岩本郁子さん コラム

災害時の外国人支援〜「平成27年9月関東東北豪雨」における外国人住民支援

岩本郁子(公益財団法人茨城県国際交流協会 事務局長)

1、鬼怒川の堤防決壊と常総市について

平成27年9月10日(木)、午後0時50分ごろ、台風の影響による大雨で茨城県を流れる鬼怒川の堤防が常総市で決壊し、翌11日にかけて広い範囲にわたる地域が浸水水没する被害がでました。

鬼怒川一帯の常総市周辺は、ブラジル人を中心とする外国人居住者の多い地域で、平常時から、ブラジル人学校等外国人子弟の就学問題、リーマンショック後の就労支援など、外国人集住地域としての支援策や課題が議論される地域でもありました。

平成23年3月の東日本大震災でも、茨城県は震度6強の揺れを観測し、建物の倒壊や津波、液状化などによる被害を受けた被災県であります。その際、「災害多言語支援センター」を立ち上げ、県内に居住する外国人に8言語での情報を幅広く提供するという経験していますが、今回の災害は、外国人集住地域を直撃した形となり、県の国際交流協会としてどのような役割を果たしていけるか試行錯誤しながらの支援活動となりました。

【常総市について】

茨城県には約52,000人の外国人居住者がいますが、特に常総市はブラジル人等外国人居住者が集住する地域です。常総市の人口は約65,110人に対し,6,2%にあたる外国人4,263人が住民として生活しています。

常総市国籍別在留外国人数 (平成26年12月末現在)
1)ブラジル 2,041
2)フィリピン 934
3)中国 287
4)ペル− 245
5)ベトナム 73
6)韓国・朝鮮 71
7)その他 612

今回の水害では、常総市役所本庁舎が翌11日午前0時すぎ、1階部分が水没し孤立する事態になりました。市災害対策本部が置かれた“司令塔”が水に囲まれ、電源設備が浸水し使用不能になるなど、一時機能不全に陥りました。

2、当協会の支援活動

@避難所・ブラジル人学校など外国人の状況調査

こうした状況の下、当協会では、県の災害対策本部から避難所に外国人住民が多数避難しているとの情報を受けて、12日から3日間にわたり避難所やブラジル人学校を訪問し、直接ブラジル人等から聞き取り調査を行ないました。その結果、衣料品、食料品は足りていること、日本人の支援や親切に大変感謝している旨の話を聞くことができた一方、日本語の細かい情報が十分に理解できずにいる状況も把握し、当協会としては言語支援中心に活動の焦点が絞られてきました。

A相談の受け付け及び多言語での情報の提供

まず、当協会の外国人相談センタ−は通常日替わりで9言語の相談を受けていますが、ポルトガル語の相談を毎日受け付けることとしました。

また、多言語による災害関連の情報提供を行なうこととしました。情報提供にあたっては、当協会の災害時語学サポーターや、関東地域国際化協会連絡協議会「災害時における外国人支援ネットワーク」の協力を得て、避難所への貼紙、HP、FB、携帯メール配信などのツールにより、ライフラインの状況、感染症への注意、災害ゴミ集積場関連他34項目172の翻訳文を6週間にわたり配信しました。

B相談会等の開催及び通訳支援

また、県土木部住宅課が開催した「住宅相談会」での通訳とそれに伴う外国人への住宅提供に関わる通訳対応や、ダイバーシティ研究所等の県外の組織と協働により「外国人のためのよろず相談会」の開催、そしてカトリック教会の弁護士相談会開催協力と通訳支援など、様々な形で外国人支援活動を行ないました。

3、課題

常総市は茨城県内ではつくば市に次いで外国人が多く居住する地域であるために、これまでも多様なアクターにより外国人住民支援が積極的におこなわれてきていました。当協会も、ブラジル人学校への日本語教材支援や子どもたちの健康診断を実施するなど様々な形で関わってきましたが、ブラジル人の地域社会での生活情報は少なく、ブラジル人コミュニティーとの直接のつながりは希薄であったといえます。今回、災害時に最も有効であったのは、普段からのブラジル人コミュニティーのつながりやフェイスブック等による地域情報の交換であったと思います。

常総市は当協会のある水戸市からは約80キロ離れており、この距離は日常的な交流には限界があると言わざるをえません。しかし、一方で、被災地から距離があることで、同じく水戸市にある県(国際課・住宅課・広報広聴課等)と協働して支援体制に入ることができました。

地震災害、土砂災害、火山による災害、そして今回の台風による堤防決壊と、近年、日本は各地で形の違う自然大災害に見舞われています。どのような場面にあっても、被災地を支援するためには、その周辺地域がそれぞれの立場や特性を生かしてどう連携できるのか、平常時より検証していく必要があると考えます。特に多文化共生の地域づくりを進める中で、災害時に外国人住民を効果的に支援するためには、地域間の広域ネットワークがきわめて重要であることを改めて実感した次第です。

(写真1)鬼怒川堤防決壊

(写真2)常総市役所

(写真3)避難所の様子

【著者プロフィール】

茨城県商工労働部外国人労働者相談室相談員(英語)を経て1995年から同協会職員