渡戸一郎さん コラム

外国人の「社会参加」を考える

渡戸一郎(明星大学)

今秋、米国大統領選挙とともに行われた連邦議会選挙で、メイジー・ヒロノさんが日本生まれで初、アジア系女性としても初の上院議員となったことが報じられました。福島県出身で、8歳でハワイに移住後、苦学した日系1世です。ハワイ州下院議員を経て連邦議会下院議員となり、今回上院議員となりました。一方、日本にも外国出身の1世の国会議員になったツルネン・マルテイさんがいます。フィンランド出身の彼の場合、1968年宣教師として来日後、日本語を習得。1979年日本国籍を取得後、1992年に神奈川県湯河原町議員に、さらに2002年参議院議員になりました。

このように、外国出身者でも居住国の国籍を取れば政治参加が可能になりますが、外国籍のままでも一定の条件で地方参政権を与えている西欧諸国や韓国などの事例があります。しかし日本に居住する外国籍者には地方参政権が付与されていないので、納税者であるにもかかわらず、選挙活動や投票行動という狭義の政治参加からは排除されているのが現状です。代わって1990年代半ば以降、外国人諮問会議の創設による広義の政治参加(行政参加)が試みられてきました(外国人と日本人がともに参加する会議体の設置も増えてきました)が、これらの会議に参加するのはごく一部の外国人住民に留まっています。こうしたなかで、地域における外国人の社会参加についてどのように考えたらよいでしょうか。

私は2011年度から始まったかながわ国際交流財団の県内「外国人コミュニティ調査」(CLAIR助成)に関わっています。この調査の報告書では、「オールドカマーの団体の大半はコミュニティの問題解決に独自に取り組むための資力を相対的により多く蓄えているのに対して、ニューカマーの団体等は組織基盤が脆弱であることが多く、コミュニティ外部の多様な資源を調達しながら問題解決に当たっている」と総括されています。すなわち、4世以上の段階を迎えているオールドカマーは、戦前もしくは戦後まもなく設立された民族団体をもち、同胞の弁護士・司法書士・行政書士などの専門職が相談機能を担っています。それに比べ、1980年代以降に来日したニューカマーでは、互助・自助団体も生まれていますが、多くの場合、日本社会との媒介役となる1人か少数のメンバーの働きに依存する傾向が認められます。そして、自治体の相談窓口や国際交流協会などを利用するとともに、教会、NGO、日本人ボランティア、弁護士、研究者などと連携して問題解決に当たっています。

抱えている問題も、オールドカマーでは、独居を含む高齢者の年金・医療・福祉などが切実であると同時に、若い世代のアイデンティティの多様化、母語や民族文化の継承教育、民族学校の運営などが挙げられます。一方、1.5世や2世の世代が成人期に達しつつあるニューカマーでは、子どもの教育・進学・いじめ・アイデンティティの保持、成人を含めた日本語習得、就職、職場での差別、ひとり親家庭の貧困、住宅ローンの破綻、生活保護の受給、医療、国際結婚にともなう摩擦、在留資格の安定化、日本国籍取得など、まさに問題山積です。これらの問題は階層やジェンダー、雇用や就労状況などによって多様化し、複雑化している傾向も見られます。

さて、この調査では「外国人コミュニティ」という言葉をかなりゆるやかな意味で用いています。前述のように、ニューカマーの団体等は組織基盤が脆弱であることが多く、むしろ同胞の間での流動的なネットワーク型の活動が一般的です。日本の自治体や国際交流協会では、各コミュニティのリーダーやキーパーソンを見出して、そこを窓口に情報伝達や意見聴取のルートを確保しようとする向きがありますが、実際には各コミュニティを全体として代表しうる人がいないことが多いのです。むしろ、コミュニティ内部の多様化や外国人の「個人化」が進んでいると言ってよいかもしれません。この「個人化」には個人として自立して生きていくという積極面もありますが、同時に「孤立」する場合もあるので、そうした状況をいかに解消していくかも課題です。

経済の低迷、国・地方の財政悪化、福祉国家の転換等により、「参加型」社会や、「自立」支援とセットで「協働型」の多文化共生のまちづくりが強調され、外国人のキーパーソンや住民に対する社会参加の期待が増大しています。しかし、とりわけニューカマーのなかには、生活や子育てに追われている、生活が苦しい、日本語が十分話せないなど、日本での「社会参加」に困難を抱えている人びとが多く見られるのが実情です。そこで、参加を強調するあまり、参加できない人が結果的に「排除」されないような配慮と工夫が一段と重要になっているのではないでしょうか。国際交流協会などでは、そのような配慮のもと、地域へのゆるやかな参加や個別生活課題に即した学習など、よりきめ細かなプログラムの開発と息の長い実践が求められます。そして中長期的には、外国出身者の分厚い社会参加が進み、さらに政治参加への道が開かれていくことが期待されます。

【NPO法人ABCジャパン】

横浜市鶴見区在住のブラジル人によって2000年に設立された団体で(2004年に法人格取得)、地域のブラジル人や南米出身者向けの生活相談や日本語教室、子どものための教育活動、地域社会との交流活動等を行なっています。また、2009年に全国のブラジル人コミュニティと連携して、NNBJ(在日ブラジル人全国ネットワーク)を立ち上げ、ブラジル政府や日系人団体との連絡調整も行っています。


12月24日/宮城県 石巻市
石巻クリスマスキャラバン。前日から降り出した雪で宿泊施設の庭は真っ白。出動前のサンタクロースが勢ぞろいしました。この後仮設住宅を回ってクリスマスプレゼントを届け、シュラスコの炊き出しを行いました。

7月30・31日/宮城県南三陸町の『福興市』
『福興市』は、地元商店街と町が地域の復興を願って開催しました。以前ブラジル大使館が支援物資(自転車200台等)を届けた縁で、南三陸市長の招待を受けての参加。
バルーンアートを器用に作り、子どもたちの心を解きほぐしてくれたピエロは、横浜在住のブラジル人。出来上がったバルーンを受け取った子どもたちの顔に笑顔が広がりました。

【著作物について】

  • 『多民族化社会・日本』 渡戸一郎(編著), 井沢泰樹(編), 明石書店(2010/9/8)
  • 『在留特別許可と日本の移民政策』 渡戸一郎(著), 鈴木江理子(編)(2007/5/31)
  • 『先端都市社会学の地平(先端都市社会学研究(1))』 広田康生(著), 町村敬志・田嶋淳子・渡戸一郎(編), 明石書店(2006/11)
  • 『多文化教育を拓く』 渡戸一郎(著), 川村千鶴子(編), 明石書店(2002/2/22)
  • 『エスニシティ・人権・ナショナリティのゆくえ』(MINERVA社会学叢書)ウォルター・L.ワラス(著), Walter L. Wallace(原著), 水上徹男(翻訳), 渡戸一郎(共訳), ミネルヴァ書房(2003/07)
  • 『都市的世界/コミュニティ/エスニシティ』 渡戸一郎 (著), 田嶋淳子・広田康生(編), 明石書店(2003/1/27)
  • 『自治体政策の展開とNGO(講座・外国人定住問題)』 渡戸一郎(編著), 明石書店(1996/5/15)
  • 『超過滞在外国人と在留特別許可−岐路に立つ日本の出入国管理政策』 駒井洋(編集), 山脇啓造・渡戸一郎(編), 明石書店(2000/02)
  • 『自治体の外国人政策』 駒井洋(編集), 渡戸一郎(編集), 明石書店(1997/5/15)
  • 『自治体の国際化政策と地域活性化』 伊藤善市 (著), 水谷三公・渡戸一郎(著), 学陽書房(1998/12)