山脇 啓造
日本における多文化共生社会の形成に関連するニュースを選びました。
外務省が国際フォーラム「共生社会の実現に向けた国内外の自治体連携」を開催(2月)
外務省と国際移住機関の共催で、国際フォーラム「共生社会の実現に向けた国内外の自治体連携」が東京都千代田区にてハイブリッド形式で開催されました。欧州評議会のインターカルチュラル・シティ、豪州のウェルカミング・シティ、そして韓国の全国多文化都市協議会の取組みが紹介された後、静岡県、浜松市、外国人集住都市会議(総社市)と自治体国際化協会の担当者によるパネル討論がありました。
外国人との秩序ある共生社会推進室が設置(7月)
2025年7月15日に内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」として設置されました。これは、外国人材の受け入れ拡大と社会の安定化を図るため、広義の外国人政策の司令塔機能を持つ省庁横断的な組織として位置づけられています。
参議院選挙で外国人政策が主要争点となり、「規制」を掲げる政党が支持を拡大(7月)
参議院選挙において外国人政策が主要争点となり、「規制」を掲げる政党と「共生」を掲げる政党の対立が鮮明になりました。「日本人ファースト」を掲げる新興政党を中心に、外国人規制を公約に掲げる政党が支持を広げました。
全国知事会が「青森宣言」で排外主義を否定し、多文化共生社会を提唱(7月)
全国知事会議が青森市で開催され、「排他主義、排外主義を否定し、多文化共生社会を目指す」ことを謡う「青森宣言」が採択されました。参議院選挙後の社会状況を踏まえた、全国の知事からの明確なメッセージとなりました。全国知事会は11月にも「多文化共生社会の実現を目指す全国知事の共同宣言」を採択しました。
指定都市市長会が「外国人住民との共生社会の実現」に向けて国に要請(8月)
全国の20指定都市が参加する指定都市市長会が、「外国人住民との共生社会の実現に向けた指定都市市長会要請」を国に行いました。内閣府への司令塔機能の設置、地域日本語教育の制度設計、外国人労働者向け日本語教育カリキュラムと体制の構築などを求めました。
静岡県がインターカルチュラル・シティ・プログラムに加盟(8月)
静岡県が欧州評議会のインターカルチュラル・シティ・プログラムに加盟しました。日本では浜松市に続いて二つめの加盟自治体となりますが、広域自治体としてはアジア太平洋で初となります。静岡県は鈴木康友知事のもと、全国一の多文化共生県をめざしています。12月には加盟記念の国際シンポジウムを開催し、韓国安山市や豪州ソリズベリー市との交流を深めました。
鈴木馨祐法相が外国人受入れの在り方の見直しを掲げる資料を公開(8月)
鈴木馨祐法務大臣(当時)は、8月に「外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理」と題した資料を公表しました。外国人が総人口の10%を占める可能性を視野に、外国人受入れの基本的な在り方について、中長期的かつ多角的な検討の必要性を提起しました。
日本語教育推進法の基本方針が5年ぶりに改定(9月)
2019年に公布・施行された日本語教育推進法に基づき、2020年に閣議決定された「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」(閣議決定)が5年ぶりに改定されました。「日本語教育の参照枠」の活用をはじめ、認定日本語教育機関の活用や登録日本語教員の活躍など、今後5年間の政府の日本語教育推進の具体的な施策が示されました。
高市早苗新政権が発足し、外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣を新設(10月)
2025年10月に自民党総裁に就任した高市早苗氏が日本維新の会を連立与党に迎え、首相に就任し、新政権が発足しました。新設された外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣には小野田紀美氏が就任しました。11月に高市首相は第1回外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議に出席し、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けた指示を出しました。
外国人集住都市会議が岡山県総社市で開催(11月)
外国人住民の多い市町の首長からなる外国人集住都市会議が、岡山県総社市で開催されました。今回初めて、会員都市以外の全国の12市町の首長も登壇しました。パネル討論は「企業等の日本語教育」と「多文化共生新時代」をテーマに行われました。「多文化共生基本法の制定」や「外国人受入れの将来ビジョンの策定」を要望する「そうじゃ宣言」を採択して、会議は幕を閉じました。
<番外編>
入管庁が不法滞在者ゼロプランを公表(5月)
出入国在留管理庁は、在留資格が定める期間を超えて滞在する外国人を速やかに退去強制するため、「入国管理」「在留管理・難民審査」「出国・送還」の3段階で対応策を整理した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を公表しました。特に長期滞在者や子どもの送還に対して、人権団体などから批判が起きました。
国家資格「登録日本語教員」が1万人を突破(11月)
日本語教育機関認定法施行から1年が経過し、日本語教員試験に合格し実践研修を修了した「登録日本語教員」資格保有者が初めて1万人を超えました。登録日本語教員は認定法ポータルにマイページを持つことができ、来年から日本語教育を希望する企業や学校などとのマッチングシステムも始まります。