によっては、通訳者派遣制度を持っているところもありますが、まだまだ少ないといえるでしょう。どのようなときでも、安心して子どもを預けることができる仕組みづくりが重要です。

(2) 生活習慣の違いから起こること

養育者と子どもの生活様式や文化が、日本のものと違うこともあることを保育者は知っておかなければなりません。

例えば、食事のときに「箸」を使う文化、「スプーン・フォーク」を使う文化、「手」で食べる文化等、食べ方も様々です。宗教上の理由から、食べられない食材がある子どももいます。

宗教上の理由によるもの等、養育者や子どもにとって譲れない文化もありますが、日本の文化・習慣として受入れられるものもあるでしょう。そのためには、相手の生活習慣を知り、文化を理解・尊重するとともに、日本の生活習慣や文化についても知ってもらうなど、お互いが理解し合っていくことが必要です。

(3) 言葉、文字に関すること

子どもの年齢にもよりますが、子どもは言葉が分からなくても子ども同士で遊んだり、一緒に生活したりすることで、3〜4ヶ月くらいで言葉を覚えていくことが多いといわれます。しかし、言葉や文字が分からなくて困るのは多くの場合、養育者と保育者です。

保育者は、養育者向けの連絡帳や園からのお知らせを送るときに、どのようなことに心がけているでしょうか。外国人の保育者がいる園では多言語でお知らせを作成したり、日本語が少し分かる養育者に向けては、難しい言葉を使わずに「やさしい日本語」で情報を提供したり、漢字には必ずルビをつけて情報を提供したりする心がけが必要です。

また、保護者会や懇談会の際に、日本語があまり話せない養育者に対して、自治体等の通訳者派遣制度を利用して、日本人養育者と同様にきめ細かな情報を提供していくことも大事なことでしょう。

(4)  園への持ち物、準備に関すること

日本の保育園・幼稚園では、入園にあたって“園の規則”として様々な持ち物を用意しなければならないところもあります。まだ日本の生活に慣れていない養育者の場合、その持ち物がなぜ必要なのか、また持っていくべき提出期日が分からないこともあります。

慣れない外国で、ひとりで準備をするのは不安なことが多いですが、このようなときに、どのような準備が必要か、アドバイスをくれる人がいれば安心できます。園への持ち物については、持ち物の名前を聞いただけでは何を用意してよいかが分からない、という意見もあります。

(5)  宗教に関すること

食べ物に制限がある宗教については、多くの方が既にご存知のことでしょう。例えば、イスラム教では豚肉を食べませんが、給食で豚肉を使ったメニューがある日には、別のメニューを用意したり、養育者にお弁当を用意してもらう等の工夫が必要です。

また、女性が肌を見せるのを禁止している宗教の場合、保育者が男性(保父)であるときに子どものおむつ交換や着替え補助をすることが、不快な思いをさせてしまう可能性もあります。

外国にルーツを持つ子どもたちの宗教について学び、尊重していくことも重要です。

<引用文献リスト>
大場幸夫、民秋言、中田カヨ子、久富陽子(1998)、『外国人の子どもの保育−親たちの要望と保育者の対応の実態−』萌文書林
川村千鶴子 編著 (1998)、『多民族共生の街・新宿の底力』明石書店
川村千鶴子 編著 (2008)、『「移民国家日本」と多文化共生論』明石書店
川村千鶴子、近藤敦、中本博皓 編著 (2009)、『移民政策へのアプローチ』明石書店

養育者と保育者との関わり

子育てにおいて、養育者と保育者との関わりは重要な部分を占めています。

保育者とのコミュニケーションにおいて、ことばの壁があるために、養育者が疎外感を感じることがあるかもしれません。子どもに対して包括的に関与できる保育施設に対する期待は大きいといえるでしょう。

<引用文献>
川村千鶴子 編著 (1998)、『多民族共生の街・新宿の底力』明石書店
川村千鶴子 編著 (2008)、『「移民国家日本」と多文化共生論』明石書店
川村千鶴子、近藤敦、中本博皓 編著 (2009)、『移民政策へのアプローチ』明石書店

養育者同士の関わり

保育園等において外国にルーツを持つ養育者が、日本人の養育者と関わりを持つことは、重要であり、かつ、気苦労の多いものです。園の行事への参加や日本人養育者と関わる上で日本語のハンデや文化の違いからくる疎外感を感じることがよくあります。保育者がそのような立場や受け取り方の違いに配慮することが重要になります。

<引用文献>
川村千鶴子 編著 (1998)、『多民族共生の街・新宿の底力』明石書店
川村千鶴子 編著 (2008)、『「移民国家日本」と多文化共生論』明石書店
川村千鶴子、近藤敦、中本博皓 編著 (2009)、『移民政策へのアプローチ』明石書店

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園生活における子どもたちの状況

園によっては、保育者が養育者の母語を学ぶ努力をし、子どもに対しても母語で語りかけるよう工夫をしているところもあるようです。子どもが園生活に早く慣れ親しみ、他の子どもたちと遊べるようになるためにも、園における日本語教育・多文化教育が必要でしょう。

外国人児童への日本語教育

保育園や幼稚園に外国にルーツを持つ子どもたちの入園が増えるなか、多くの園の現場では、受け入れのガイドラインがなく、言語の違いによる子どもの成長への影響の不安といった課題が挙げられています。園内では、外国にルーツを持つ子どもたちは、比較的早期に適応したかに見えるために、保育者は園に慣れたらもう問題はない、と思いがちになります。通訳保育士の配置や、ゆっくりとした日本語で子どもと会話する等の工夫で、保育上の配慮をしているところもありますが、確立した日本語教育までは至っていないのが現状です。

日本人児童への多文化教育

外国にルーツを持つ子どもが在籍する園のなかには、その子どもたちのルーツの国の手遊びや歌、絵本などに親しむ機会を保育の中で取り入れ、相手の文化を尊重できる心を育めるような取組をしているところもあります。園における外国にルーツを持つ子どもに対して、保育者と周りの日本の子どもたちがどう接していくかを考えることが大切になってきます。

保育者への多文化教育

保育者と養育者とのやり取りで、小さな意思疎通から大切な書類のやり取り、緊急時の対応等抱える課題は多いようです。外国にルーツを持つ子どもたちを受け入れる園において、保育者に対する多文化理解の研修を行っているところは少ないのが現状です。保育園、幼稚園を所管する自治体と連携し、子どもたちがそれぞれの言葉や文化に触れ、違いを認め理解する機会を幼児の発達に合わせてできる体制づくりが望まれているのではないでしょうか。

<引用文献リスト>
社会福祉法人日本保育協会(2008)『保育の国際化に関する調査研究報告書』
財団法人アジア・太平洋人権情報センター(2004)『国際人権ひろば第54号』
多文化子育てネットワーク(2001)『多文化子育て調査報告書』
多文化共生センター・ひょうご(2001)『多文化保育園の実態およびニーズに関する調査』

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