菊池  哲佳さん コラム

防災を通じて連携・協働を推進する

菊池 哲佳さん(公益財団法人仙台国際交流協会)

東日本大震災後の防災の取り組み


多言語防災ビデオ「地震!その時どうする?」



外国人住民と企画・運営する防災訓練


東日本大震災2日目の仙台市災害多言語支援センター

私が所属する仙台国際交流協会では東日本大震災での経験を教訓に、次の3つを柱に据えて防災事業を実施しています。
@ 防災啓発
A 防災訓練
B 災害時の支援体制の整備

「@ 防災啓発」では、自治体国際化協会(CLAIR)からの助成により、多言語防災ビデオ『地震!その時どうする?』と、多言語防災パンフレット『地震から身を守るためのアドバイス』を制作しました。
多言語防災ビデオは、やさしい日本語もふくめて12言語で制作しました。「循環備蓄」や「分散備蓄」等の防災知識を分かりやすく説明していることが特徴です。なお、すべての言語で字幕が表示されるので、映像と音声だけでなく、文字情報でも理解を深めることができます。
多言語防災パンフレットは11言語で制作しました。「東日本大震災で困ったこと」など、震災の経験から学んだ教訓を分かりやすいイラストとともに掲載しています。どちらもインターネット上で公開していますので、ぜひご活用ください。

「A 防災訓練」は2つの内容で行っています。1つは、外国人住民を対象とする訓練です。日本での防災知識が十分ではない外国人住民のために、通報の仕方や消火器の使い方などを学ぶ機会を設けています。この訓練の企画や運営では、防災士会や学生ボランティア団体に、また通訳では災害時言語ボランティアに協力をいただいています。

もう1つは、外国人住民が企画・運営に参画する防災訓練です。この防災訓練の実施にあたっては、仙台国際交流協会がコーディネーターとして、実施主体である町内会と外国人住民の団体をつないでいます。外国人住民の視点が加わることによって、訓練が日本人住民にも新鮮なものとなり、お互いの新たな学びの機会となっています。

「B 災害時の支援体制の整備」では、災害時言語ボランティアの運営と仙台市災害多言語支援センターの準備を行っています。現在は震災での経験を踏まえ、災害時言語ボランティアの運営の見直しや仙台市災害多言語支援センターの運営マニュアルの作成等を、仙台市と協議しながら進めているところです。

課題解決に向けて――行政・国際交流協会職員に求められる視点

これらの取り組みで大切にしている共通の視点があります。それは、実施のプロセスで住民や関係団体・機関との連携・協働を推進することです。連携・協働の推進とネットワークづくりの必要性は、東日本大震災での経験から得られた教訓です。仙台国際交流協会では震災の当日から災害多言語支援センターを運営し、外国人被災者への情報提供や相談対応を行いましたが、多くの課題も残りました。

例えば、その一つに安否確認の問合せへの対応があります。震災時には発災直後から国内外より安否確認の問合せが殺到しましたが、私たちはそれらに応えることはほとんどできませんでした。また、国内外より物資提供やボランティア活動の申し出をいただきましたが、それらに応えるための情報提供も十分だったとは言い難く、課題として残りました。いずれも自治体や国際交流協会が単独で対応することは極めて難しく、課題解決には多様な人・組織の連携・協働が不可欠です。

具体的には、前者の課題解決には大使館・領事館や県警等との連携・協働が求められますし、後者はボランティアセンターやNGO等とのさらなる連携・協働が求められるでしょう。このことから、「多文化共生社会」の実現に向けて防災施策や事業に携わる職員には、ネットワークづくりを基礎とする施策や事業の立案・実施が求められます。

そのため、仙台国際交流協会の防災事業も、連携・協働の視点を大切にして実施しています。例えば多言語防災ビデオの制作では、仙台に住む(もしくは仙台にゆかりのある)外国人住民に出演、翻訳、ナレーションの収録等で協力いただきました。あるいは、防災訓練では外国人住民や関係団体・機関の協力のもとに実施していることは前述のとおりです。さまざまな事業を通じて連携・協働を推進することが、住民や関係団体・機関の生きたネットワークづくりにつながり、誰にとっても安全・安心なまちづくりの実現に一歩近づくことになると思います。

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