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vol.200 世界で進む、LGBT施策

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□■□      CLAIRメールマガジン vol.200(2018年2月23日)
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□            ~ 世界で進む、LGBT施策 ~

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                            T O P I C S               
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【テーマ記事】アメリカにおけるLGBTの人々の権利をめぐる動き

【テーマ記事】ドイツにおけるLGBT施策

【テーマ記事】パリ2018第10回ゲイゲームズ

【テーマ記事】中国におけるLGBT

【テーマ記事】オーストラリアにおけるLGBTQIの認知と受け入れ

【テーマ記事】東南アジアにおけるLGBT問題と文化的多様性

【R E P O】クレアレポート『テーザー銃について』のご紹介

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【テーマ記事】アメリカにおけるLGBTの人々の権利をめぐる動き
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1969年6月28日、ニューヨークのグリニッジビレッジにあるゲイバー「Stonewall
 Inn」に警察が踏み込み捜査を行ったことをきっかけとして、同性愛者による
暴動が起こりました。この暴動は、当時公の場において同性愛者としてのふる
まいをすることが違法とされ、日々行われていた警察によるハラスメントや社
会的な差別に同性愛者らが業を煮やして起こったものでした。「Stonewall
 Riots(ストーンウォールの反乱)」と呼ばれるこの暴動は、後に同性愛者ら
の権利擁護に向けて、転換点となったとされています。この暴動の一年後、
「ストーンウォールの反乱」を記念し、パレードが開催されました。「プライ
ドパレード」と呼ばれるこのパレードは現在でも毎年開催されており、2017年
に48回目を迎えました。2017年6月に開催されたパレードには、トランスジェン
ダーの消防士やニューヨーク市のデブラシオ市長、ニューヨーク州のクオモ州
知事らも行進に参加し、沿道には多くの観客がつめかけました。

1970年以降、LGBTの人々は長年の活動を通して社会的な理解と日常生活に関わ
る諸権利を少しずつ拡大してきました。2000年代に入り、2004年にマサチュー
セッツ州が全米で初めて同性婚を合法化し、2015年には連邦最高裁判所が同性
婚を合衆国憲法の下の権利であると認めたことで、全米において同性婚が事実
上合法となりました。

しかしながら、LGBTの人々の社会的な理解と権利は徐々に拡大してきているも
のの、課題は多く残されています。学校では、LGBTの生徒がLGBTではない生徒
に比べて、いじめやからかい、ハラスメントなどを経験する機会が多いという
ことが報告されています。また、雇用の場においても、LGBTであるということ
で解雇やその他職場での不当な扱いを受けるという事例が発生しています。 

このような問題の解決には、自分が同性愛者かどうかに関わらず、LGBT の人々
が学校や職場など身近なところで不利な立場に置かれている現状を知り、平等
な権利とは何かということを考えていく必要があるかもしれません。
                                                                                                
                 (ニューヨーク事務所所長補佐 柏井)

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【テーマ記事】ドイツにおけるLGBT施策
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2017年6月、ドイツにおいて同性婚が合法化され、同年10月より施行されました。
それまでドイツでは、パートナーシップ制度により同性のカップルには一定の
権利が保障されていましたが、今回の合法化により、異性のカップルと同等の
権利が認められるようになりました。同性カップルが養子を迎えることも可能
になり、今後、多様な家族が誕生することが予想されます。

しかし、第2次世界大戦中には、同性愛者はユダヤ人と同様、ナチスドイツに
より迫害され、数多くの人が強制収容所で虐殺されました。ドイツではその後
も東西ドイツ統一後の1994年まで、刑法175条の規定により、同性愛は違法と
されていました。社会の変化により、徐々にLGBTの人々の人権に目が向けられ
るようになり、長い年月を経て、今回法律で同性婚が認められるようになりま
した。

ドイツの首都ベルリンは、ヨーロッパの中でも特にLGBTにフレンドリーな街の
1つとして知られています。前ベルリン市長のクラウス・ヴォーヴェライト氏
も自らがゲイであることを公言しており、「私はゲイであり、それもまた良い
ことだ」という彼の言葉は、数多くのLGBTの人々を励ましたと言われています。

さらにドイツでは、2017年11月、出生届に「第3の性」を記載することが合法と
されました。新生児の中には、性分化疾患により、男女両方の特徴を持って生
まれてくる子どもや染色体と外性器の形状が一致しない子どもがいます。その
ような場合、出生届の性別欄を空欄にしておくことは認められていましたが、
それだけでは不十分だとして、立法府に対応を求める判決が出たものです。性
や結婚に関しては、文化や宗教によりさまざまな考え方の人がいますが、誰も
が個性を尊重され、幸せに暮らせる社会を求める動きは続いていくものと思わ
れます。

                   (ロンドン事務所所長補佐 丸山)

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【テーマ記事】パリ2018第10回ゲイゲームズ
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2020年の東京に続いて2024年にはパリオリンピック・パラリンピック競技大会
が開催されることとなりましたが、夏季オリンピック大会の中間年に行われる
ゲイゲームズというイベントはご存知でしょうか?

ゲイゲームズは、1982年にサンフランシスコで第1回大会が開催されて以来、
オリンピックと同様に4年に一度開催される、LGBTを含むあらゆる人に開かれた、
世界規模のスポーツ・文化の祭典です。

記念すべき第10回大会は2018年8月4日から12日にかけてパリで開催され、70を
超える国から15,000人の参加が見込まれています。期間中は、36を超える競技
と14を超える文化イベントに加え、開会・閉会セレモニー及びパーティが予定
されています。また大会に先立ち、8月1日から3日間にわたりスポーツと差別、
健康や多様性に関する会議がパリ市役所で行われるなど多彩なイベントが計画
されています。

大会運営は非営利団体である「パリ2018」により行われますが、この大会の目
的を次のとおり掲げています。

・EUとフランスの法律による基準に基づき、特に性的指向と性アイデンティティ
 に対するあらゆる差別と闘う
・LGBTのアイデンティティーと自由の認知を推進する
・性感染症、HIV/AIDS、癌、ドーピング、ドラッグの使用やその他のリスクへ
 の予防と啓発により健康を推進する
・障がいを持つ人や特別な手助けが必要な人たちを含め、本大会により多くの
 人が参加できるような特別なプログラムを導入する

ゲイゲームズという名称からもLGBTのためだけのスポーツ大会がイメージされ
ますが、年齢や宗教、性的指向、障がいの有無、健康、スポーツのレベルに関
わらず多様な人々に開かれた大会であるということが特徴です。
大会開催にあたっては、フランス政府スポーツ省やイル・ド・フランス州、パ
リ市をはじめとする公的機関がパートナーとして協力を行うほか、民間企業も
スポンサーとして協力しています。

オリンピックを6年後に控えたパリ及びフランスにとっては、本大会の成功がス
ポーツの推進とLGBTをはじめとする差別禁止の啓発PRにつながるとともに、
2024年に向けた弾みにもなると考えられます。

                     (パリ事務所所長補佐 宇都宮)

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【テーマ記事】中国におけるLGBT
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中国における有名な性に関する専門家の一人である李銀河(リ ギンガ)氏に
よると、中国国内におけるLGBTの人々は、約7千万人にのぼると言われています。
LGBTに関する様々な施策が行われていても不思議ではない規模ですが、性に関
して保守的な考え方が強い中国では、政府はLGBTに関しては明確な支持も反対
もしておらず、またLGBTの法的な権利も認められていないのが現状です。2016
年、河南省長沙市に住む男性が長沙市民事局を相手に、同性パートナーとの婚
姻を認めるよう提訴しましたが、訴えは退けられました(※1)。

一般社会においてもLGBTに対する理解が未だ進んでいないと認められる事例が
見受けられます。2001年に同性愛が国内の精神疾患のカテゴリから外されたに
も関わらず、2015年に河南省の同性愛の男性が、妻と親戚によって精神科病院
に入院させられ、19日間にわたり薬を投与される事件がありました。その後、
裁判所は病院に対し、男性への慰謝料の支払い及び地元紙へ謝罪文を掲載する
よう命じます(なお、裁判所は「矯正」そのものについて判断を示していませ
ん)(※2)。このことから、一般の人々だけでなく、精神科病院という公共性
の高い専門施設においてさえ、LGBTへの理解が今なお十分ではないことが窺え
ます。

そのような中で、国内においてLGBTに比較的寛容とも言える地域が香港です。
毎年行われる「プライドパレード」では、LGBTの法的権利を求めて多くの人が
集い、2017年のパレードには約1万人が参加しました。また、同年10月30日には、
上記パリ事務所の記事でも紹介されている「ゲイゲームズ」が、2022年に香
港で開催されることが決定しました(※3)。1982年の開催以来、アジアでの実
施は初めてのことであり、香港におけるLGBTのさらなる理解促進に繋がるので
はないかと期待されています。

人口13億人を有する中国社会がLGBTに今後どのように向き合っていくのか注目
されます。

                      (北京事務所所長補佐 大西)

(※1)百度百科「同性恋,是病??」
https://baike.baidu.com/vbaike/%E5%90%8C%E6%80%A7%E6%81%8B%EF%BC%8C%E6%98%AF%E7%97%85%E5%90%97%EF%BC%9F/10972
(※2)BBC News Japan「強制入院させられた同性愛男性に慰謝料 中国の裁判所」
http://www.bbc.com/japanese/40490635
(※3)OUT JAPAN「2022年のゲイゲームズが香港で開催されることが決定、
アジア初の快挙」
http://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/news/2017/11/3.html

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【テーマ記事】オーストラリアにおけるLGBTQIの認知と受け入れ
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オーストラリアにおけるLGBTQIの認知と受け入れの歴史は、古くは大英帝国植
民地時代まで遡ります。その時代、同国では反同性愛法が適用されており、そ
の法は、独立後も各州に引き継がれ、1997年にタスマニア州において廃止に至
るまで、同性愛行為は犯罪とされてきました。

近年、国、州、地方自治体や民間機関におけるLGBTQIに対する差別や同性愛に
関する調査が実施されたことを要因の一つとして、社会全体の課題意識が高ま
り、LGBTQIに対する理解が確実に浸透してきています。

2017年9月から11月に実施された国民投票では61.6%が同性婚に賛成票を投じ、
法的拘束力がない結果ながら、同性婚法制化に向けた大きな後押しとなりまし
た。その結果、2017年12月7日に連邦議会は同性婚を認める法案を可決しまし
た。

ただ、そのように理解が浸透した現代においても、同国保健省の調査によると、
LGBTQIの職員の45%は職場で自身の性的指向を隠しており、その3分の1は性的
指向を隠すのにとても気遣っているとの結果も出ています。また、LGBTQIの職
員の6人に1人が仕事で同性愛に関する嫌がらせや差別、迫害を経験したことが
あるとも回答しています。

同調査によると、総人口の11%以上がLGBTQIとされています。全ての州政府及
び地方自治体は、この決して小さくない割合を占めるLGBTQIの職員がその性的
指向やアイデンティティに関わらず、皆が等しく安全で尊重され、職場におい
て自分を偽る必要がないように支援を受けられるよう、LGBTQIの受入方針を定
めています。これらの方針の中には、異性同士の婚姻関係と同様の休暇(育児
休暇等)や退職年金、家庭内暴力への支援等が含まれているものもあります。

このようにLGBTQIの人々が抱える課題を社会全体の課題として認識し、深く理
解することは、LGBTQIの人々はもちろんですが、結果としてより多くの人が暮
らしやすい社会の形成にも繋がります。また、LGBTQIの85%が、仕事を選ぶ基
準として、給与や待遇だけでなく、職場環境が重要であると考えており、企業
にとっては優秀な人材確保にもつながります。
 
シドニー市は、世界最大のLGBTQIイベントのひとつ、マルディグラ(Sydney
 Gay and Lesbian Mardi Gras)に10年以上関わっており、市としてもこのイベ
ントに参加し、LGBTQIを支援するという立場を明確にしています。また、市長
のクローバー・ムーア氏は、2004年から同性カップルに対し、その関係を証明
するプログラムを行っていました。また、2008年から同性カップルに対する差
別撤廃を政府に働きかけ、2011年からは公式に同性婚を支持してきました。

同国における同性婚法制化で実現した結婚の平等は、LGBTQIに関連した課題に
取り組んできた多くの人々の努力の結果です。

LGBTQIの人々を受け入れるためには、法律や受入方針等の整備と確立が重要で
あり、草の根の努力だけでなく、政府と自治体の協力が不可欠です。LGBTQIの
人を含むすべての人にとって快適な生活が送れるような制度の構築が期待され
ます。

                                        (シドニー事務所調査員 Damian)

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【テーマ記事】東南アジアにおけるLGBT問題と文化的多様性
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LGBTの権利拡大は世界的な動きと言えるでしょうか?欧米や日本の状況を見て
いるとそのように感じられるかもしれません。しかし、ここ東南アジアでは、
LGBTの問題は日本以上にセンシティブであると言えます。

先日、インドネシア空軍の担当者が「モラルに反する行為をしたすべての兵士
は追放された」とツイートしたのに対し、一人のフォロワーが「LGBTはどうな
るのか?」と返信したことから、炎上しました。空軍の担当者はLGBTを「セン
シティブ」としながらも、「軍隊には強く、心も体も健康な人間が必要」とし、
一貫してLGBTを認めない姿勢でした。

また、マレーシアのトレンガヌ州が、トランスジェンダーの女性を対象にコン
バージョン・セラピー(※)を実施する計画を明らかにし、大きな議論に発展
しました。

インドネシア空軍や、トレンガヌ州の例でも、イスラム教の戒律が大きく影響
しています。インドネシア空軍担当者は「同性間での性行為は罪ではないか?」
と訴え、トレンガヌ州も「セラピーには医療と心理、宗教の専門家が関わって
いる」と発言しています。

これらの例は、単純に人権侵害であると批判して良い問題なのでしょうか。宗
教を個人的にも社会的にも拠り所とする彼らの文化や価値観を否定しているこ
とにならないのか?それぞれの国に尊重すべき歴史や伝統的な文化があること
を考えると、本当に難しい問題であり、我々も活動するにあたって留意する必
要があります。

しかし、こういった問題について発言することさえ難しかった時代から比較す
ると、少しずつですが変化してきていると言えるかもしれません。

(※)コンバージョン・セラピー 性的指向の転換を目的とする治療法


                                  (シンガポール事務所所長補佐 杉田)

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【REPO】クレアレポート『テーザー銃について』のご紹介
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今回紹介するクレアレポートは、
平成29年9月25日に発行した『テーザー銃について』です。

アメリカでは、犯罪に銃火器が使用され、事件解決のため止む無く犯人が射殺
される事件が少なくありません。一般市民を守るためには仕方のないと言う声
もありますが、凶悪な犯罪者でも銃の犠牲となる人間を出来るだけ少なく留め
るべきという声もあります。

そのような中アメリカでは、相手を傷つけることなく、電気ショックにより一
時的に無力化することができるテーザー銃の活用が進んでいます。本レポート
では、テーザー銃の豊富な活用事例や筆者自らテーザー銃の電気ショックを受
ける訓練に挑戦した時の体験談等について記載しておりますので、興味の湧か
れたかたは是非ご一読ください。

本レポートは以下URLよりご覧いただくことができます。
< https://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/452.pdf >

このほかにも、多くのクレアレポートをクレアホームページに掲載しておりま
すので、ぜひご覧ください。
< https://goo.gl/2557xh >                 

                            (企画調査課)
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