藤井美香さん コラム

多言語相談窓口が、多文化共生のためにできること

藤井 美香(公益財団法人横浜市国際交流協会)

横浜市国際交流協会(YOKE(ヨーク))において、多言語による相談窓口を担当している立場から、窓口に寄せられる相談のこと、また、多文化共生に相談窓口が貢献できることについて書きたいと思います。

YOKE情報・相談コーナーの相談状況

横浜市の外国人住民数は、約150か国地域78,062人(2014年10月末)、人口の約2%です。多言語による相談窓口「YOKE情報・相談コーナー」では、英語・中国語・スペイン語・日本語の4言語で、外国人からの相談や国際交流などに関する様々な問い合わせに対応しています。2013年度はのべ5,249件の相談がありました(相談者数のべ4,088人)。うち約88%が外国人を当事者としています。

外国人の滞日期間の長期化、定住化によって、相談がより生活に密着し複雑化していると言われますが、日々の相談からそのことを実感します。相談内容は多岐にわたり、教育(日本語がわからないまま来日した子どもの高校受験など)、DV(夫の暴力に悩み友人宅に身を寄せる女性など)、児童虐待(子どもに手をあげてしまう親など)、社会保険(国民健康保険や国民年金の支払いなど)、医療(外国語の通じる病院探しなど)、福祉(要介護となった配偶者など)と、本当に様々です。相談窓口では、相談者の母語(または話しやすい言語)で話を聞くことで安心感を持ってもらいつつ、気持ちや問題点の把握・整理を相談者とともに行います。

相談における連携の必要性と言葉の支援

先にあげた事例の多くが、多言語相談窓口単独で解決できるものではなく、外部との連携を必要とします。文化的な背景にも配慮し、相談員の思いや考えを押し付けないようにしながら、必要な資源や機関(区役所、学校、NPOなど支援団体、当事者グループなど)につなげていきます。また、専門家の視点も得られるよう、専門相談(在留、法律、教育)の機会を設けています。

相談を受けるうえで期待される相談員の知識・役割は、多岐にわたります。異文化での生活の理解、相談に係る各種制度・地域資源の把握、相談者の気持ちの受け止め、そして、それらすべてを支えるのが、言葉の支援、つまり、日本語と外国語の「橋わたし」です。

言葉や日本の社会制度が外国人にとって壁であり、殊に言葉が壁であることは、通訳派遣の多さ(市民通訳ボランティア派遣数1,576件・2013年度)からも、また、「平成25(2013)年度横浜市外国人意識調査(横浜市政策局)」での「横浜の生活で、困っていることや心配なこと」の上位5位までに「日本語の不自由さ」「病院・診療所に外国語のできる人がいない」「税金」「外国語の通じる病院・診療所の探し方」が入っていることからもわかります。

多言語相談窓口が、多文化共生のためにできること

いまや外国人と接する人は、多言語相談窓口や国際交流グループ、日本語教室など、国際交流や多文化共生をフィールドとする一部の人だけではなく、生活のあらゆる場面で自然と出会いや関わりがある可能性があります。子育て支援拠点や保育園の方などに話を聞くと、国籍にとらわれず接しているものの、「言葉が通じない」、「説明をしたくても多言語での説明資料がない」、「コミュニケーションが図れない」、など外国人と接するうえで特別な困難を感じることがあり、現場で関わる人たちと力を合わせながら試行錯誤して対応されているようです。

同様に、区役所など公的機関から「言葉のわからない外国人が来ている」「何を言っているのか聞いてほしい」というような、言葉の支援への要請がままあり、電話を介して情報を伝達したり、通訳を行ったりするほか、文化背景や習慣の違い、制度理解の困難さなどについて補足することもあります。行政・地域情報の多言語化は確かに進んでいますが、情報の所在や入手方法がわからないことも多く、多言語相談窓口がこれらの情報を伝えることの必要性を感じています。

「市内に住む人々が、国籍や民族などの違いを超え、互いの文化的差異を認め合い、地域社会の構成員としてともに生きていくような地域づくり」(「ヨコハマ国際まちづくり指針」(横浜市国際政策室))のためには、地域に多様な人々が住み、それらの人々が日常生活で接点をもち、個人としてやりとりを交わすことが何より大切です。そのなかで困りごとや聞きたいことがあれば、「多言語相談窓口にまず聞いてみよう」と気軽に行動してもらえるよう、多言語相談窓口は、問題解決に向けたコーディネーション役として、外国人のみならず、地域に暮らす人々にとって役に立つ機関として機能できればと思います。


2013年度YOKE情報・相談コーナー相談内容(上位10分類)


相談対応風景

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