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コラム

第31回 「やさしい日本語」の英訳はどうしたらよいか

 前回のコラムで、「多文化共生」の英訳について書きました。今回、英訳の難しいもう一つの用語を取り上げたいと思います。それは「やさしい日本語」です。

 やさしい日本語の「やさしい」には、易しいと優しい(相手に配慮した)の二つの言葉がかけあわされています。「易しい」だけであれば、"easy Japanese" と訳せばよいのですが、「優しい」の意味が落ちてしまいます。両方の意味を伝えたければ、"easy and caring Japanese"とか "easy and compassionate Japanese"などとなり、長くて使いにくくなります。"easy" は、厳しくないとかだらしないなど、ネガティブな意味で使われる場合があるのも気になります。また、外国人が学ぶ初歩の日本語を指して、"easy Japanese"と呼ぶ場合もあり、混乱を招きそうです。

 外国に目を向けると、英国や米国では、法律や政府の文書において、明確で簡潔な表現を用いて、難解な専門用語を避ける"plain English"の取り組みが、戦後、進められてきました。米国では2010年に連邦政府機関が出す文書をわかりやすく書くことが法律(Plain Writing Act)で義務付けられました。また、ドイツ政府のホームページでは、英語、フランス語、手話と並んで、"Leichte Sprache" (わかりやすい言語)を選ぶことが可能になっています。一方、Plain Language Association International (PLAIN)という30か国の団体が参加する国際組織(本部:カナダ、2008年設立)もあります。どうやら、諸外国では、"plain language"という用語が一般的なようです。また、ここでの"plain"の意味は、"easy"(簡単な)よりも、 "clear"(明確な)に近いようです。ちなみに、国際標準化機構(ISO)では、2019年から、plain languageの標準化の作業が進行しています。

 一方、日本では、"easy Japanese" が広がりつつあるように思われます。その一因は、やさしい日本語の研究者が用いてきた影響なのかもしれません。あるいは、マスコミの影響が大きいでしょうか。NHKは、外国人や小中学生にわかりやすい日本語でニュースを伝えるために、2012年からNews Web Easyというサイトを運営しています。

 出入国在留管理庁と文化庁が今年8月に策定した「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」では、やさしい日本語を作るときに、まず日本語母語話者にとってわかりやすい文章に書き変えることが示されています。諸外国において取り組まれている"plain language"が移民を含めた一般の市民を対象としていることと共通する考え方と言えそうです。

 私は、今のところ、国際的に一般的な"plain" を用いた "plain Japanese" が望ましいのではないかと考えます。ただし、諸外国で用いられている "plain language"は、主に書き言葉を指しており、日本では話し言葉におけるやさしい日本語の活用も広がっているので、その点は注意が必要です。

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