外国人と医療

医療制度への理解を深める

医療保険制度については、通常の医療サービスを利用する際には大きな問題は生じないにしても、その詳細については、日本人ですら十分に理解しきれていない場合もあります。ましてや、在住外国人にとってはなおさらです。

そのため外国人に日本の医療制度を理解してもらうことが第一歩になりますが、現状では多くの外国人が医療保険に加入していない状況にあります。

医療制度をわかりやすく在住外国人に説明することは、彼らの健康につながるだけではなく、誰もが安心して健康的に暮らせる地域福祉の推進にもつながります。ここでは、外国人と日本の医療制度に関わる現状と課題、課題の改善に向けた取組みについて紹介します。

日本の医療制度の概要

健康保険と厚生年金保険を合わせて社会保険とよびます。常時5人以上の従業員を使用する一定の業種の事業所が適用事業所とされ、また、法人の場合は、1人でも常勤者がいれば適用事業所となり、加入が義務付けられています。以下に、健康保険と厚生年金保険の制度について、外国人の関わりの深い事項について紹介します。

(1) 健康保険制度

原則として、この適用事業者で常用雇用される者は、国籍のいかんを問わず健康保険が適用され、これに加入する必要があります。また、2012年に住民基本台帳法が施行され在留管理制度が始まり、常用雇用関係にない外国人についても、住民登録をおこなった3か月を超えて日本に滞在することが見込まれる者は、国民健康保険の適用になりました。

留学生・就学生・研修生については、就労に関しては資格外許可を取得しアルバイトの携帯となることから、常用使用関係が認められず、労働者とは認められていません。したがって、これらの人は国民健康保険に加入することになります。

(2) 厚生年金保険

厚生年金保険については、適用事業所に常用雇用される限り厚生年金保険が適用になり、70歳未満の方は基本的に全員これに加入する必要があります。また、常用雇用関係にない外国人についても、2016年10月より労働時間や勤務期間等の条件を満たした者は厚生年金の加入対象となりました。厚生年金の加入対象外で、住民登録を行った外国籍の方は国民年金保険の適用になります。

(3) 脱退一時金制度

外国人の中には、厚生年金保険加入を希望しないケースがあります。帰国することになればそれまで払った保険料が掛け捨てになると考えるからです。

こうしたことを踏まえて、1995年4月から脱退一時金の制度が設けられました。この制度では、外国人で年金保険料を6月以上支払っていた者は、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に日本年金機構本部に請求することにより、最高3年分を限度として、平均標準報酬額に支給率を乗じて算出された脱退一時金が還付されます。国民年金は、保険料納付期間に応じて脱退一時金が還付されます。

■脱退一時金支給の要件(次の条件にいずれにも該当する者)

  1. 日本国籍を有していないこと
  2. 厚生年金又は国民年金の保険料を6カ月以上納めていたこと
  3. 日本に住所を有していないこと
  4. 年金(障害手当金を含む。)の支給を受ける権利を有したことがないこと
  5. 日本国内に住所を有さなくなった日から2年以内に請求すること
(4) 年金二重加入防止のための社会保障協定

海外赴任者等は、多くの場合自国の年金制度の他に赴任国の年金制度にも加入することになります。しかし、日本の場合、厚生年金の被保険者期間は最低25年であるため、この期間日本において年金に加入しないと年金は受けとることができないので、保険料が掛け捨てになるケースがほとんどです。この不合理な二重加入を防止すべく、国家間の条約で年金の加入が免除されている場合があり、社会保障協定といいます。2016年10月現在、日本は、ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ合衆国、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インドの16国とこの協定が発効しており、イタリア、ルクセンブルク、フィリピンの3国と署名済未発行となっています。

<引用文献等>
日本年金機構HP
http://www.nenkin.go.jp/
厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/

在住外国人が、平等に医療サービスを受けるためには、医療に関する分かりやすい情報提供が求められています。自治体国際化協会の「多言語生活情報」では、外国人向けの日本の医療制度の情報提供として、「医療機関」,「救急」,「薬局」,「公的医療保険」などについて紹介しています。

自治体国際化協会「多言語生活情報:医療」
自治体国際化協会 HP
http://www.clair.or.jp/tagengorev/ja/f/index.html

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医療保険への加入を促進するために

日本では、病気やケガをしたときに、その経済的な負担を軽減し、安心して治療が受けられるように、民間の生命保険や医療保険に加入していても、必ずすべての人がいずれかの公的医療保険に加入することになっています。これを国民皆保険制度といい、国籍を問わず、日本に在住している全ての人に対しての義務となっています。

多くの在住外国人は、進んで医療保険に加入しています。しかし、一部の在住外国人に無加入者が存在していることも事実であり、これが課題となっています。保険に加入しない原因としては、日本の制度が分からないことによるもの、雇用者側が加入手続きを怠っている場合、日本人のみのための制度だと勘違いしている場合、不法就労のため加入ができないなど様々な原因が存在します。

医療保険に加入しない理由として、保険料を負担することについての抵抗から手続をしない場合があります。これは、日本の医療現場の実態が、在住外国人にとって使いやすい医療制度でない限り、事実上利用できない制度のために、なぜ費用を負担してまで保険に加入する必要があるのかについて、理解を得にくいことに原因があると考えられます。

また、医療保険の加入手続きは、厚生年金保険の被保険者資格取得手続きと一括して行われます。しかし、将来帰国することを予定している在住外国人にとっては、厚生年金に加入したがらないケースもあり、厚生年金に加入しなければ、必然的に、健康保険にも入れなくなります。

こうした状況が生まれるのは、雇用主および外国人労働者の双方に、医療保険未加入へのインセンティブが働いているためと考えられます。つまり、雇用主は、健康保険料の半額負担を回避して支払い賃金の低下を抑えることにより、時給を高くすることができ、一方、外国人労働者も、健康な時の保険料負担に抵抗感を抱いていることが考えられます。 従って、外国人への保険加入の呼びかけをするのと同時に、雇用主へ向けた啓発や呼びかけを進めていくことも重要と言えるでしょう。

<引用文献等>
堤 健造 『外国人労働者とその家族への医療支援 ―愛知県豊田市の事例を中心に―』

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