コラム

第44回 2022年多文化共生10大ニュース

山脇啓造

日本における多文化共生社会の形成に関連するニュースを選びました。

経団連が提言「2030年に向けた外国人政策のあり方」を公表しました(2月)

日本経済団体連合会(経団連)が提言「Innovating Migration Policies~2030年に向けた外国人政策のあり方」を公表しました。日本の産業競争力強化の観点から、外国人材の活躍を推進する施策を取りまとめました。「戦略的誘致」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「ライフサイクルを通じた支援」の3原則を掲げました。

ウクライナ避難民の受入れと支援が始まりました(3月)

ロシアによるウクライナへの侵攻に伴い、多数のウクライナ国民が国外に避難する中、岸田文雄首相は日本が避難民を積極的に受け入れることを表明しました。全国の自治体や企業、市民団体も次々と受入れに手を挙げ、支援の仕組みづくりに取り組みました。ウクライナ避難民の入国者数は4月をピークに減少傾向にありますが、12月現在で約2,000人となっています。

文科省が高校における日本語指導のための制度改正を行いました(3月)

小中学校で2014年度に導入した日本語指導のための「特別の教育課程」編成・実施の制度を高校にも適用するため、文部科学省が学校教育法施行規則等を改正しました。制度は2023年4月から高校でスタートし、生徒の日本語能力に応じた個別指導を行うことが可能になります。

外国人労働者安全衛生管理の手引きが作成されました(3月)

厚生労働省委託事業として、東京労働基準協会連合会が「外国人労働者安全衛生管理の手引き」を作成しました。「第2章 安全衛生管理とコミュニケーション」でやさしい日本語が推奨されています。また、やさしい日本語を活用した安全衛生管理を行っている企業として、有楽製菓株式会社が紹介されています。手引き作成の背景には、外国人労働者、特に技能実習生の労働災害の急増があります。

JICAが外国人との共生社会の実現に向けた報告書をとりまとめました(3月)

独立行政法人国際協力機構(JICA)が「2030/40 年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究報告書」を取りまとめました。目指すべき方向性として、「日本人も外国人も夢を持って安心して活躍できる豊かなダイバーシティ社会の実現~国際協力を通じた取り組みによる『選ばれる日本』と『開かれた日本』へ」を掲げました。

外国人との共生社会の実現に向けたロードマップが策定されました(6月)

外国人との共生社会の実現に向けたロードマップが策定されました。2018年12月に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が策定され、ほぼ1年ごとに改訂されてきましたが、ロードマップは、日本の目指すべき共生社会のビジョンやその実現に向けて取り組むべき中長期的な課題及び具体的施策等を示す、日本政府にとって初めての5か年計画です。

「多文化共生社会基本法の制定を国に求める長野宣言」が採択されました(7月)

長野県で、2021年の安曇野市議会と長野県議会に続き、2022年3月に松本市議会も多文化共生基本法制定を求める意見書を採択したことを受け、基本法の制定をテーマとするオンラインセミナーが開催されました。外国人集住都市会議と長野県、信濃毎日新聞の後援を得た同セミナーでは、同会議や横浜市からの報告もあり、「多文化共生社会基本法の制定を国に求める長野宣言」が採択されました。

インターカルチュラル・シティに関する書籍が初めて刊行されました(8月)

2008年にインターカルチュラル・シティ・プログラムを始め、多様性を生かした都市づくりを推進する欧州評議会が2021年に日英二言語で刊行したブックレット『自治体職員のためのインターカルチュラル・シティ入門』をもとに、国内外の自治体関係者等が執筆したインターカルチュラル・シティに関する日本初の書籍が刊行されました。

文化庁が「地域における日本語教育の在り方について」(報告)を取りまとめました(11月)

文化庁の文化審議会国語分科会が「地域における日本語教育の在り方について」(報告)を取りまとめました。自治体が日本語教育を行う際の指針になるもので、目指す日本語レベルを「日本語教育の参照枠」のB1と定め、日本語教師や日本語コーディネーターを専任として配置して、地域の支援体制を整備する必要があることを提言しています。

「生徒指導提要」に外国人児童生徒等に対する配慮事項が明記されました(12月)

文部科学省が生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書である「生徒指導提要」を12年ぶりに改訂しました。改訂版においては、多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導の配慮事項の1つとして、外国人児童生徒等やその保護者への支援や、多様性を認め、互いを理解・尊重し合う学校づくりに努めることが明記されました。

<番外編>
「第三者返答」をテーマにしたショートムービーが公開されました(9月)

やさしい日本語ツーリズム研究会(吉開章代表)が、2021年制作のやさしい日本語に関するミュージックビデオに続けて、外国人住民などマイノリティに対するアンコンシャスバイアスの1つである「第三者返答」をテーマにしたショートムービーを制作しました。2021年同様、今回も明治大学の学生らが出演し、ビデオの撮影も明大中野キャンパスで行われました。

カタールでサッカーW杯が開催され、同国の外国人労働者に注目が集まりました(11、12月)

サッカーワールドカップが開催されたカタールで、スタジアムなどの建設現場で多数の外国人労働者が死亡したとする欧米メディアの報道があり、同国の過酷な労働環境への国際的批判が高まり、同国の人口の圧倒的多数を占める外国人労働者の存在にスポットがあたりました。



※やさしい日本語に関するミュージックビデオについては、第37回のコラムでもご紹介しています。
第37回 ミュージック・ビデオ「やさしい せかい」
※「第三者返答」をテーマにしたショートムービーは、下記のホームページからご覧いただけます。
ショートムービー「第三者返答」(やさしい日本語ツーリズム研究会)

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