コラム

第60回 「社会包摂プログラム」の構想~2026年は日本の統合政策元年となるか~


山脇 啓造

 202512月、政府・与党が「社会包摂プログラム(仮称)」の創設検討に入ったことが報じられました。中長期在留外国人が日本語や日本の制度を学ぶプログラムを整備し、在留審査の考慮要素とすることで、地域社会との摩擦を防ぎ、排外主義の高まりを抑える狙いがあるようです。

 すでに約400万人の外国人住民が暮らす日本社会において、こうした動きが出てきたこと自体は、現実を直視した対応と言えるでしょう。重要なのは、このプログラムがどのような前提と設計のもとで制度化されていくかです。社会包摂を掲げる以上、それは外国人に一方的な適応を求める制度であってはならず、同時に、自治体や地域社会が直面している現実の負担を軽減する実効性を備えていなければなりません。

 本稿では、諸外国の経験が示す教訓と日本自身の歴史的経験を踏まえ、どのようなプログラムが望ましいか、要点を提示したいと思います。

諸外国の経験が示す教訓

 欧州諸国の経験は統合政策、特に統合プログラムの重要性を示しています。

 ドイツは1960-70年代、「ガストアルバイター(出稼ぎ労働者)」として受け入れたトルコ系移民に対し、「いずれ帰国する」との前提で統合政策を怠りました。結果として世代を超えた社会的分断が生じ、2005年になってようやく統合コース(Integrationskurs)を導入しました。現在では600時間の語学コースと100時間のオリエンテーションコースを連邦移住難民庁(BAMF)が全国的に標準化して提供しています1。統合コースに加え、労働市場への統合を目的とした職業別語学コース(最大700時間)も整備されています。

 フランスは共和国の理念に基づき、出身国や民族を問わず共和国市民への「同化」を求めてきましたが、北アフリカ系移民に対する雇用差別や住宅差別が続き、移民二世・三世は郊外(banlieue)の集合住宅に集住しました。そして、機会の不平等と疎外感が蓄積し、2005年の郊外暴動へとつながりました。なお、フランスも2003年から受入・統合契約(CAI)を導入し、語学研修と市民講習を提供しています(2016年に共和国統合契約CIRに移行)

 一方、カナダの英語教育プログラムLINC(Language Instruction for Newcomers to Canada)は、無償で柔軟性が高く、オンラインや夜間クラスなどで働きながら受講できる仕組みを整え、統合政策が移民の就労と社会参加を支える基盤となっています。定住支援プログラム(Settlement Program)では言語だけでなく、就労支援、資格認定、メンタリングなど包括的なサポートを提供しています。

 韓国の社会統合プログラムも、アジアのモデルとして注目されています。2009年に導入されたこのプログラムは、5段階のレベル別構成で、韓国語・韓国文化課程(415時間)と韓国社会理解課程(100時間)で構成されています。韓国語教育だけでなく、韓国の歴史、文化、法制度、就労・創業支援なども含まれます2。修了すると永住権や帰化申請時に韓国語試験・面接が免除されるなど、明確なインセンティブが設けられています。

 これらの経験が示す教訓は明確です。出入国管理政策に偏り、統合政策への投資を怠れば、将来の社会的コストは何倍にもなるでしょう。治安対策、社会保障、教育現場の混乱、そして社会的分断の拡大を通じて、排外主義が広がりやすい環境を生み出すことになります。日本は今、社会的分断が拡大した後に対処するのか、それとも分断が深刻化する前に制度的な対応を整えるのかという選択に直面しています。

日本の統合プログラムの歴史

 実は、日本も統合プログラムの経験があります。日本には、インドシナ難民、中国帰国者そして条約難民等に対し、日本語教育と生活オリエンテーションを組み合わせた定住支援を実施してきた歴史があります。

 インドシナ難民への定住支援(19792005年度)では、1979年に難民事業本部(RHQ)が発足し、姫路、大和の定住促進センターなどで、日本語教育、職業訓練、生活オリエンテーションの統合プログラムを提供しました。多くの難民が自立して定住し、その子どもたちも日本社会で活躍しています。

 中国帰国者への定着支援(19842015年度)では、所沢の定着促進センターで集中プログラムを実施し、その後も地域の自立研修センターで継続支援を行いました。一定の日本語能力と生活基盤を持って地域社会に入ることができた帰国者は多くいます。

 また、条約難民(2006年~)、第三国定住難民(2010年~)、ウクライナ避難民等補完的保護対象者(2024年~)に対して、RHQ支援センターで6か月の定住支援プログラムを提供してきました3

 現在、インドシナ難民に対しては、RHQが生活相談やコミュニティ活動などの支援を行っています。中国帰国者についても、合宿型の定着・自立研修センターの閉所後も、各地域の支援・交流センターにおいて日本語学習や相談等の支援を継続しています。

 これらのプログラムから学べる教訓は明確です。第一に、集中的な初期支援の有効性です。6ヶ月程度の集中プログラムで生活の基礎を固めることの重要性を示す知見が蓄積されています。第二に、日本語教育と生活オリエンテーション、就労支援の一体的提供の必要性です。第三に、プログラム終了後の継続支援の重要性です。中国帰国者支援では、初期支援だけでは不十分で、地域での受け皿づくりと世代を超えた教育支援が不可欠であることが示されました。

 しかし、こうした貴重な経験は必ずしもこれまで注目されることはありませんでした。なぜなら、「難民」や「中国帰国者」という人道的配慮により受け入れた人々への定住支援という特別な位置づけであり、一般化が避けられてきたからです。受け入れ規模も小さく、「例外的措置」として埋もれてきたと言えます。

 なお、日本には定住外国人に対するプログラムもあります。厚労省委託で日本国際協力センター(JICE)が実施している「外国人就労・定着支援研修」は、2009年度に日系人就労準備研修として始まり、2015年度から現在の名称に変更され、定住外国人を対象に、職場で使う日本語と日本の職場文化や求職活動などについて一体的に学ぶ3つのレベル(各100時間)のプログラムとして全国各地で展開されています4

日本独自のボトムアップ型アプローチ

 実は、日本には自治体や市民社会が主導してきた独自の統合アプローチがあります。その特徴を示す三つのキーワードがあります。

 第一に、「多文化共生」です。1990年代後半以降、NPOから自治体へと広がった用語で、外国人住民と日本人住民が対等な関係を築こうとしながら地域社会を共に創るという理念です。2006年には総務省が「地域における多文化共生推進プラン」を策定し、全国の自治体に広がりました。そして、自治体国際化協会が多文化共生に取り組む全国の自治体を支援してきました。

 第二に、「やさしい日本語」です。1995年の阪神・淡路大震災を契機に開発されたこの手法は、複雑な日本語を外国人にも理解しやすい平易な表現に言い換えたり、書き換えたりするものです。現在では自治体やNPOの情報発信、災害時の緊急情報、医療・福祉分野など幅広く活用されています。多言語翻訳よりも迅速で柔軟性が高く、コストもかからず、日本人にとっても分かりやすいというメリットがあります。

 第三に、「外国人集住都市会議」です。2001年、日系ブラジル人が多く暮らす浜松市、豊田市など13都市が設立したこのネットワークは、自治体同士が課題を共有し、解決策を模索する場となってきました。その中で国への提言も行ってきました。外国人の子どもの教育、日本語教育、災害時対応など、現場の実践知が蓄積されています。

 これらの取り組みは、各地のNPO、国際交流協会、そして自治体が主導してきました。国に先駆けて地域レベルで統合政策の実践を積み重ねてきたのです。しかし、国レベルの制度として体系化されず、財政的な裏付けも限定的でした。

 今回の社会包摂プログラムは、こうした日本の50年近い蓄積、すなわち難民・帰国者支援という「トップダウンの例外的措置」と多文化共生に代表される「ボトムアップの地域実践」を組み合わせ、「例外」から「標準」へと転換する歴史的機会となるかもしれません。

社会包括プログラムの具体像

 では、具体的にどのようなプログラムが望ましいのでしょうか。日本には現在、2つの統合プログラムがあります。第一に、RHQの定住支援プログラムです。日本語教育572時間、生活ガイダンス120時間、就労支援を一体的に提供する6か月の包括型プログラムで、難民や第三国定住者の高い定着率を実現してきました。第二に、JICEの外国人就労・定着支援研修です。定住外国人向けに就労場面の日本語と職場習慣に特化したプログラムで、三つのレベル(100時間)に分かれます。

 社会包摂プログラムは、この2つのモデルを参考に、浜松市や鈴鹿市、総社市など先進自治体や国際交流協会・NPOの取り組みも盛り込み、組み立てるとよいでしょう。新規入国者にはRHQ型の包括プログラム、既に定住している外国人にはJICEの研修を就労特化プログラムとして全国で展開することで、多様なニーズに対応することができます。

 RHQの定住支援プログラムは合計692時間で、ドイツの統合コース(700時間)、韓国の社会統合プログラム(515時間)とほぼ同等の国際標準と言えます。社会包摂プログラムも、この実績を踏まえて、日本語教育550700時間 + 生活オリエンテーション150時間 = 合計700850時間とすることを提案します。

① 日本語教育の内容(550~700時間)
 
 4段階のレベル別構成で、日常生活から職場でのコミュニケーションまで段階的に習得します。就職希望者には、履歴書の書き方、面接での応答、職場での報告・連絡・相談など、JICEの外国人就労・定着支援研修で蓄積されたカリキュラムも参考にします。受講者の上達速度に応じて、日本語教育の時間は調整可能とします。既に一定の日本語能力がある人向けには一部免除の仕組みも必要です。

 プログラム修了後、修了を客観的に確認し、修了証に社会的信頼性を持たせるため、生活・就労場面に即した確認テストを実施します。ただし、それは選別や制裁を目的とするものではなく、複数回の受験や再受講を前提とした到達度確認として設計します。


② 生活オリエンテーションの内容(150時間)

 RHQ
のカリキュラムを基に社会講習を追加します。安全管理(防災・避難訓練、防犯、遵法教育、30時間)生活・健康(家計管理・貯蓄、銀行・ATM利用、買い物、季節に応じた衣類、健康管理、栄養・食事、地域交流、50時間)就職・学校(職場のルール・マナー、職場見学、履歴書作成・面接指導、学校制度、学校体験入学、社会保障制度、労働者の権利、40時間)、④日本社会(法制度、政治と行政、権利と義務、30時間)。

 座学だけでなく、RHQ方式の実践・体験型学習を重視します。職場見学、実際のスーパーでの買い物指導、公共交通機関の利用訓練、小学校の体験入学(子どものいる家族)、消火・避難訓練などを日々のプログラムに組み込みます。

③ 3分野の緊密な連携体制

 RHQのプログラムの特徴は「日本語教育×生活ガイダンス×就労支援」の3分野が緊密に連携している点です。日本語教師、生活ガイダンス講師、職業相談員が定期的に「情報交換会」を開き、受講者の日本語習得状況、仕事に関する情報提供の状況、職歴・希望を随時共有しながら、指導内容を検討し、個別ケースに対応します。この連携体制を社会包摂プログラムでも標準化するのが望ましいでしょう。就労支援の部分では、ハローワークと連携しながらキャリアカウンセリングや職場定着支援を行ってきたJICEの手法も参考にし、日本語教育と職業紹介・職場マッチングを一体的に設計します。

④ 受講形態の柔軟性

 RHQ方式の集中コース(6ヶ月、月-9:30-15:50、託児支援あり)は、新規入国者や難民に適しています。一方、既に就労中の外国人向けには、JICEが実施してきた夜間・週末コースやオンライン研修の運営ノウハウを活用し、仕事と両立可能な形で受講できるプログラムを整備することが望ましいでしょう。1-2年かけて柔軟に受講できる一般コース(夜間・週末、オンライン)も必要です。地方では巡回型プログラムも検討すべきでしょう。外国人を雇用する企業は、プログラム受講のために勤務調整をするなど協力する必要があります。

⑤ 実施主体と相談員体制

 RHQJICEの経験とノウハウを全国の実施機関(国際交流協会、認定日本語教育機関、外国人支援NPO)へ移転します。RHQ3省庁連携と相談員体制とJICE700人の登録日本語教員ネットワークと各地での実施経験を基盤に、全国標準のプログラムを展開します。各実施機関にはRHQ方式を参考にした相談員体制(外国人相談員、日本語教育相談員、職業相談員)を備え、母語通訳支援も提供します。プログラム修了後も継続的な相談体制を維持します。入管庁が育成している外国人支援コーディネーターには、こうした相談員としての活躍が期待されます。


制度設計のための6つの提言

 諸外国と日本の経験を踏まえ、以下の6点を提言したいと思います。

① 既存インフラを生かした段階的導入

 社会包摂プログラムは、RHQJICE、外国人集住都市会議会員都市等先進自治体や国際交流協会・NPOなど、既存の知見やインフラ、人材ネットワークを活用しつつ構築すべきです。また、認定日本語教育機関や登録日本語教員を有効活用することが重要なのは言うまでもありません。

 まず新規入国者を対象にパイロット事業として開始し、成果を検証しながら対象地域・在留資格を段階的に拡大することで、初期コストと現場の混乱を抑えつつ制度定着を図ります。初期段階では、企業による支援義務がない在留資格(定住者、日本人の配偶者等)の新規入国者から開始し、段階的に定住外国人全体に拡大します。一方、人口減少が進む日本社会においては、中長期的には在留資格を問わず日本で暮らす外国人住民全体を対象とする普遍的制度とすることが望ましいかもしれません。

② 受講の義務化と柔軟な受講体制

 一定の在留資格の外国人には受講を義務づけ、在留資格更新の際の考慮要素とすることが考えられます。ただし、ここで言う「義務化」とは、不履行に対して罰金や在留資格の取消しといった法的制裁を科すことではありません。あくまで、社会参加の前提となる基礎的知識へのアクセスを保障する制度的枠組みであり、修了証に社会的な価値を持たせる(就職、永住や帰化申請での加点など)といった受講修了へのインセンティブを設けることが望ましいでしょう。社会包摂プログラムは、労働者として権利を行使することや、生活上のリスクを回避すること、社会保障や教育制度を適切に利用することなど、実務的な知識と技能の習得を目的とします。このような性格づけを前提とし、受講義務は社会参加の前提条件を整える公共インフラとして位置づけます。

 義務化の一方で、参加費用を安価に設定し、さらに受講後には半額返金することで、受講修了のインセンティブとします。受講体制も柔軟にし、夜間・週末・オンライン併用、託児サービスの併設、地方では巡回型プログラムなど、実際に働いている外国人が受講できる仕組みが必要です。

 自治体にとって最も重要なのは、外国人住民が日本語や制度を十分に理解しないまま地域で暮らすことによる摩擦やトラブルを未然に防ぐことです。社会包摂プログラムは、在留資格を制限するための仕組みではなく、外国人が地域社会の一員として生活するための最低限の基盤を整える公共インフラとなることが期待されます。

③ 雇用主責任の明確化

 これまで、企業が外国人を雇用し、利益を得ながら、統合のコストの多くは国や自治体、あるいは地域社会が負っていることで、国民の不公平感が募っていました。永住者や定住者など企業による支援義務がない在留資格の外国人を雇用する企業に、受講時間確保の法的義務(有給での受講を認める)を課します。一定規模以上の企業には費用分担も求めます。雇用主責任の明確化は、国民が感じている不公平感の解消にもつながり、反外国人感情への対応としても重要です。

 なお、特定技能・育成就労制度で働く外国人については、企業による支援義務が定められていますが、実施状況の監督と質の保証が不十分となるかもしれません。受入れ企業が日本語学習や生活支援の第一次的な責任を負うことを前提としつつ、社会包摂プログラムは、企業による支援の不足を補完し、地域社会との接続を図る共通基盤として機能することが期待されます。

④ 質の保証と透明性の確保

 ドイツのBAMFのような認証機関を設置し、全国で一定水準のプログラムが受けられる仕組みを整備します。日本語教師の資格要件と待遇改善も不可欠です。カリキュラムは公開し、「何を教えているか」を明示します。内容の透明性が国民の理解を得るために重要です。

 同時に、プログラム参加者の追跡調査を実施し、KPIを設定して定期的に評価します。KPIとしては、就労率や所得水準だけでなく、子どもの進学率や地域活動への参加状況など、多面的な指標を設定することが望ましいでしょう。国際比較可能なデータ収集を行い、エビデンスに基づく改善サイクル(PDCA)を回します。これは「税金の無駄遣い」批判への対応にもなります。成果を可視化し、統合政策が効果を上げていることを示すことが、国民の支持を得るために不可欠です。

⑤ 双方向プロセスとしての統合

 統合は外国人だけの課題ではなく、外国人と受け入れ社会の双方が関わる双方向のプロセスです。日本人側の「受け入れ準備」として、自治体職員や学校教員、医療従事者への異文化理解ややさしい日本語の研修、雇用・住宅における差別禁止の実効性確保が不可欠だと言えます。社会包摂プログラムの義務化も、この双方向性を前提としています。外国人住民にのみ適応や努力を求めるのではなく、同時に受け入れ側の制度や慣行、コミュニケーションのあり方も見直し、プログラム内容も外国人コミュニティの代表が参画することで継続的に改善していくことが重要でしょう。そのような設計があって初めて、社会包摂プログラムは、双方の権利と責任を支える公共インフラとして機能するでしょう。

 さらに、OECD諸国では「教室外」でのプログラムが重視されています。カナダの会話サークルやミュージアム探訪、ベルギーの地元住民バディ制度、北欧の図書館を拠点とした交流など、地域住民との自然な接点づくりが成功のカギです5。日本でも、プログラムに地域住民がボランティアとして参加する仕組みやプログラムの中に地域住民との交流機会を設けることで、相互理解が進み、排外主義を和らげます。

⑥ 省庁横断的な実施体制と地域の実情に応じた柔軟性

 社会包摂プログラムの成功のためには、出入国在留管理庁、文部科学省、厚生労働省、総務省の連携による省庁横断的な体制が不可欠です。難民支援・中国帰国者支援の経験を生かし、縦割りを超えた統合政策の基盤を作らなければなりません。そのためには、外国人在留支援センター(東京・四谷)の機能拡充が欠かせません。

 同時に、地域の実情に応じた柔軟性も必要です。東京と地方都市、浜松と新大久保と西川口では、外国人コミュニティの規模や構成が全く違います。農村部の技能実習生と都市部の留学生・高度人材では必要な支援も異なります。国が基準とカリキュラムの枠組みを示しつつ、自治体が地域の外国人コミュニティの実情に応じてカスタマイズできる仕組みが望ましいと言えます。都市部は国際交流協会・NPOと協力し、地方は広域連携で対応します。

おわりに

 社会包摂プログラムの創設は、日本が「移民政策を取らない」という建前から脱却し、実態に即した政策体系を構築する歴史的機会と言えます。プログラムの目的は外国人住民に同化を求めることではなく、自治体が直面している教育・医療・防災等の課題を軽減し、共に暮らすための最低限の共通基盤を整えることにあります。

 人口減少社会において、外国人住民は日本社会を支える不可欠な存在です。彼・彼女らが日本語を学び、社会に参加し、能力を発揮できる環境を整えることは、日本社会全体の利益となります。統合政策への投資は、将来の社会的コストを削減する賢明な選択と言えるでしょう。欧州の経験が示しているように、統合政策の不在は社会的分断をもたらし、排外主義が広がりやすい環境を生み出す要因と言えます。

 日本には50年近い外国人に対する定住支援の経験があります。その蓄積を活かし、国際的な経験に学び、日本の実情に合った制度を設計することは可能です。今後の制度設計プロセスには、政府・自治体だけでなく、市民活動や企業の関係者、そして何より外国人住民自身の参画が必要です。「管理」から「統合」へ。このパラダイムシフトを実現できるかどうかが、今後の日本社会の行方を左右します。社会包摂プログラムの策定によって、2026年が日本の統合政策元年となることを期待したいと思います。


1 ドイツの統合コースの詳細は連邦移住難民庁ウェブサイト参照。
https://www.bamf.de/EN/Themen/Integration/ZugewanderteTeilnehmende/Integrationskurse/InhaltAblauf/inhaltablauf-node.html
2 韓国の社会統合プログラムの詳細は出入国・外国人政策本部ウェブサイト参照。
https://www.immigration.go.kr/immigration_eng/1869/subview.do
3 南部悠子「外国人住民への生活支援~生活オリエンテーションと相談体制の在り方を中心に」
 (外務省・国際移住機関共催 外国人の受入れと社会統合のための国際フォーラム、2023222日)参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page23_004412.html
4 日本国際協力センター「外国人就労・定着支援事業(研修)」ウェブサイト参照。
https://www.jice.org/tabunka/
5 リービッヒ・トーマス「OECD諸国における社会的統合」(外務省・国際移住機関共催 外国人の受入れと社会統合のための国際フォーラム、2023222日)参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page23_004412.html

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