日本で学ぶ外国人

留学生

文部科学省ほか関係者庁は、「2020年を目途に留学生受入れ30万人を目指す」とした『留学生30万人計画』を2008年7月に策定し、積極的に留学生を誘致しています。留学生たちは、大学だけではなく、彼らが生活する地域社会そのものに活力にもなりうる存在であるとの捉え方が広まりつつあります。
日本での生活を通じて、それぞれの母国と日本との友好関係を築き上げるための、大切な草の根レベルの国際交流ともなりうるでしょう。そして、日本での充実した経験や、人との交流を経たことで、日本に残り、日本に根を下ろすと決断する人もいます。そのためには、留学生が地域社会と交流し、充実した生活を送るための環境整備や活躍の場の提供が大切です。ここでは、留学生の現状や彼らに対する生活・就職支援活動等について紹介します。

留学生を取り巻く状況を知る

2010年末現在で、日本では14万人以上の留学生が学んでいます。この数は、年々増加傾向にあり、特に中国、韓国などアジアの近隣諸国からの留学生が多いのが特徴的です。
日本において留学生の受入に関する契機の一つは、1983年に策定された「留学生受け入れ10万人計画」といえます。当時1万人程度しかいなかった留学生を、当時のイギリス・ドイツ(5万人台)やフランス(10万人台)並みの水準まで届かせることを目標と掲げ、国を挙げた取り組みがなされました。
その数が目標に達したのは2003年のことですが、それまでには受入者数が伸び悩み、減少を記録する年などもあり、日本における留学生施策に関する多くの問題も指摘されました。それらをみてみると、①生活コストの高さ、宿舎の確保の困難さ、②留学先としての情報不足、③教育体制の不備、④異文化受容意識の低さなどが例示されています。
また、留学生は、しばしば入管行政との関係で注目されることもありました。留学生10万人計画の最中であった1988年には、日本の実体のない日本語学校による入学許可証の発行や、定員をはるかに越える入学許可証の発行、あるいは日本語学校の就労の斡旋業務といった問題が生じ、また実在しない学校の卒業証明書や偽造卒業証書を用いた日本への就学希望者が殺到するなどの事態が起こりました。また、90年代前半には、「就学」の資格で入国し、資格を有さずに「就労」に従事している外国人が増加するなどの問題がおこり、入管当局では、こうした不適正な受入を阻止するべく、一時、在留資格審査の基準の厳格化をすることにもなりました。

現在の日本では、留学生を歓迎し、留学生施策を「国家戦略」として捉えなおしたうえで、さらなる受入拡大に向けた規制緩和などを進めています。2010年7月に改正・施行された、入管法における「留学」と「就学」の在留資格の一本化もそのひとつです。
これも、「留学生30万人計画」の実現に向けた措置として、留学生の負担を軽減することを目的としており、従来の在留資格では、大学生らが「留学」、高校生らは「就学」と大別していましたが、この一本化により高校から大学に進学する際の在留資格の切り替えが不要となりました。 また、現在の「留学」による在留期間は最長2年3ヶ月であることから、大学に4年通う間に更新の手続きが必要になりますが、これを更新せずに済むよう4年3ヶ月へ延長する検討もされています。
このほか、学校を卒業後、就職活動期間として認めている最長180日の在留期間を1年程度に延長したり、入国審査期間も大幅な短縮に向けた検討など、より留学生を受入れやすい環境の整備が進められています。

「留学生30万人計画」骨子の策定について
文部科学省 HP
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/07/08080109.htm
「外国人留学生在籍状況調査結果」
独立行政法人 日本学生支援機構 HP
http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data10.html
「新たな在留管理制度」
法務省 HP
http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact/newimmiact.html

留学生と地域社会

日本で学ぶ留学生の約半数が、日本を留学先に選んだ理由として「日本社会への関心」をあげています。彼らの多くは、日本での生活体験や日本人との交流を通じて、日本をより理解することに期待をしています。ところが、多くの留学生が学内で日本人の学生と交流できないことに悩んでいるという実態があります。
同じ学内でともに学ぶ仲間ですら、上手に交流ができないのであれば、学校を離れた生活の場である地域社会で、留学生が日本人との関係を構築することは、極めて困難であることが推測されます。

留学生も地域の生活者として、他の外国人と同様の支援が必要だと思われますが、留学生ならではのニーズもあります。本国の家族から離れて生活することに加えて、母語ではない言葉を使って学習することは一層大変です。
日本では、先に述べた留学生10万人計画によって留学生の受入れ人数が増えるに従い、大学では学内に留学生担当部署や1990年以降は、国立大学にも「留学生センター」の設置が進み、これらにより留学生固有の課題に対して組織的にバックアップをする体制が整備されてきました。

こうした状況のなか、1996年の中央教育審議会第一次答申は、「国際教育」を推進するために、留学生を学外の人材や組織のもつ多種多様な教育的資産と捉え、その活用の必要性について言及しました。これを受けた翌年の留学生政策懇談会第一次答申には、大学等教育機関に留学生と日本人学生、そしてその地域との交流を促すよう求める文言が盛り込まれ、これは、大学と地域との連携による留学生支援と交流活動に対する公的な奨励を意味するものでした。

また、大学と地域との関わり方については、2000年以降、大学改革の一環として導入が始まった、「サービス・ラーニング」の考え方が、大きな転換のきっかけになりうるとも考えられています。サービス・ラーニングは、地域のニーズの解決や地域貢献活動と教育を結びつける教育方法で、地域社会を生きた学びの場としてとらえる考え方です。そして、このプロセスに関連して、留学生の地域交流への教育的関与の必要性についても、大学側の意識を変化させる可能性があると考えられています。

「留学生30万人計画」を掲げ、今後も一層の受入れを進めるためには、留学生の住居の確保一つをとっても地域社会の協力なくしては進展はありません。政府や自治体の施策と大学や地域社会がうまく連携を進めることが、留学生が求める日本社会への関心を満たすことにつながり、そして同時に留学生との関わりの中から、地域社会における多文化共生へのきっかけにもなりうるものと考えられます。

アメリカの事例

世界の留学生の3分の1を受け入れていると言われる留学生大国・アメリカでは、留学生を受け入れる第一の理由として「自国の学生の国際理解を深める」ことをあげています。つまり、世界の相互依存が深まる中で、アメリカ国民が他国を理解し尊重する態度を培うことことが、大学教育の重要な課題の一つであり、そのために留学生を活用すべきだと考えられています。
アメリカでは、こうした教育活動としての国際交流を促進する目的で設立されたNAFSA(国際教育者協会)という非営利団体があり、NAFSAでは、地域交流部会を設置し、地域でのボランティア活動や交流行事への留学生の参加などを促進し、留学生と地域住民の双方がより多くのことを学び合えるプログラムづくりに取り組んでいます。また、大学には専門職としての留学生アドバイザーがおり、地域交流プログラムを通じて、地域の人々への異文化理解の促進などにあたっています。

<引用文献等>
川村千鶴子、近藤敦、中本博皓 編著 (2009)、『移民政策へのアプローチ』明石書店

留学生と就職

高度人材の活用

従来、日本で学んだ留学生は、卒業・修了後は母国へ帰国するものという認識が一般的でしたが、最近では、日本で学んだ留学生のうちおよそ7割が日本での就職を希望しているという調査結果もあります。
2000年以降、留学生の就職件数は全体として増加傾向にあり、平成21年は前年比で減少に転じたものの、日本の企業等への就職を目的として在留資格変更許可申請を行った数は10,230人、うち許可数は9,584人となっています。

こうした変化は、日本社会の抱える少子高齢化による人口減少問題への対応との関連性がみられ、労働力人口の減少の埋め合わせとしてではなく、“多様性のダイナミズム”を生み出す高度人材として、留学生の活用を目指すという経済界の方針(日本経団連「外国人受け入れ問題に関する提言」2004年)にも裏付けられています。

2007年には、「アジア人材資金構想」による事業が4年間のプロジェクトでスタートしました。この事業は、経済産業省と文部科学省が協働し、さらに20を超える国内の大学等とアジア各国の主要大学や産業界とも連携したプロジェクトです。日本企業のアジアを中心とした海外事業展開を人材面で支援するために、日本の企業に就職する意思を持ち、能力と意欲のあるアジアからの留学生に対して、専門教育から就職支援までの一連の事業を通じて、産業界で活躍しうる専門人材の育成を目的としており、留学生を中心とした高度外国人材の育成、確保に向けた取り組みが積極的に展開されています。

<引用文献等>
川村千鶴子、近藤敦、中本博皓 編著 (2009)、『移民政策へのアプローチ』明石書店
アジア人材資金構想HP
http://www.ajinzai-sc.jp/index.html

就職現場における課題

留学生を採用する企業の目的は、高度人材の確保をはじめ、グローバル展開のための人材確保、企業内のダイバーシティー指向などと言われています。一方、企業が求める留学生の資質として重視されるものには、技術力や業務に必要な専門知識とともに、「日本語力」、「協調性や日本文化への柔軟性」などが多いと言われています。このように、留学生にグローバルな感性や多様性を期待する一方で、日本語力をはじめ、日本人の考え方の理解や、日本人社員との協調性も求められており、目的と求める人材の素質との間に若干の相違が見られることがわかります。

このように、留学生に対する認識は変化をしてきていますが、現状では、高度な外国人の人材を受け入れる企業の数自体も少なく、さらには、外国人ならではの発想力や高度な専門性も有効に発揮しきれていないなど、高度な外国人の人材を活用する仕組みが十分に整備されているとは言えないのが現状です。

ダイバーシティー構想を掲げる大手のグローバル企業であっても、数人の外国人社員を採用しただけでは、結局日本人の中に“同化”していくという現象が大半で、多様性を発揮できるような環境ではないといいます。さらにいえば、留学生の就職先の多くは従業員数50人未満の中小企業と言われており、外国人社員の採用経験が少ない場合は、さまざまな課題を抱えていることが推測されます。

留学生のもつ多様性を活かすためには、受け入れた企業にも、従来の制度や考え方を見直す柔軟性が求められます。日本人の働き方も大きく変化をしてきていますが、留学生の中にも、自身のキャリア形成の一部として日本の企業で働くことを考えている場合も少なくなく、2〜3年の経験を積むことを念頭において働く人もいます。
これまで日本が培ってきた優れた企業の風土に加えて、留学生がもたらす多様性のダイナミズムを引き出すためには、雇用制度や評価制度、人材の養成制度なども含めて、企業にとっても社員にとっても有益な仕組みづくりが必要になるといえるでしょう。

厚生労働省では、企業における高度外国人材の積極的な活用と具体的な環境の整備のために、有識者による検討会、企業・高度外国人材本人へのアンケート調査、ヒアリング調査等を通じて、企業向けの実践マニュアルを作成しています。

「高度外国人材活用のための実践マニュアル」
厚生労働省 HP
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/oshirase/110224.html

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