多文化共生2.0の時代

第3回 2017.07.12
日本語教育推進基本法

日本語教育推進基本法の制定をテーマとした馳浩衆議院議員(自由民主党)による講演が、2017年6月に明治大学中野キャンパスで行われました。

馳議員は、文部科学大臣を2015年10月から2016年8月まで務めました。2016年12月の「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)の制定において中心的役割を担った馳議員が現在、力を入れているのが日本語教育で、与野党議員が参加する日本語教育推進議員連盟(2016年11月発足)の事務局長を務めています。同議連の会長は河村建夫元文科大臣(自由民主党)、会長代行は中川正春元文科大臣(民進党)、幹事長は笠浩史元文科副大臣(民進党)です。

当日は、明治大学の学生のほか、学外から日本語教育の研究者や都内の日本語学校関係者も多数参加し、あわせて50人近くが聴講しました。筆者が司会を務めました。

馳議員は、講演の冒頭に、所管省庁が曖昧な課題は、議員立法が必要であることを述べるとともに、まもなく策定される今年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に初めて「日本語教育の拡充」という文言が盛り込まれる予定であることを報告し、日本語教育を国策として推進しなければいけないことを強調しました。

講演は、「日本語教育推進基本法案(仮称)骨子案イメージ座長試案に対する意見(概要)」と題した資料を配布して行われました。この資料は、日本語教育議連において検討を進めるために馳議員が作成した、基本法骨子案とそれに対する関係省庁や自治体のコメントが紹介されているもので、今回初めて公にされたとのことでした。

同骨子案は、「総則」「基本方針」「基本的施策」「日本語教育推進協議会」の四部構成となっています。「総則」には目的、定義、基本理念、国の責務、関係者相互間の連携強化、財政上の措置といった項目が盛り込まれています。目的は「日本語教育に関する施策を総合的に推進し、もって我が国に居住する外国人との共生による活力ある社会の実現に資する」とあります。基本理念には、「日本語教育の推進は、外国人に係る教育、労働、出入国管理その他の関連施策との有機的な連携が図られ、総合的に行われなければならないこと」が示されています。

関係省庁や自治体から最も多くのコメントがあった「基本的施策」には、「日本語教育の普及推進」、「日本語教育の質の保証」「日本語教育に係る調査研究」が盛り込まれています。この中で馳氏がその意義を強調したのは「日本語教育の質の保証」で、日本語教育機関、日本語教育人材、教育内容・教材開発、日本語能力の評価が含まれています。特に、日本語教育人材の育成は「この法律の肝」であると明言しました。日本語教師を経済的に安定した職業にしたいとのことでした。

近年、技能実習生とともに日本語学校の留学生が、日本の人手不足を補う切り札として注目され、日本語学校が各地で急増しています。日本語学校については、設置形態も様々で、法的な位置付けが曖昧な問題が指摘されていますが、骨子案の資料では、日本語学校の教育の質を担保する仕組みの構築への言及がありました。

現在、外国人の日本語教育は文化庁国語課の所管となっていますが、日本語教育推進基本法の制定にあたって、文部科学省(生涯学習政策局)と外務省の共管とすることが提案されました。

講演の後、会場からの質問を受け付けましたが、筆者にとって興味深かったのは、日本語学校関係者から、自民党では留学生の週28時間のアルバイト時間を週36時間にまで緩和する案があるようだが、どう考えるかという質問でした。馳議員は緩和に慎重な立場でしたが、馳議員の回答後、筆者は司会の立場で受講者に緩和に賛成かどうか尋ねてみました。だいたい賛成1、反対3ぐらいの割合に分かれました。

日本語教育議連では、来年の通常国会に法案を提出することを目指しているようです。これまで、「移民政策と誤解されない」ようにしながら、「外国人材の受け入れ」を進めてきたため、外国人の生活環境の整備は遅れがちでしたが、日本語教育推進基本法が制定されると、自治体主導で進められてきた日本の統合政策は、ようやく国と自治体が連携した世界標準のものに近づいていくでしょう。