多文化共生2.0の時代

第2回 2017.06.05
日韓移民政策シンポジウムと世界人の日

2017年5月19日に、日韓移民政策シンポジウム「多文化社会から移民社会へ:日韓両国のビジョンと制度づくり」が、韓国ソウル市にある漢陽大学国際大学院会議室で開催されました。このシンポジウムは、韓日未来フォーラム、韓国多文化学会、漢陽大学平和研究所の共催で開かれ、韓国からは日本の移民政策にも詳しい梁起豪聖公会大学教授等10名の専門家が、日本からは毛受敏弘国際交流センター専務理事、佐久間孝生東京女子大学名誉教授そして私の3名が参加しました。

午前の部では、私が「移民統合の新たなビジョン―インターカルチュラル・シティと多文化共生2.0」と題した基調講演を行いました。欧州評議会が始めたインターカルチュラル・シティ・プログラムが、多文化主義や同化主義と異なる第3の道として、欧州の自治体で広がっていること、そして日本の自治体も欧州の自治体と交流しながら、多様性を活かした地域づくりに力点を置く「多文化共生2.0」が広がりつつあることを報告しました。

午後は、第一部「日韓両国における移民受容の現状と新制度の模索」において、韓国から2本の報告があり、日本からは毛受専務理事が「移民国家日本への転換が必要な理由」について報告しました。一方、第二部「日韓両国の移民社会変容に向けた理念とビジョンの模索」では、韓国から2本の報告があり、日本から佐久間名誉教授が「日英比較を通してみた文化的多様性の日本的受容」について報告しました。

シンポジウムでは、移民政策をとらないことを明言する政府のもとで「外国人材の活用」が進む日本と、すでに在韓外国人処遇基本法と多文化家族支援法という移民統合に関する2本の法律が制定されて、10年近くになった韓国とのギャップが明らかになりました。韓国側の報告で特に印象に残っているのは、「多文化家族」(韓国人と外国人が結婚した家族を指す韓国独特の用語)への支援を中心とする「多文化政策」から、より包括的な移民政策を推進するために、どのような政府組織をつくったらよいかという具体的な制度設計の報告が、韓国の移民政策研究の第一人者である薛東勲全北大学教授からあり、活発な議論がなされた点でした。また、韓国側報告者から自治体の取り組みへの言及がまったくなかったことも、印象に残りました。

シンポジウム翌日の5月20日は「世界人の日」でした。この日は、2007年5月に制定された在韓外国人処遇基本法の第19条に定められた記念日で、同条には「国民及び在韓外国人が互いの文化と伝統を尊重しながら共生できる社会環境を醸成するため、毎年5月20日を世界人の日とし、同日から1週間を世界人週間とする」とあります。2008年に始まったので、今年でちょうど10回目となります。

シンポジウムの翌日に、ソウル市主催の「世界人の日」の記念行事をソウル市庁舎の地下2階のホールで見学することができました。100人ほどの市民が参加していました。多文化家族の子どもたち30人ほどの合唱の後、ソウル市に貢献した外国出身市民10名の表彰がありました。表彰された外国出身市民の出身国は中国(5名、うち3名は朝鮮族)、ベトナム(2名)、ウズベキスタン、キルギスタン、カナダでした。

この行事には、2015年12月に発足したソウル市外国人住民代表者会議の委員が来賓として参加しており、日本出身委員の瀧由加利氏にお会いすることができました。瀧氏によると、ソウル市外国人住民代表者会議では、23か国38人の議員が参加していて、これまで21件の政策提案の内16件が受け入れられたそうです。代表者会議に参加した感想として、第一に外国人が外国人のための政策提案を直接ソウル市に申請し,ソウル市が法務省やソウル市教育庁などに伝達し、提案が受け入れられたか確認できることが素晴らしいそうです。瀧氏は、2006年に設立されたソウル地域出入国移民者ネットワーク(2015年まではソウル出入国結婚移民者ネットワーク)の会長を務めたことがあり、現在も副会長を務めています。この会では、移民者に関する法務部(日本の法務省に相当)関係の行事に参加したり、ソウル市内の出入国管理事務所で通訳などのボランティア活動を行い、韓国社会への適応に困難を抱える移民者を支援しているそうです。

ちなみに、法務部主催の記念行事はシンポジウムと同じ日に開催されたため、見学することができませんでした。国立劇場で盛大に開催され、法務部長官(法務大臣)賞が授与されたそうです。2013年には当時、前述のネットワーク会長を務めていた瀧氏も受賞したとのことでした。

 

日韓移民政策シンポジウムのプログラム(IOM移民政策研究院の韓国語ページ)

法務部主催第9回世界人の日行事(2016年5月20日)を紹介するビデオ

ソウル市外国人住民代表者の発足を紹介する記事(2016年1月11日)