加藤順彦さん コラム

外国人労働者の実態について考える

加藤順彦(社団法人多文化リソースセンター やまなし代表理事)

第二の故郷ともいうべきブラジルから帰国し甲府に居を構えて7年、多くのラテン系外国人家族との出会いがありました。集住を好んで公営団地で暮らす多くの外国人の生活実態を知る限り、彼らの同胞意識は根強く、お互いに情報交換しながら、言葉・制度・こころの「3つの壁」を乗り越えてきたのは彼らの努力の賜物だと思います。

近年の入国管理局における不法滞在取り締まり強化及び一昨年施行された外国人の在留管理制度の変更に伴い、いわゆるオーバーステイの外国人や外国人犯罪件数は年毎に減少している一方で、外国人永住者は増加傾向にあります。
今までの20年を日本における多文化共生の第1ステージと呼ぶとすれば、今我々は東日本大震災を契機とした今後の多文化共生活動の第2ステージに向けた分岐点に立っていると言えるのかもしれません。この歴史的経緯を踏まえて、定住化が進む外国人に対応できるよう、住空間及び安定雇用に結びつく労働の継続性に視点を移した外国人サポート施策の方向性を議論し模索していくことが必要とされているのではないでしょうか。

外国人の雇用市場は日本人と比べるとまだまだ限られたものであり、特に彼らの雇用期間は自分たちの思いとは関係なく非常に短く、労働先を転々とする外国人が多くいます。就労目的で来日する外国人は、彼らを雇用する派遣会社から学歴を問われることは殆どなく、就労の際の履歴書には職歴のみを記入するのが通常です。彼らの職種・職歴の多さは雇用主にとっては都合の良い条件かも知れませんが、将来の安定した生活に結びつくとは思われません。第2ステージにおける多文化共生活動の方向性を定める上で、外国人の就労期間の短さに焦点を当てることは非常に重要だと思います。

多文化共生の第1ステージにおいて、日本全国の至る所で外国人のための無料の日本語教室が開かれてきました。しかし、移り変わりの激しい労働環境ゆえに継続して日本語を勉強することが難しく、日本に数年滞在しているにもかかわらず未だに日本語が話せない人達も存在します。現在の厳しい雇用市場の下では、外国人は第1に日本語を話せることが条件であり、日本語が話せない外国人は工場での仕事が見付からなければ、自ずと安定雇用とは程遠い現場へと向かわざるを得ません。

今後、外国人サポート施策に関わっている行政機関の人々は、多文化共生活動の第2ステージにおける方向性を各方面と共有し、外国人をひとくくりにすることなく、多世代の外国人の実態に目を向けて欲しいものです。その上で、仕事が見つからず生活に不安を抱える50,60代の外国人或いは高校進学ができなかった若年層に対する段階的な就労支援プログラムとして、実際の就労・自立に向けた日本語学習・作業訓練を組み合わせた、外国人就労に特化した基礎能力の自立支援事業の策定が望まれるところです。

日本の雇用市場が、急速なグローバル化で生き残りをかけた高度な技術者集団へと舵を切りかねない中、外国人の生活弱者が生まれない社会の創造に目を向けて、ここで改めて日本人と外国人が多様性の重要さを考える上での原点とも言える「センス・オブ・ワンダー」(異なる文化への好奇心)を共感・共有することにより、今後とも更にお互いの認識・理解を深め合いながら次世代を見据えた多文化共生の道が開けてくるのではないでしょうか。
外国人にとっては、持って生まれた自らの3つのリソース(多言語・多文化・多様性)を前面に押し出して、もっと身の回りの人々とのコミュニケーションに気を配り、例えば災害時においては支援される立場から抜け出して、逆に地域コミュニティーの一員として活躍できるよう普段から日本人との近所付き合いを大事にするという目線を持って欲しいと思います。日本人社会とのつながりを強めて周囲から信頼を得ることが地域社会における生活者としての歩むべき確かな道だと思いますので、将来ともに安定した生活基盤を確立するためにも今いる所からもう一歩踏み出して、外国人の求人が拡大すると予想される介護職やどんな業種でも役に立つQC(品質管理)の資格取得のための日本語学習を継続する勇気を出して欲しいと切に願います。

日本は、今こそ世界との共生に向けたグローバル国家として、世界の価値観を受け入れて共感し、違いを明確にしたうえで、世界の共有価値の創造に向けた第1歩を踏み出すべきだと思います。

【参考文献】

  • 「動的平衡2」著者:福岡伸一/木楽舎2011.12.7
  • 「センス・オブ・ワンダーを探して」著者:福岡伸一・阿川佐和子/大和書房2011.11.1