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Vol.180 賛否両論!?エリート教育

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□■□      CLAIRメールマガジン vol.180(2017年6月16日)
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□             ~ 賛否両論!?エリート教育 ~

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                            T O P I C S               
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【記事】シンガポールの早期教育事情
         ~エリート育成から多様性重視へ~

【記事】オーストラリアにおける学生への支援制度

【記事】韓国の早期教育事情

【記事】イギリスにおける"就学前"教育事情

【記事】フランスのアプリ

【INFO】コラム「多文化共生2.0の時代」最新記事を掲載しました

【REPO】スタッフだより 「梅雨を乗り切るエネルギー!」

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【記事】シンガポールの早期教育事情
                    ~エリート育成から多様性重視へ~
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シンガポールは世界有数の教育国です。資源に乏しく、東京23区とほぼ同じ面
積しかないこの国では「人材は最大の資源である」として、国家予算の16%
(日本では5.5%)を投じ、教育政策に取り組んでいます。
子供の将来に向けての教育は就学前から始まっています。保育園・幼稚園から
二言語(公用語の英語と母国語)によるプログラム(読み書き、音楽、野外活
動等)を実施しており、さらに習い事に通っている子供もいるそうです。

その背景には小学校6年生から中学校へ進学する際に受ける試験の結果が、その
後の人生を決定するとも言われている事情があります。受験した小学校6年生の
約98%が中学校へ進学しますが、その結果により進路が決まり、現地の大学ま
で進学できるのは約3割といわれています。そのため、親は子供を少しでもレベ
ルの高い小学校に入学させるべく、就学前から高い教育を受けさせているのです。
行政サイドでは、2013年3月まで幼稚園は教育省、保育園は社会・家族開発庁が
所管していましたが、同年4月に、それぞれの関係部署が一つになった「早期幼
児発達局」を設置し、全ての子供たちを対象に就学前教育を強化する施策を開
始しました。

ところが近年では、このエリート育成教育への批判も見受けられます。今年3月
には教育大臣が今後の教育方針として「学ぶ楽しさを育てること。起業家的な
挑戦や深い技術と専門知識を高めることなどを教育の方針とする。学校はテス
トをするだけの場所ではない。」と表明。子供の長所や才能を最大限に生かす
よう奨励し、多様性を重視した教育方針に転換すると発表しました。今後は、
技術的・専門的な教育にも力を入れていくとのことです。

就学前教育においても、その方針が反映されています。教育省が示すカリキュ
ラムでは、就学前教育の重要性を説くとともに、子供たちの好奇心を活かして、
様々な体験や経験をさせ、創造的自己表現、自然観察力、運動能力の向上、読
解記述力、数学的思考能力、社会的・感情的な成長の6つの学習領域を伸ばす
ことと記載されています。また、卒園時には、善悪の判断ができること、他人
との関係を築けること、好奇心を持ち自ら探検できること、健全な状態で様々
な芸術体験に参加し楽しめることなど8項目で一定レベルの成長を求めています。
保護者に対しては、学習域を限定せず、またアカデミックな能力育成に固執し
ないように求めており、保護者と先生の協力が子供の可能性を引き出す就学前
教育に重要であるとされています。

ただ、教育省としても、実際に現在の教育システムが変革し定着するには、長
い時間が必要だと考えているようです。
外国人労働者を抑制しつつある中、国民に専門的な技術者が少ないと言われて
いるシンガポールにおいて、子供の多様性を伸ばし、エリート官僚だけでなく、
技術者も育成していくという、この教育方針の転換は有効であると思います。
今後どのように変わっていくのか、注目していきたいところです。

                 (シンガポール事務所所長補佐 堀部)


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【記事】オーストラリアにおける学生への支援制度
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ここオーストラリアでも日本同様、学生や留学生を経済的にサポートする支援
制度があります。これらは、オーストラリア政府や大学等の教育機関、公共・
民間団体により提供されています。ここでは、そのうちオーストラリア政府が
行っている制度の一部についてご紹介します。

(1)「Study Assist」(http://studyassist.gov.au/sites/StudyAssist/)
これは、大学等の高等教育を受ける学生向けの学費等の支援制度です。
そのうちのひとつに「HECS-HELP」という制度があります。この制度は、本来学
生が支払うべき学費を政府が負担(融資)するもので、政府から学校に対し直
接支払われます。この制度により学生が支払うべき学費が、政府が定める金額
(2017年の一例:年額35,760ドル12,698ドル)以内に減免されることになる
他、返済については、学生本人が一定の収入を得られるようになってから、税
金の納付と併せて返済する仕組みとなっています。また、この融資は無利息で
あり、家族の経済状況等によらずに利用することができます。ただし、この
「HECS-HELP」は全ての高等教育機関において利用できるものではなく、利用で
きるコースが指定されています。
この「Study Assist」には他にも、「HECS-HELP」を利用できない学生向けの
「FEE-HELP」という制度があります。これは政府が定める金額(年により変動)
以内の金額の融資を受けられるものです。しかしながら、学費の減免措置はな
く、また借りた金額の25%が手数料としてかかる場合があります。
その他にも、海外への留学に利用できる「OS-HELP」等の支援制度があり、自分
に合ったものを本人が選択するものとなっています。

(2)「Australia Awards」(http://australiaawards.gov.au/)
これは、次の世代の人材に対し、学習の機会を与え、オーストラリアと他国と
の間の永続的な絆を促進することを目的とした奨学金プログラムです。いくつ
かのカテゴリーに分かれており、外国人がオーストラリアの大学等で勉強する
機会、またオーストラリア人が海外で勉強する機会等を得るために活用できる
ものとなっています。
そのなかの「Australia Awards Scholarships」を例にすると、海外からオース
トラリアの大学に留学する学生に対し、学費全額や往復の航空券(最低限のもの)
の他、住居にかかる費用の補助や保険費用等が給付されます。返済の必要はあ
りません。

(3)「New Colombo plan」
      (http://dfat.gov.au/people-to-people/new-colombo-plan/)
これは、オーストラリアの現役学生が日本を含むアジア太平洋の国・地域にお
ける学習やインターンシップを実施することを支援し、オーストラリアのイン
ド太平洋に関する知識を向上させることを目的としているものです。18歳から
28歳までの学生を対象としており、最長で1年間、現地における学習やインタ
ーンシップといった活動を実施するための奨学金プログラムとなっています。
最大20,000ドルまでの学費や、語学学習費用・住居費用等についても一定額が
給付されます。こちらも返済の必要はありません。

オーストラリアでは大学に入学する際に、最初にあげた「Study Assist」の利
用について説明を受け、支援について学ぶ機会があります。そのため、学生本
人が制度を知るとともに、自らの学費について考える機会ともなっています。
このような機会を与えることも、一つの価値ある学生支援のように感じます。

                      (シドニー事務所補佐 藤島)


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【記事】韓国の早期教育事情
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以前、Vol.177で「韓国の結婚事情」として、厳しい社会情勢から恋愛や結婚、
出産などを放棄せざるを得ない若者が増えている事情をお伝えしましたが、今
回は、生まれながらにして厳しい競争へと追い込まれる子どもたちの早期教育
事情についてお伝えします。

韓国では、家庭の経済的水準が上がり、少子化が進むに連れて親の教育熱が高
まったほか、政府が国際化及び知的基盤社会への発展を目指す方針を示したこ
とも相俟って、早期教育に対する関心が高まりました。

保健福祉部・育児政策研究所が2015年に行った「全国保育実態調査」によると、
保育園や幼稚園に通っている子どもで特別活動(*)を行っている子どもの割合
は2012年の79.8%から6%増の85.9%となり、高い水準で推移していることが示さ
れています。

活動の種類別に見ると、「体育」が67.7%で最も多く、「英語」が60.5%、「音
楽」が55.6%と続きます。また、施設類型別に見ると、家庭オリニチプと呼ばれ
る小規模な保育園を除くすべての施設において70%~80%の子どもが「英語」の
特別活動を行っていることが分かり、英語教育に対する高い関心が窺えます。

一方で早期教育には問題点を指摘する声も聞かれます。子どもらしい時間を過
ごすことができないという声や自分自身の外見や目に見える成果に執着しやす
くなるという声。また、幼い頃から英語を頻繁に使用する環境に置かれたこと
で、肝心の韓国語を正しく発音できない子どもも増えているのだとか。

乳幼児期は子どもの人格形成において重要な発達段階であるとよく言われます。
必要な知識や教養の習得と子どもの時にしかできない様々な経験。何事もバラ
ンスが大事なのかもしれません。

(*) 幼稚園及び保育園において、授業中あるいは放課後に行われる早期の特技
教育。

                   (ソウル事務所所長補佐 池之上)


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【記事】イギリスにおける"就学前"教育事情
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日本より一足早い5歳で就学を迎えるイギリス(*1)では、近年「就学前教育」
に力が入れられています。Childcare Act 2006に基づきEarly Years Foundation
 Stage(EYFS)と呼ばれる0~4歳までの学習目標が定められ、保育者はEYFSの
ガイドラインに沿うことが義務付けられました(*2)。Ofsted(英国教育水準
局)と呼ばれる評価機関が保育の検証も行い、ケアの質の担保も図られています。

ガイドラインでは、2歳時と就学直前の時期に到達度合いの確認をすることが規
定されており、アセスメントの実施には地方自治体の関与(*3)も求められま
す。結果はEYFSプロファイルとして個々に記録されるとともに、小学校にも共
有され、義務教育開始の早い段階でのつまずきを減らす一助となっているよう
です。

また、レセプションクラスと呼ばれる4歳児を対象とした、いわば「小学0年生」
を併設する小学校も多く存在します。小学校内で文字や数字に触れさせる機会
を与えることにより、小学校への円滑な移行を促進しているのでしょう。4歳か
ら小学校へ通う機会が得られるという意味では、イギリスは国全体が早期教育
に熱心と言えるかもしれません。

なお、国は就学前教育の無償化に取り組んでおり、全ての3、4歳児を持つ保護
者は、年間570時間分(15時間×38週)について無償で保育等のサービスが受け
られます。今秋からはさらに、一定の要件を満たせば、倍の年間1,140時間分が
適用されます(*4)。

イギリス滞在期間を通じて、周辺諸国も含めた幼児教育・ケアの在り方につい
て今後も注視し、現地ならではの情報の収集にも努めていきたいと思います。

(*1) ここではイングランドの事例による
(*2) http://www.foundationyears.org.uk/files/2017/03/EYFS_STATUTORY_FRAMEWORK_2017.pdf
(*3) https://www.gov.uk/government/publications/early-years-foundation-stage-assessment-and-reporting-arrangements-ara/moderating-the-early-years-foundation-stage-profile
(*4) https://www.gov.uk/help-with-childcare-costs/free-childcare-and-education-for-2-to-4-year-olds

                   (ロンドン事務所所長補佐 牧田)


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【記事】フランスのアプリ
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フランスには「Molotov」というフランスのテレビ番組を観ることのできるアプ
リがあります。このアプリでは有料チャンネルを含む30チャンネルを無料で見
ることができ、月額9.99ユーロを支払えば、さらに70チャンネルを追加で見ら
れるようになります。一部のチャンネルを除きますが、ブックマークした番組
を後で見たり、途中まで放送されている番組を最初から見たりすることも可能
であり、見逃したり、開始時間に間に合わなくても安心です。

2016年にはフランス内務省が度重なるテロに対応するため、テロ警報アプリ
「Systeme d'alerte et d'information des populations(SAIP)」をリリース
しました。事前に最大8箇所の特定の位置を登録したり、現在の位置情報を連動
させたりすることによって、その場所でテロがあった際に、スマートフォンに
テロに関する情報が通知されるというものです。そして、警報が伝えられると
同時に、次に取るべき行動の指示や助言まで送付されてきます。また、このア
プリにはテロだけでなく、原発事故や水害などに関する情報や対応方法も記載
されています。

アプリは常に進化し、様々なニーズに応じたものが提供されています。生活の
多様化に伴い、今後どのようなアプリがリリースされ、進化していくか楽しみ
です。

                                          (パリ事務所所長補佐 杉浦)


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【INFO】コラム「多文化共生2.0の時代」最新記事を掲載しました
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多文化共生ポータル内での毎月連載コラム「多文化共生2.0の時代」にて、最新
記事「日韓移民政策シンポジウムと世界人の日」を掲載いたしました。
(執筆者:明治大学 山脇啓造教授)
今回は韓国ソウル市で開催された日韓移民政策シンポジウム「多文化社会から
移民社会へ:日韓両国のビジョンと制度づくり」について取り上げながら、日
本と韓国の違いについても言及しています。

コラムはこちらから https://www.clair.or.jp/tabunka/portal/reading/tabunka2.0.html

〈お問い合わせ先〉
一般財団法人自治体国際化協会 多文化共生課
TEL:03-5213-1725 FAX:03-5213-1742
E-mail:tabunka@clair.or.jp


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【REPO】スタッフだより 「梅雨を乗り切るエネルギー!」
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出身の宮城県から関東に引っ越して3か月目に入りましたが、最近気付いたこ
とがあります。それは、東京にはクラフトビールが飲めるお店がとても多いこ
とです。専門店も地元では考えられないほど多いですし、街中のカフェで海外
や国内のクラフトビールを気軽に飲むことができる環境に驚かされます。最近
は、お店巡りをしたい衝動と、健康やお財布事情に対する危機感の間で揺れ動
く毎日を送っています。お日様が隠れ気味となり、全国的にもそろそろ梅雨の
シーズンに突入していきますが、晴れ間を見つけてビアガーデンにも繰り出し
たいですね!

                         (企画調査課 永澤)

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【編集・発行】一般財団法人自治体国際化協会(企画調査課)
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-7 相互半蔵門ビル7F
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