保育園、幼稚園に入園する

国・地方自治体の対応状況を知る

保育園(保育所)の管轄は厚生労働省ですが、幼稚園は文部科学省の管轄になります。また、地方自治体においては一般的な在住外国人支援・多文化共生を扱う部署は国際課ですが、保育に関することは保健・福祉関連の部署になります。行政側は、保育の現場で外国にルーツを持つ子どもたちがどのように受け入れられているのか、その対応や課題を知り、部署を超えて施策の立案に取組んでいくことが必要です。

社会福祉法人日本保育協会「保育の国際化に関する調査研究報告書」(平成20年度)によると、各都道府県・政令指定都市・中核都市に対して調査をした結果、「外国人保育についてのガイドラインがある」と回答したのは、大阪市、東大阪市の2自治体でした。

また、外国人保育の対応状況について、保育上配慮し、あるいは福祉的、経済的に配慮している事柄については下記のような具体的回答がありました。

<外国人保育についての各県(市)の対応状況「保育上または福祉的、経済的に配慮していること」>
案内やチラシ、必要な書類をその外国人の母国語で書かれたものに訳し、作成
何らかの通訳の配置
研修を実施。保育上等の職員を加配
宗教上の禁止の除去食や代替食への配慮など食文化に何らかの工夫をしている
写真を使ったり連絡帳に工夫や丁寧に時間をとってコミュニケーションの努力をしている
漢字を書かない、ルビをうつ
保育の中で子どもたちが多文化に触れ合えるように工夫している
親同士が交流を持てるように工夫している
相談の場を個別に持つ
地方自治体の施策立案のヒント
  • ・ 外国にルーツを持つ子どもがどのくらい在籍しているのか把握する
  • ・ 保育の現場で、保育者がどのようなことに苦労しているか把握する
  • ・ 外国人養育者が気軽に相談できる体制をつくる
  • ・ 保育園・幼稚園に外国にルーツをもつ子どもが入園したときに、その子どもの母国の絵本を用意するなど、母文化に触れられる配慮をする
  • ・ 日本語の分からない養育者と保育者との面談の場に、通訳を派遣できるようにする

上記以外にも、様々な施策が考えられます。今後はさらに、入園児童の状況把握、家族に対する支援、各園での保育対応の把握などに取組み、各保育園・幼稚園が今まで独自に取組んできた経験や知見を共有し、行政の施策に反映することが求められるでしょう。

<引用文献等>
社会福祉法人日本保育協会「保育の国際化に関する調査研究報告書(平成20年度」」(平成21年3月)
http://www.nippo.or.jp/research/2008.html#h20_b
 大場幸夫、民秋言、中田カヨ子、久富陽子編
「外国人の子どもの保育−親たちの要望と保育者の対応の実態−」(萌文書林,1998)

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国の施策

厚生労働省「保育所保育指針」(平成20年3月)

昭和40年に保育所保育のガイドラインとして制定された保育所保育指針は、平成2年、12年の改定を経て、平成20年に3度目の改訂が行われました。本指針では、保育所での教育に関わるねらいや内容について触れられています。この中で、保育所の社会的責任として「子どもの人権の尊重」について触れられています。この「子どもの人権の尊重」については、「保育所保育指針解説書」には下記のように解説されています。

厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku04/pdf/hoiku04a.pdf
「保育所保育指針解説書」(第1章 総則 4.保育所の社会的責任)

・・・・・(中略)・・・・・・

(1)子どもの人権の尊重

(1)保育所は、子どもの人権に十分配慮するとともに、子ども一人一人の人格を尊重して保育を行わなければならない。

保育士等は、保育という営みが、子どもの人権を守るために、法的・制度的に裏付けられていることを認識し、「憲法」、「児童福祉法」、「児童憲章」、「児童の権利に関する条約」などにおける子どもの人権等について理解することが必要です。

また、子どもの発達や経験の個人差等にも留意し、国籍や文化の違いを認め合い、互いに尊重する心を育て、子どもの人権に配慮した保育となっているか、常に職員全体で確認することが必要です。体罰や言葉の暴力はもちろん、日常の保育の中で、子どもに身体的、精神的苦痛を与え、その人格を辱めることが決してないよう、子どもの人格を尊重して保育に当たらなければなりません。保育士等の言動は子どもに大きな影響を与えます。幼い子どもは、身近な保育士等の姿や言動を敏感に受け止めています。そのため、保育士等は常に、自らの人間性や専門性の向上に努めるとともに、豊かな感性と愛情を持って子どもと関わり、信頼関係を築いていかなければなりません。さらに、子どもが健やかに育つ環境を醸成し、子どもや子育てを大切にする文化を紡ぎ出していくことも、保育所の社会的責任といえるのではないでしょうか。

「保育所保育指針解説書」(平成21年4月6日)21〜22ページ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku04/pdf/hoiku04b.pdf

また、保育のねらい及び内容の中で「人間関係」について、「他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う」とあり、具体な内容の一つに「外国人など、自分とは異なる文化を持った人に親しみを持つ。」と明記されています。この部分について、保育所保育指針の解説書では、下記のとおり解説されています。

「保育所保育指針解説書」(第3章 保育の内容 1.保育のねらい及び内容)

イ 人間関係

・・・(中略)・・・・

外国人など、自分とは異なる文化を持った人に親しみを持つ。

異なる文化を持つ人々の存在は、近年、ますます身近になってきています。保育所においても、多くの外国籍の子どもや様々な文化を持つ子どもたちが、一緒に生活しています。保育士等は、一人一人の子どもの状態や家庭の状況などに十分配慮するとともに、それぞれの文化を尊重しながら適切に援助することが求められます。また、子どもが一人一人の違いを認めながら、共に過ごすことを楽しめるようにしていきます。

保育所の生活の中で、様々な国の遊びや歌などを取り入れたり、地球儀や世界地図を置いたり、簡単な外国語の言葉を紹介していくことも、子どもが様々な文化に親しむ上で大切なことです。異なる文化を持つ人との関わりを深めていくことは子どもだけでなく保育士等にとっても重要であり、多文化共生の保育を子どもや保護者と共に実践していきたいものです。

(厚生労働省「保育所保育指針解説書」より一部抜粋)

「保育所保育指針解説書」(平成21年4月6日)73ページ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku04/pdf/hoiku04b.pdf

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地方自治体の施策

東京都新宿区における多文化保育の事例

新宿区内の保育園・幼稚園には外国にルーツを持つ子どもたちが多く通っています。多言語による入園案内を多言語で作成し対応しています。

<引用文献等>
まち居住研究会「大久保地区の多文化教育 子育てによいまち・大久保」(まち居住通信No.4 2000年4月)
藤原孝章編『外国人労働者問題と多文化教育』明石書店,1995年

愛知県「プレスクール実施マニュアル作成・普及」

愛知県では、公立小学校入学直前の日本語が理解できない外国人の子どもが、入学した公立小学校で戸惑うことなく、学校生活に早期に適応できることを目指し、簡単な日本語や学校の習慣などを教えるプレスクール事業を2006(平成18)年度よりモデル的に実施してきました。2009(平成21)年には、市町村においてプレスクール等を実施する際の参考として利用できるよう、また外国人の子どもの日本語指導等にあたる方々の手引書としてもりようできるよう、「プレスクール実施マニュアル」を作成しました。

愛知県HP
http://www.pref.aichi.jp/0000028953.html

愛知県西尾市「西尾市多文化子育て支援事業」

西尾市には自動車関連産業の企業が集積しており、多くの外国人住民が暮らしています。平成20年度は保育所・幼稚園のうち外国人児童の割合は約3%を占めています。このような背景の中、多文化な子育て環境を有する外国人育児家庭が日本の地域社会で、安心して子育て・子育ちができるための自立的支/援を目的として、西尾市多文化子育て支援事業を平成20年度から開始しています。

外国人児童の在籍率の高い民間保育所に、専任スタッフである外国人児童コーディネーターを配置し、関係機関と連携して、就学前外国人児童がいる家庭が日本の子育て環境に円滑に適応できるような取組を実施しています。

西尾市HP
http://www.city.nishio.aichi.jp/index.cfm/6,3103,65,619,html
「多文化共生のとびら 西尾市多文化子育て支援事業〜奔走する外国人児童コーディネーター〜」
自治体国際化フォーラム第240号(2009年10月)
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_240/06_culture.pdf

本事業は、「市町村の活性化新規施策100事例(平成21年度地域政策の動向)」の調査報告書で、教育・文化・スポーツ関連施策分野の特徴的、先進的な事例として紹介されています。

総務省HP
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/19203.html

大阪府「帰国・渡日の子どもと親に対する就学前サポート事業」

大阪府では、帰国・渡日の子どもたちが増加している状況の中で、日本での学校生活に不安のある保護者等に対し、日本の学校制度や学校生活について説明した「小学校入学準備ガイドブック」を8言語で作成するとともに、「帰国・渡日の子どものための小学校入学準備ガイダンス」を実施しています。

大阪府HP
http://www.pref.osaka.lg.jp/jinken/measure/31jisshi1_2_3.html

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国際交流協会やNGOの支援

公益財団法人岩手県国際交流協会「在住外国人子育てサポート事業」

在住外国人の子育てに関する相談に対応するため、多言語子育てサポートの配置、在住外国人が安心して子育てができる環境づくりのため、関係機関によるネットワークの構築、子育てに関する情報提供等を実施しています。

岩手県国際交流協会「多言語子育てヘルプデスク設置事業」

本事業は、自治体国際化協会が、地域間の国際交流・多文化共生事業で特に重要性・必要性の高い事業に対し助成する「地域国際化施策支援特別対策事業」の平成21年度助成対象事業です。「地域国際化施策支援特別対策事業」については下記HPをご覧ください。(「地域国際化施策支援特別対策事業」は平成24年度で終了しています。)

十和田めぐみ保育園、外国出身ママさん会の取組み

十和田めぐみ保育園、「特集 多文化共生社会の新しいガバナンス『市民団体の取組みと今後の展望 異文化出身者の子育てを支援して』」自治体国際化フォーラム第179号(2004年7月)
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_179/04_sp.pdf
十和田めぐみ保育園「多文化共生のとびら 保育園を通じての外国出身ママさん支援〜子育て支援センター事業の一環として〜」自治体国際化フォーラム第210号(2007年4月号)
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_210/11_culture.pdf

マジカルチャイルドクラブ

国際結婚など、外国につながりがある家族のための、多文化子育てを支えあう自助グループです。「横浜市港南区まちづくり地域協働事業」の補助金を受け、多文化共生のための子育て支援事業として、未就園児子育て支援、就学児の子育て支援、外国人も含む不登校支援等に取組んできました。

http://www.kodomofund.com/search/search.cgi?equal1=44

財団法人神奈川県国際交流協会(現公益財団法人かながわ国際交流財団)HP
Hello Friends『特集 多文化子育て「多文化子育てを支える場」』
機関誌Hello Friends 第227号(2002年7月)にてマジカルチクラブャイルドの取組みが紹介されています。
http://www.kifjp.org/wp/wp-content/uploads/2014/02/no227.pdf

公益財団法人豊田市国際交流協会 日本語サロン 「多言語による子育て情報誌の発行」

2005年に、日本語サロンのボランティアが豊田市で子育てをする外国人のために5言語(日本語、英語、ポルトガル語、中国語、韓国・朝鮮語)で子育て情報誌を発行しました。

豊田市国際交流協会HP
http://www.geocities.jp/nihongosalon/press.htm

NPO法人いこま国際交流協会「ハロハロ☆デティクラブ」「ハロハロ☆ミーティング」

「ハロハロ☆デティクラブ」事業では、豊かな感性を持つ子どもたちが、人種、民族、言語、宗教、文化などの壁を乗り越え、互いの違いを認め尊重し合い、自尊感情を育む教育活動を行っています。多様な母語・母文化・背景を持つ子ども同士の出会いと交流の場づくりや外国人保護者が子どもと一緒に参加し、何でも話し合える場つくりを行っています。

また、「ハロハロ☆ミーティング」は、日本での子育て、学校や幼稚園のこと等を外国人保護者や小学校・幼稚園の先生たちと自由に話をすることで、外国人保護者の子育てを応援する事業です。通訳が必要な保護者には母国語が通じるスタッフが手伝いをしています。

いこま国際交流協会HP
http://www.ikoryu.net/

公益財団法人滋賀県国際協会SIA多言語子育て情報

滋賀県国際協会では「SIA多言語子育て情報」を作成し、妊娠・出産・育児などに関する情報を6ヶ国語で紹介することで、子育てパパ・ママを応援しています。

滋賀県国際協会HP
http://www.s-i-a.or.jp/child/

また、滋賀県国際協会では、滋賀医科大学・畑下教授との協働で、在日ブラジル人をサポートする日本人の保健医療従事者向けのマニュアル『日系ブラジル人母子サポートマニュアル』を発行しました。このマニュアルには、在日ブラジル人女性の妊娠・出産・育児期に医療従事者が留意点を確認しアドバイスするためのチェックシートやブラジルの栄養指導、離乳食についての内容が掲載されています。

滋賀県国際協会 国際交流協力情報誌『Lake レイク』79号(2010.Spring)にて紹介されています。
滋賀県国際協会
「外国籍住民サポート事業2009 〜母子保健をはじめとする情報提供の充実と教育・就職支援を重点に〜」

『日系ブラジル人母子サポートマニュアル』は「外国籍住民サポート事業2009」の中で作成されたものです。本事業は、自治体国際化協会が、地域間の国際交流・多文化共生事業で特に重要性・必要性の高い事業に対し助成する「地域国際化施策支援特別対策事業」の平成21年度助成対象事業です。「地域国際化施策支援特別対策事業」については下記HPをご覧ください。(「地域国際化施策支援特別対策事業」は平成24年度で終了しています。)

公益財団法人とよなか国際交流協会「多文化子育て支援」

豊中市では、地域に暮らす外国人親子のために親子参加型日本語教室「しょうない・おやこでにほんご」「おかまち・おやこでにほんご」や、外国にルーツをもつ就学前の子どもたちの活動「多文化子ども保育にこにこ」を実施しています。これらの活動では、乳幼児を抱え、家にこもりがちな外国人女性が、子どもを連れて安心して参加できる情報交換の場、様々な悩みを話したり相談したりすることが出来る場、親も子も友だちをつくってリフレッシュできる場づくりを行っています。

公益財団法人とよなか国際交流協会HP
http://www.a-atoms.info/action/

公益財団法人広島平和文化センター「ボランティア通訳者派遣」

広島平和文化センターでは、保育園、幼稚園、学校などの公共機関窓口にボランティア通訳者を派遣し、日本語での会話が困難な外国人市民への支援を拡充しています。

公益財団法人広島平和文化センターHP
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/ircd/

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多文化保育の実践例

多文化保育を実施している保育園もあります。

(私立)桜本保育園(神奈川県川崎市)

桜本保育園の第一歩は1969年に在日大韓キリスト教会が母体となり、無認可保育園を開設したことから始まります。1974年には、社会福祉法人青丘社をおこし、認可保育園となりました。さまざまなルーツを持つ子どもたちが、お互いを受けとめ合い、助け合いながら「ともに生きる」保育を実施しています。

川崎市HP 川崎区の認可保育所一覧「桜本保育園」
http://www.city.kawasaki.jp/kurashi/category/17-2-10-1-1-0-0-0-0-0.html
社会福祉法人青丘社「つぶやきブログ」
http://www.seikyu-sha.com/sqsblog/?cat=3
財団法人神奈川県国際交流協会(現かながわ国際交流財団)HP
「Hello Friends 『特集 多文化子育て「多文化子育てを支える場」』
機関誌Hello Friends 第227号(2002年7月)にて桜本保育園の取組が紹介されています。
http://www.kifjp.org/wp/wp-content/uploads/2014/02/no227.pdf
映画「ヘンニムの輝き」(日本/ドキュメンタリー/76分/2002年/朴裕煥監督)
桜本保育園のヘンニム組の1年間を追ったドキュメンタリー映画です。

希望の家カトリック保育園(京都市)

園では、「多文化共生保育:国際社会の中で、異文化理解とその尊重こそが人間の尊厳を認めるものである。多様な文化に触れ、体験を通して、共に生きる喜びを体得し人権を大切にする心を育んでいく」ことを目標の一つとしています。多文化共生保育の一環として、外国人留学生と一緒に遊んだり、歌ったりと異文化に触れる取組をしています。

希望の家カトリック保育園HP
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/k-c-ho/tabunka/tabunnka.html

公益財団法人仙台観光国際協会「出産・子育てガイド」

仙台市に居住する外国籍市民の出産・子育てを支援するために、妊娠・出産・育児に関する情報を4ヶ国語で提供しています。

仙台観光国際協会HP
http://www.sira.or.jp/japanese/child/index.html

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