CLAIRメールマガジンバックナンバー
vol.373「英国の移民制度の規制強化のゆくえ」
___________________________________ ■□■ □■□ CLAIRメールマガジン vol.373(2025年9月12日) □■□ 「英国の移民制度の規制強化のゆくえ」 ■□■  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ≪CLAIRからのお知らせ≫ 【INFO】(ロンドン事務所)オンラインセミナー「英国の公共空間デザインから学ぶ市民参画」開催のお知らせ 【INFO】(一般社団法人JP-MIRAI)産業課・国際課の皆様向け!JP-MIRAI外国人労働者受入れに関するセミナーシリーズ 【INFO】(国立国会図書関西館アジア情報課)令和7年度アジア情報研修のご案内 ≪海外事務所コラム≫ 【ロンドン事務所】英国の移民制度の規制強化のゆくえ 【パリ事務所】「泳げるセーヌ川」を通じた持続可能な都市づくり 【シンガポール事務所】シンガポール独立60周年!現地の一体感と政府の取り組み 【ソウル事務所】韓国政府の消費刺激策「民生回復消費クーポン」 【シドニー事務所】カード決済手数料ゼロへ?豪州で廃止への流れ 【北京事務所】屋根の上の小さな守り神~中国建築の魅力「走獣」をご紹介~ 【ニューヨーク事務所】深刻化する空港混雑:ニューヨークで進む制度緩和と運用見直し ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■CLAIRからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ 【INFO】(ロンドン事務所)オンラインセミナー「英国の公共空間デザインから学ぶ市民参画」開催のお知らせ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ クレアロンドン事務所では、幅広い分野で活躍されている方々を講師に招き、欧州における「状況」「ニーズ」「考え方」などの情報をお届けしております。 今回は、都市計画や環境政策、地域活性化等の分野でコンサルタントとしてご活躍されている、グローバルリサーチ代表の鍋島紀美代氏をお迎えし、英国の公共空間デザインと市民参画をテーマにご講演いただきます。 英国では、都市計画制度の一環として、すべての開発において、市民参加の機会が提供されています。特に、不特定多数の一般市民が利用できる公共空間のデザインにおいて、実際の利用者となる市民がその計画に参画することは重要です。 本講演では、どのように市民参加が行われているのか、具体的な実例を通じてそのプロセスを紹介します。 この機会をお見逃しなく!皆様のご参加をお待ちしております。 日 時:2025年9月25日(木)午後5時~6時(日本時間)(午前9時~10時(英国時間)) 配 信:Zoom 講 師:グローバルリサーチ代表 鍋島紀美代(なべしまきみよ)氏 申込方法:下記登録フォームよりお申込ください < https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_v1Xb69VhTcGOE0T-v-PvmQ > (お問い合わせ先) 一般財団法人自治体国際化協会ロンドン事務所 粟田 E-mail:mailbox@jlgc.org.uk ___________________________________ 【INFO】(一般社団法人JP-MIRAI)産業課・国際課の皆様向け!JP-MIRAI外国人労働者受入れに関するセミナーシリーズ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 国内の深刻な労働人口不足に対応するため、外国人労働者の受入れ拡大が見込まれており、各自治体におかれましても、優良な人材確保と地域への定着に向けた様々な取組みを行われていることかと思います。JP-MIRAIでは、外国人労働者の適正な受け入れと共生社会の実現に向け、自治体の皆様にもご活用いただけるセミナーを開催しています。ご関心のある回に是非ご参加ください。 ■「技人国の適正なリクルートと雇用を考える」(外国人雇用協議会 共催) 日 時:2025年9月25日(木)13:00-14:30 テーマ:在留資格「技人国」 講 師:朝日新聞 織田 一 氏、杉田 昌平 弁護士 申込み:< https://jp-mirai.org/jp/events-ja-jp/20250826/ > ■育成就労の主務省令の検討動向を含めた最新動向セミナー 日 時:2025年10月7日(火)16:00-17:15 テーマ:主務省令の解説及びJP-MIRAIとの関連性説明 講 師:杉田 昌平 弁護士 申込み:< https://jp-mirai.org/jp/events-ja-jp/20250903/ > (お問い合わせ先) 一般社団法人JP-MIRAI(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム) E-mail: info@jp-mirai.or.jp ___________________________________ 【INFO】(国立国会図書関西館アジア情報課)令和7年度アジア情報研修のご案内  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ アジア情報の収集・提供に関するスキル向上を図るとともに、アジア情報関係機関間の連携を深めることを目的として、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所との共催による令和7年度アジア情報研修を実施します。 ■テーマ: 西アジアを調べる―国際機関の文書と現地の統計から紛争をみる― ■日時: 令和7年12月12日(金)午前9時30分から午後4時30分 *終了後、アジア経済研究所図書館見学を開催します(希望者のみ)。 ■会場: 日本貿易振興機構アジア経済研究所 ■対象: 各種図書館、調査・研究・教育機関、中央省庁・地方公共団体に所属する方、大学院生 等 *主に日本語・英語の情報源を扱います。 ■定員: 20名(原則、1機関につき1名)。応募多数の場合は調整します。 ■参加費: 無料。ただし、旅費等は受講者にご負担いただきます。 ■内容: *受講者の方には、事前課題にご解答いただきます。 *PCを用いた実習を行います。各自ノートPCをご持参ください(会場で公衆無線LAN(Wi-Fi)を利用できます)。実習の成果として、調査結果の発表を行っていただきます。 【科目1】「国際機関の文書を使ってパレスチナの紛争を調べる」(国立国会図書館関西館アジア情報課) 【科目2】「西アジアの紛争と統計」(アジア経済研究所学術情報センター) ■申込締切: 令和7年10月9日(木) *参加の可否は、令和7年10月17日(金)までにお知らせします。 ■申込方法: ※内容の詳細、申込方法は、次のページをご覧ください。 < https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/asia/workshop_asia_workshop2025 > (お問い合わせ先) 国立国会図書館 関西館 アジア情報課 TEL:0774-98-1371(直通) E-mail:ml-k-asia(at)ndl.go.jp (at)は半角記号の@に置き換えてください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■海外事務所コラム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ 【ロンドン事務所】英国の移民制度の規制強化のゆくえ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 近年、英国では、移民制度の規制強化が強力に推進されています。 移民制度の規制強化の動きは、2023年12月に、当時の保守党政権が、移民数を大幅に削減し移民制度の悪用を抑制するための計画を発表したことに端を発します。この計画の目的は、企業に対し、海外の安価な労働力への依存をやめ国内労働力への投資を促すことや、NHS(国民保険サービス)のような公共サービスを維持するために移民に相応の負担をさせることにありました。 その後、2024年7月に労働党へ政権交代した後も、移民制度の見直しは継続的に推進されています。2025年5月には、移民制度の規制強化に関する白書「Restoring Control over the Immigration System」が公表され、Keir Starmer(キア・スターマー)首相は、英国社会における移民の貢献と必要性を認めながらも、移民制度の見直しの必要性について改めて強調しました。 白書では、労働制度や留学制度の見直し、移民制度における規制の厳格化などに焦点が置かれており、外国人労働者が取得する主要なVISAであるSkilled Worker visas取得のための所得や学位、英語力に関する要件の引き上げや、英国の大学を卒業した外国人留学生が、卒業後に就職活動などを行うために取得できる卒業VISAの滞在可能期間の短縮のほか、外国人の労働者や留学生の被扶養家族としてVISAを取得する場合の英語要件の新設などの方針が示されました。 この一連の見直しに対する英国内の反応はさまざまで、必ずしも歓迎する声だけではありません。 社会福祉の分野では、Skilled Worker visasの取得要件が厳しくなることで、国外からケアワーカーの採用ができなくなり、深刻な人材不足につながることが懸念されており、社会福祉分野に特化したメディア「Community Care」の行った社会福祉分野の専門職2,900人を対象とした世論調査によると、71%がこの懸念に同意しています。 また、高等教育分野に関しては、英国の主要な全国紙「Guardian」のウェブ記事では、政府が検討している卒業生VISAの滞在期間を現行の2年から18カ月に短縮する案について、外国人留学生にとって英国の留学先や就職先としての魅力を損なう恐れがあると指摘されています。 このように、政府主導で強力に推進されている移民制度の規制強化については、英国内の意見は一様ではなく、今後の展開を注視していきたいと思います。 (ロンドン事務所 所長補佐 粟田) 【参考文献】 < https://www.gov.uk/government/news/home-secretary-unveils-plan-to-cut-net-migration > < https://www.gov.uk/government/publications/restoring-control-over-the-immigration-system-white-paper > < https://www.gov.uk/graduate-visa > < https://www.communitycare.co.uk/2025/05/29/ending-international-recruitment-care-workers-readers-take/ > < https://www.communitycare.co.uk/about-us/ > < https://www.theguardian.com/uk-news/2025/may/12/businesses-starmer-immigration-crackdown-social-care > < https://www.theguardian.com/about > ___________________________________ 【パリ事務所】「泳げるセーヌ川」を通じた持続可能な都市づくり  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ パリの夏の風物詩「パリ・プラージュ」(パリ・ビーチ)。2002年から始まったこの夏のイベントは、セーヌ川沿いに人工ビーチ(プラージュ)を作り、市民や観光客が憩う場を提供してきました。ただし、これまでは川の中にまで入ることはできませんでした。 セーヌ川での遊泳は、1923年に衛生上の理由から公式に禁止されましたが、実際にはその後も川で泳ぐ人の姿は見られました。1960年代までは非公式に遊泳が行われていましたが、水質の悪化に伴って次第に泳ぐ人はいなくなりました。 しかし、今年の夏、その状況に大きな変化が訪れました。パリ市は、昨年のオリンピック開催に合わせて、約14億ユーロ規模のプロジェクトによってセーヌ川の水質改善を進めてきました。2024年5月に運用が始まった、約5万平方メートルの容量を持つ「アウステルリッツ雨水調整池」は、大雨が降った際に直接汚水が川に流れ出ることを防ぎ、また、調整池に流れ込んだ水は適切に処理された上で川へ戻されます。 こうした取組により、昨年のパリ五輪では、セーヌ川がトライアスロン競技の公式スイム会場として使用されました。そして、2025年の今年、1923年に遊泳が禁止されて以来、実に102年ぶりに市民による遊泳が解禁されることになりました。 今年は7月5日から8月31日までの間、セーヌ川沿いに3つの水泳場がオープンしました。週末には入場制限がかかるほどの賑わいぶりで、多くの人々が水遊びや日光浴を楽しむ姿が印象的でした。 年々暑さが厳しくなる中、パリ市は泳げるセーヌ川の実現を通じて、都市と自然との新たな関係を築こうとしています。川を再生する取組は、持続可能な都市づくりと人間らしい暮らしの調和を目指すパリ市からの力強いメッセージだと感じました。 (パリ事務所 次長 蛭田) 【参考文献】 < https://www.paris.fr/paris-plages-2025 > < https://www.paris.fr/pages/se-baigner-dans-la-seine-en-2024-et-au-dela-6935 > < https://www.paris.fr/pages/baignade-en-seine-toutes-les-questions-que-vous-vous-posez-31533 > < https://www.paris.fr/pages/baignade-dans-la-seine-comment-sera-mesuree-la-qualite-de-l-eau-31118 > ___________________________________ 【シンガポール事務所】シンガポール独立60周年!現地の一体感と政府の取り組み  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ナショナルデー」とは、1965年8月9日にマレーシアから独立したシンガポールの建国を祝う日です。パラシュート部隊の演技や空軍による航空ショー、会場では壮大なパレードや国歌斉唱、夜には花火と、国民が一体となる、毎年の一大イベントです。 特に今年2025年は、シンガポールが独立してから60周年を迎える節目の年であり、まち全体が特別な熱気に包まれていました。今回は、この記念すべき年に実施された政府の取り組みの中から、象徴的なものを三つご紹介します。 ●国民の心に響く歌 ― ナショナルデー・ソングの象徴的存在 1984年から毎年発表されているナショナルデー・ソング。中でも1998年の「Home」は、シンガポール人にとって特別な存在で、聞くと涙が出るほど心に響くそうです。今年の曲は「Here We Are」。やさしいメロディの中に力強さが感じられる一曲で、地下鉄の構内や駅前広場など、まちの至る所で流されました。 ●国民とともに創る記念ロゴ ― 「2025ロゴ」に込められた意味 今年の公式ロゴは、「60」と「GO」を組み合わせたデザインに、国家の理念を象徴する五つの星を上向きの矢印で表現しています。教育者や芸術家など25名の市民が、それぞれの思いや物語を込めて共創したもので、「25 Stories, 1 Logo(25の物語、ひとつのロゴ)」をテーマに、多様性と一体感を形にした取り組みを行いました。 ●国民とともに描く未来 ― 「Our Singapore Wish」プロジェクト 「Our Singapore Wish」は、誰でもオンラインで参加できる記念キャンペーンです。シンガポールの未来への願いを投稿したり、アバター「SGMoji」を作成・共有することで、自分の思いを表現できます。多様な人々の声を集め、未来を共に描くという新しい形の参加型企画です。 この他にも、各地でさまざまなイベントが開催され、まち全体が一体感に包まれていました。 (シンガポール事務所所長補佐 吉岡) 【参考文献】 < https://www.ndp.gov.sg/ > ___________________________________ 【ソウル事務所】韓国政府の消費刺激策「民生回復消費クーポン」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 韓国政府は、国民生活と経済の回復のための措置として、消費の活性化と小規模事業者等の売上拡大を目的に、7月21日より「民生回復消費クーポン」の申請受付を開始しました。 このクーポンの支給対象は全国民とされていますが、外国人であっても永住資格がある場合や配偶者が韓国籍の場合など、一定の要件を満たす場合には申請が可能となっています。支給額は低所得の方ほど支給額が多くなるように設計されており、1人当たり15万ウォンから55万ウォンであり、オンライン及びオフラインのどちらでも申請が可能で、申請開始からわずか10日間で、すでに全国民の90%が申請完了したと報じられています。 支給手段は、クレジットカードやアプリのポイント、商品券やプリペイドカードなど様々な方法で支給が受けることができ、国民にとって申請も利用もしやすいよう配慮されていることがうかがえるものとなっています。 このプリペイドカードの支給に際しては、支給額ごとに異なる色のカードを発行することとした自治体があり、この結果、カード所持者の所得水準が一目でわかってしまうこととなりました。これに対し、李在明大統領は「人権感受性の非常に足りない措置」とし、直ちに是正するよう強く指示しました。このことは韓国内で大きく報道され、自治体でも直ちに是正措置が取られる事態となりました。 このクーポンの発行に関して、筆者の周りの韓国人の反応は総じて好意的ではありますが、結果として、国民の消費行動が刺激され、韓国経済の好転材料となるのか、引き続き注視していきたいと思います。 (ソウル事務所 所長補佐 中野) 【参考文献】 < https://www.korea.kr/ > ___________________________________ 【シドニー事務所】カード決済手数料ゼロへ?豪州で廃止への流れ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ オーストラリアでは、街角のカフェやレストランでクレジットカードやデビットカードを使うと、多くの場合、0.5~1.5%ほどの「サーチャージ(追加手数料)」が上乗せされます。現金払いのほうがお得な気もしますが、現金非対応の店舗が多く、キャッシュレス決済が当たり前の生活環境です。 こうした中、オーストラリア準備銀行(RBA)は2025年7月、主要カード(Visa、 Mastercardなど)でのサーチャージ禁止と、加盟店が支払うインターチェンジ手数料の上限引き下げを提案しました。消費者と中小事業者を合わせて年間約12億豪ドル(約1,200億円)のコスト削減が期待されています。 RBAの見通しでは、小規模事業者の約90%が恩恵を受けるとされますが、一方で価格転嫁や利益圧迫の懸念も指摘されています。また報道によれば、Apple PayやBNPL(Buy Now Pay Letter=後払いサービス)などのモバイル決済分野は現行案では触れられておらず、対象外とされています。EUやイギリスにおいても、数年前に大半のサーチャージが禁止されており、オーストラリアにとっては先行事例となり得ます。 Mastercardによるオーストラリアにおける調査では、69%の人々がサーチャージ禁止に賛成、85%の人々が手数料は事業者負担とすべきと回答しており、消費者の多くが企業による顧客へのサーチャージの転嫁を禁止すべきと考えています。報道では、今回の改革について2026年7月以降の実施が見込まれています。 日本でも、事業者がクレジットカード会社に3~5%程度の加盟店手数料を支払っており、飲食業界では5%を超えることもあります。近年は自治体でも公共料金・税金のキャッシュレス納付が増えており、2024年4月時点で22自治体がオンライン手続きを通じたクレジットカード納付に対応しています。 日本では、コロナ禍を経て、キャッシュレス決済の比率が高まってきている一方、特に中小・小規模事業者において、初期費用や手数料負担への懸念からキャッシュレス決済の導入が遅れており、キャッシュレス決済のさらなる推進が課題となっています。オーストラリアにおける今回の動向は、今後の参考になりそうです。 (シドニー事務所 所長補佐 棟方) 【参考文献】 < https://www.rba.gov.au/media-releases/2025/mr-25-19.html > < https://theconversation.com/no-more-card-surcharges-what-the-reserve-banks-proposed-changes-mean-for-your-wallet-261165 > < https://www.news.com.au/finance/money/still-cheaper-than-cash-one-fee-australians-are-tired-of-paying/news-story/12492cfb479e3ccd12f09952628d527d > < https://www.thenewdaily.com.au/finance/consumer/2025/07/15/rba-ban-credit-debit-charges > < https://www.digital.go.jp/news/001b85de-d303-4d1f-b732-f04fffc22c7c > ___________________________________ 【北京事務所】屋根の上の小さな守り神~中国建築の魅力「走獣」をご紹介~  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 中国の伝統建築の屋根の上に、小さな生き物たちが列をなしているのをご存知ですか?これらは「走獣(そうじゅう)」と呼ばれる特別な飾りで、単なる装飾ではなく、建物を守る大切な役割を担っています。 走獣の歴史は古く、当初は屋根の瓦を固定する実用的な役割もありましたが、時代とともに装飾性と象徴性が強まりました。 北京の故宮(紫禁城)の走獣は最も有名です。特に太和殿の屋根には10体もの走獣が並んでいます。先頭には仙人が座り、その後ろに龍、鳳凰、獅子などが続きます。面白いのは、建物の重要度によって走獣の数が変わることであり、皇帝が使う重要な建物ほど多くの走獣が飾られているそうです。 故宮の太和殿以外にも、北京天安門に9体、北京鼓楼に7体、遼寧省瀋陽故宮に5体、河南省少林寺にも5体の走獣があります。7体以上の走獣が並ぶ建物は稀で、多くの建物は3体または5体が並んでいます。 伝統的な走獣は今でも中国の人々から愛されており、土産物としてミニチュアフィギュアや、走獣のデザインを使ったTシャツ、マグカップなども販売されています。 (北京事務所 所長補佐 白木) 【参考文献】 < https://www.dpm.org.cn/lemmas/241413.html> ___________________________________ 【ニューヨーク事務所】深刻化する空港混雑:ニューヨークで進む制度緩和と運用見直し  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 米国では国土の広さから、州をまたぐ長距離移動において航空機の利用が主流となっています。ニューヨーク周辺にはジョン・F・ケネディ(JFK)、ラガーディア(LGA)、ニューアーク(EWR)という3つの主要空港があり、2024年の旅客数はJFK空港で6,330万人、LGA空港で3,350万人、EWR空港で4,890万人にのぼります(※1)。 しかし近年、これらの空港で飛行機の遅延や欠航が相次いで発生しており、航空インフラの運用体制が問題視されています。 特にEWR空港では、今年4月から5月にかけて連日100件以上、ピーク時には1日あたり500件を超える便が遅延・欠航する事態となりました。原因として、航空管制センターにおける通信障害、複数の管制官が精神的ストレスを理由に休職し人員が不足したこと、さらに滑走路工事による離着陸枠の制限などが挙げられています。これを受け、主要運航会社であるユナイテッド航空は、同年5月、安全確保を理由に1日35便を削減するといった運航制限を実施しました。同社CEOは「FAA(連邦航空局)の構造的問題が限界に達した」と発言しており、長年続く人員不足への対応の遅れが今回の出来事で改めて浮き彫りになったといえます。 また、JFK・LGA空港においても同時期に悪天候に伴う遅延が相次いでおり、2025年夏の欠航率はEWRが6.6%、LGAが6.2%、JFKが4.7%と、全米平均の2.2%を大きく上回る結果となりました。コロナ前の2019年と比べても、当時の欠航率はEWRが3.1%、LGAが2.9%であり、倍以上に増えていることが分かります。 こうした状況を受け、FAAは7月、これらの空港におけるスロット使用率要件の緩和措置を2026年10月24日まで延長する方針を発表しました(※4)。これは、もともと管制官の人員不足を受け2023年から導入されていた暫定措置であり、航空会社に対して通常80%以上のスロット使用を求めるところ、最大10%の未使用を許容するものです。さらに、FAAは2025年中に新たに2,000人の航空管制官を採用する計画も示しており、制度と運用の両面からの改善が進められています。 米国にはAmtrakと呼ばれる長距離鉄道や長距離バスなどの移動手段もありますが、鉄道網の整備が進んでいるのは北東部など一部地域に限られ、移動効率の観点からも航空機が依然として主力の交通手段である状況に変わりはありません。今回の制度緩和と運用見直しが今後の米国の交通インフラ改善にどのように寄与するのか、引き続きその動向が注目されます。 (ニューヨーク事務所 所長補佐 岡本) 【参考文献】 < PORT AUTHORITY'S COMMERCIAL AIRPORTS RECORD BUSIEST YEAR EVER FOR SECOND CONSECUTIVE YEAR > < US Airports JFK, DCA, LGA Face Surge in Summer Flight Cancellations > < United States Airport Statistics & Travel Data > < Statement on Slot Usage Flexibility at Airports in the New York City Area | Federal Aviation Administration > 【編集・発行】一般財団法人自治体国際化協会(企画調査課) 〒102-0083 東京都千代田区麹町1-7 相互半蔵門ビル7F HP:< https://www.clair.or.jp/ > TEL:03-5213-1722 FAX:03-5213-1741 Copyright(C) 2025 Council of Local Authorities for International Relations.All Rights Reserved. 許可なく転載することを禁じます。 配信解除は、下記の登録解除フォームにより手続きをお願いします。 < https://www.clair.or.jp/j/mailmagazine/index.html#unsubscribe >
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