コラム

第7回 インターカルチュラル・シティ・マイルストーン・イベント

山脇啓造

2017年11月26日と27日の二日間、ポルトガル共和国の首都リスボンで、欧州評議会が進めるインターカルチュラル・シティ・プログラムの10周年記念となる国際会議「包摂的な移民統合と多様性の利点のための都市政策」が開かれました。この会議には、欧州の自治体関係者を中心に、22カ国、56都市から300名近くが集まりました。

会議の初日は、バタイニ=ドラゴーニ欧州評議会事務次長、メディーナ・リスボン市長、カブリータ・ポルトガル内務大臣の開会挨拶に始まり、オーストラリアの多文化共生の専門家、リンダ・フォード氏による基調講演がありました。そのあと、パリやオスロ、アマドラ、リメリック、ヌーシャテル、メキシコ・シティの副市長や議員など自治体関係者やアイルランド法務大臣が参加する二つのパネル討論がありました。

午後になると、参加者は政治家とそれ以外の参加者の二つのグループに別れました。自治体の首長や議員などと国の大臣や議員など、あわせて約40名が、包摂的統合政策ラボに参加しました。同ラボはインターカルチュラル政策に関する国と自治体の対話の場として用意されたもので、この10年間の間に欧州全体の自治体に広がったインターカルチュラル政策が国レベルでも展開されることをめざしたものです。このラボでは、移民統合政策は移民の人権を保障するものでなければならないことや国と自治体の間でのより活発な政策対話が必要であることについて合意しました。

一方、一般の自治体職員などは、反うわさ研修とフィールドワークを兼ねた8つのワークショップに参加しました。反うわさの取り組みは、移民に関するネガティブなうわさを打ち消すためにバルセロナで始まり、欧州評議会のサポートによって、欧州の自治体に広がりつつあり、約30名が参加しました。一方8つのワークショップは、それぞれ雇用や起業、安全、教育、社会サービス、都市計画などのテーマを掲げ、テーマに関連するリスボン市内の団体を訪ね、そこで複数の参加者がそれぞれの取り組みを報告する内容になっていました。私は、教育のワークショップに参加し、アガハーン財団というイスラム系の国際NGOが推進しているインターカルチュラル教育に取り組む学校の全国ネットワークについて学ぶとともに、浜松市の不就学ゼロ作戦など教育の取り組みについて報告しました。

会議の二日目は、インターカルチュラル・シティの生みの親とも言えるフィル・ウッド氏によるインターカルチュラル・シティの10年間の歩みを振り返る講演があり、それに対して4人の専門家が、難民問題や移民統合政策などの観点からコメントしました。その後、ボッチェルカ、ベルゲン、エアランゲン、ルブリンの市長や副市長らによるパネルディスカッションが行われました。昼食後、参加、反差別、社会的イノベーション、ポピュリズム、ジェンダー平等の5つのワークショップが行われ、自治体の取り組みをアピールするビデオが紹介された後、ワークショップの報告があり、最後に国との連携を深めることや人権尊重の観点に立った移民統合を進めることを謳った「リスボン宣言」を採択して、閉会となりました。

私は、2010年からインターカルチュラル・シティ・プログラムに参加するようになり、2013年にダブリンで開かれた5周年記念の会議にも参加しましたが、今回の会議では、過去10年間で会員都市が着実に増え、インターカルチュラル政策は影響力を増していますが、昨今の欧州難民危機や欧米諸国での反移民の政治勢力の拡大を考えると、決して楽観できない状況であるとの共通認識を感じました。

今回の会議では、2012年の1年間、オックスフォードとブリュッセルに拠点を置いて欧州の移民統合政策やインターカルチュラル・シティの研究をした時に知り合った多くの仲間と再会することができましたが、今年10月に浜松市がプログラムに加入したことで、今回の会議に「オブザーバー」でなく、「当事者」として参加できることに感慨を覚えました。なお、今回の会議には、国際交流基金の事業として、浜松市と名古屋市および自治体国際化協会の職員あわせて3名も参加しました。

インターカルチュラル・シティ・マイルストーン・イベントのウェブサイト
包摂的統合政策ラボ
リスボン宣言
インターカルチュラル・シティ・マイルストーン・イベント(5周年)

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