多文化共生2.0の時代

第4回 2017.08.21
外務省「外国人の受け入れと社会統合のための国際ワークショップ」

外務省と国際移住機関(IOM)の共催で、外国人の受け入れと社会統合のための国際ワークショップ「多文化共生社会に向けて-女性の生活と活躍を中心に」が、2017年3月1日に東京ウィメンズプラザで開かれました。筆者は、2つのパネルディスカッションのモデレータとして参加しました。

外務省がIOMと組んで国際会議を開くのは、今年で13年目となります。最初の2004年度は「国境を越えた人の移動−経済連携協定と外国人労働者の受け入れ−」(7月)と「外国人問題にどう対処すべきか−諸外国の抱える問題とその取り組みの経験を踏まえて−」(2月)をテーマに国際シンポジウムが開催されました。2005年度からは毎年一回、3月に開催されるようになりました。2007年度から、外務省とIOMに加え、自治体も共催団体となり、静岡県や愛知県との共催で、それぞれ静岡市と名古屋市で開かれました。

2009年度からは、国際ワークショップと名称を変えました。2009年度に神奈川県との共催となった後、新宿区、大田区、葛飾区といった都内の自治体や上智大学や明治大学といった都内の大学と共催し、2016年度は東京都と自治体国際化協会の後援で開かれました。筆者は、2006〜2009、2011年度にも参加しているので、今回で6回目の参加となります。

今回の会議も、これまでと同様、ウィリアム・スイングIOM事務局長と海外から招聘した二名の講演がありましたが、何と言っても今回の特徴は2つのパネルディスカッションにありました。というのも、6人のパネリストはみな女性であり、そのうち5人は外国出身者であったからです。

第1パネルのテーマは「外国人女性の生活と共生社会」で、パネリストは、奥山マリア・ルイサ氏(カトリック東京国際センター、フィリピン出身)、小野杏奈氏(多文化共生センター大阪、日本出身)、ニーナ・ハッカライネン氏(外国人女性の会パルヨン、フィンランド出身)でした。3人からは、東京、大阪そして京都の現場での外国人支援の現状と課題についての報告がありました。一方、第2パネルのテーマは「外国人女性の活躍に向けて」で、パネリストは福山満子氏(横浜市福祉事業経営者会、中国出身)、柳瀬フラヴィア(グーグル合同会社、ブラジル出身)、井上ノエミ氏(墨田区議会議員、ボリビア出身)でした。3人からは、それぞれ福祉、ビジネス、政治の分野での経験が語られました。

第1パネルでは,3名のパネリストのうち2名が外国出身者でしたが,それは増加する外国人に対する生活支援を外国人当事者自身が担うようになっているという、日本社会の一つの変化を象徴しているといえます。一方、第2パネルでは,実際に日本社会の多様な分野で活躍し、外国人の若い世代にとってロールモデルとなるような外国出身女性が登壇しました。日本人が、外国人は支援が必要な人といったステレオタイプをあらため,日本社会に貢献している外国出身女性の存在を認識するという意義もあったといえます。

今回、登壇者の大半が外国人女性であったほかに、もう一つの特徴がありました。それは、200人を超える一般参加者の大半も女性で、おそらくその過半数は外国人であったことです。これは、過去13年の歴史でもおそらく初めてのことでした。そして、英語の同時通訳があったこともあり、フロアからたくさんの発言が日本語と英語でありました。その多くは、パネリストへの質問というよりは、外国人の受け入れ体制の整備が遅れているとして、日本政府や日本の学校教育への不満を表明するものでした。フロアからの発言は途切れることがなく、予定の3時間があっという間に過ぎました。

2016年4月に女性活躍推進法が施行され,女性の活躍に焦点を当てた行政の取り組みが進められていますが,その大半は日本人女性を対象としたものであり、今回、外務省がIOMと組んで、外国人女性の生活や活躍に着目したワークショップを開催したことを評価したいと思います。

また、筆者はこれまで多文化共生のテーマを掲げ、パネリストも一般参加者も外国人が過半数を占め、そしてこれだけフロアから積極的な発言があった会議に参加したことがありません。そうした点で画期的な会議であったと思います。スイングIOM局長は、外務省が外国人の受け入れと社会統合をテーマにした会議を開くのは珍しいと述べていましたが、外務省の取り組みが他の府省庁によい影響を及ぼすことを期待しています。