コラム

ミャンマーの明るい未来へ

ミャンマーの明るい未来へ

特定非営利活動法人ミャンマー日本教育のかけはし協会代表 チョウチョウソー

ミャンマーの現状と若者のことから、在日ミャンマー人の母語教育について書きたいと思います。

1.若者たちの「春の革命」

2021年2月1日、ミャンマーでは、国軍によるクーデターが発生し、前年の選挙は不正だったとして、無効が宣言されました。
 まもなくミャンマー国民は平和的な抗議活動を開始し、クーデター反対をいろんな手法で訴えました。この「春の革命」の中心を担ったのは20代の若者たちでした。Z世代と言われる、IT機器に慣れ親しんだ世代です。
 11年前の総選挙で選ばれた政府のもとで、民主的な改革が始まっていましたから、若い世代は、政治的な解放、経済活動の拡大と成長、社会の活性化、国際的な連携の拡張といった自由と解放の恩恵を体験しつつ、自身の進歩と将来への夢を見出してきました。
 そこにクーデターが勃発し、夢を奪われると感じた若者たちは、次第に抗議の声を高めました。希望を込めて投票した選挙を否定されたことも、怒りを増幅させました。
 Z世代は、お手のもののIT機器を使って、抗議活動を組織化しました。FacebookなどのSNSで情報を拡散し、リーダー間で情報の交換と共有をして、物事を決めていきました。台湾、香港、タイなどの民主化運動の仲間からも学びました。こうした若い人たちが、これからのミャンマーの担い手です。

2.市民の不服従

若者たちばかりではありません。市民には「市民不服従運動」が広がり、あらゆる職種の人々が出勤せず、クーデター体制による社会管理を混乱させました。国軍からの解雇通告にも屈せず、公務員は誇らしげに解雇通知を受け取りました。抗議活動は国民の権利だと信じているからです。市民のこうした抗議活動は軍幹部たちを揺さぶります。
 抗議は全土に及び、今も継続しています。軍や警察が市民に暴力を行使すれば、居合わせた人のスマートホンに撮影され、SNSに投稿されます。そして、皆がそれを見て、反対を確信し、結果的に、市民は一層Z世代を応援することになります。

3.くじけない市民

こうした不安定な社会状況が経済活動、とりわけ困窮している人々に影響を与えないはずはありません。コミュニティーの相互支援が生まれました。これもぜひ伝えたいことです。誰がどう指示したということではなく、おのずと医薬品や医療物資、食料などが集まり、困っている人のために分配されるようになりました。「必要ならばとりなさい、余っているなら持って来なさい」というモットーで、余分なものを必要な人のために分けるという考え方は、社会の相互関係性に一石を投じました。
 新型コロナ感染症はミャンマーでも大流行し、2020年3月の発生以来、375万人以上が感染、15,000人以上が亡くなりました。いったん再開した学校もまたすぐ閉じられました。加えて、クーデターのため、子どもや未成年を含む1,000人以上が命を落とし、逮捕者は6,000人以上に及びます。現在、ミャンマーは困難なときで、国際的な救援が必要です。民主化勢力と軍部との対話の仲介も国際社会に求められます。

4.ともに未来へ

そして、その先、「春の革命」をリードしてきた若者たちにも、体系立った勉学の継続が必要です。民主化勢力と軍部との対立が解消された後の体制には、社会、経済、教育、保健福祉等の多岐にわたる新しい計画が準備されなくてはなりません。
 在日ミャンマー人の子どもたちは、安定した日常の中で勉強を続けています。ITを使えば、国にいる仲間たちとも簡単につながります。情勢が落ち着き、民主的な国づくりが再開されるとき、ミャンマー語やミャンマーの文化も受け継いでいれば、日本で身につけた知識や技術を、より効果的に提供することができますし、両国の関係を今以上に堅固なものにする一助になります。二つの文化の間で育まれたユニークな考え方をも示すことができるでしょう。母語学習は在日ミャンマー人の子どもたちを両国の宝に育てることであると同時に、子どもたち自身の活躍の場を広げることにもなるのです。

著者プロフィール
チョウチョウソー
 在日ミャンマー人のリーダーとして、妻と共に日本語・母語教育のNPOを創設し、さまざまな社会活動に携わる。ミャンマー料理店経営者、国際放送アナウンサーでもある。 

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