コラム

第41回 外国人集住都市会議SUZUKA2021

山脇啓造

 外国人住民が多い13の市町でつくる外国人集住都市会議の首長会議「外国人集住都市会議SUZUKA 2021」が、2022年1月28日に開催されました。今年度の座長都市である三重県鈴鹿市が事務局を務め、当初、鈴鹿市で2021年1月に開催する予定でしたが、コロナ禍によって1年延期となりました。今回は登壇者が鈴鹿市の会場に集まり、そこからオンライン配信することが予定されていましたが、感染急拡大を受けて、登壇者も各地からオンライン接続して行う形となりました。会議はWebexを用いて、YouTubeで配信され、総勢約500人 が参加しました。

 自治体側の参加者は、座長である末松則子鈴鹿市長の他、土屋陽一上田市長、櫻井義之亀山市長、片岡聡一総社市長、鈴木康友浜松市長、前葉泰幸津市長、森智広四日市市長の7市長です。一方、国側の参加者は、出入国在留管理庁政策課の近江愛子課長、同庁外国人施策推進室の木村俊生室長、同庁在留支援課の田平浩二課長、総務省国際室の上坊勝則参事官、文部科学省国際課の小林万里子課長、同省国際教育課の石田善顕課長、文化庁国語課の圓入由美課長、同庁の石田徹文化戦略官、厚生労働省外国人雇用対策課の吉田暁郎課長の9名です。

 会議では、冒頭の末松市長の開会ご挨拶の後、株式会社セブンイレブン総括マネージャーで一般社団法人セブングローバルリンケージの専務理事である安井誠さんの「コンビニエンスストアを多文化共生の拠点に」と題した基調講演がありました。セブングローバルリンケージは外国人材の総合的な生活支援を行うことをめざした団体で、安井氏はコンビニが外国人にとって日本語や様々なビジネス・スキルを学び、キャリア形成につながる場となり、さらに日本人と外国人の交流の場となることを目指すことを提案しました。

 基調講演の後、会員都市首長と省庁担当者が討論する2つのパネル討論がありました。筆者は両セッションのコーディネーターを務めました。第一セッションは「外国人が地域で安心して暮らせるために」すなわち外国人の生活支援がテーマで、末松鈴鹿市長、土屋上田市長、櫻井亀山市長、片岡総社市長が登壇しました。第二セッションは「外国人が地域において多様に活躍していくために」すなわち外国人の活躍促進がテーマで、鈴木浜松市長、前葉津市長、森四日市市長が登壇しました。以前は、省庁の取り組み紹介の時間が長く、討論の時間が短いことが多かったのですが、今回は取り組み紹介の時間は特にとらず、活発な討論が行われました。

 2つのセッションが終わった後、筆者による総括の時間があり、以下の3点コメントしました。

1. 日本語教育の問題が重ねて取り上げられた点が印象的だった。外国人集住都市会議にとって、ここまで日本語教育に焦点をあてて議論したのは初めてではないか。入管庁の有識者会議が国の責務で日本語の学習機会を無償で提供することを提言した重要なタイミングでの議論となった。

2. 多文化共生社会づくりを担うのは、今日のパネル討論に参加した自治体や省庁だけでなく、市民団体や企業など多様なアクターである。特に、今回は、日本語教育を中心に企業の役割への言及が多かった。2020年に「ビジネスと人権」の行動計画が策定されたこともあり、今後、外国人の受入れと共生社会づくりに向けて企業への期待は高まっていくだろう。

3. 多文化共生社会づくりを進める上で、体制整備、特に法律と組織は重要なテーマである。過去20年間、外国人集住都市会議では、省庁横断的な組織をつくるべきだと繰り返し、提言してきたが、多文化共生を推進する法律の制定を唱えるのは今回が初めてである。入管庁の有識者会議の提言には体制整備が抜け落ちているが、法律と組織についてしっかり議論すべきだろう。

 総括の後、末松市長他6市長が「ポストコロナ時代における先行きの不透明な中でも、国と地方自治体等が連携を強化し、垣根のない多文化共生施策を推進することで、外国人住民一人ひとりが安心して生活でき、地域において活躍できるよう」に取り組んでいくことを謳ったSUZUKA宣言を採択して、会議は幕を閉じました。

 総括の時間は10分ほどだったので、本格的な問題提起は行えませんでしたが、今回の2つのパネル討論で議論された論点は、今後の日本の多文化共生社会づくりにとって極めて重要なものといえます。

 第一に日本語教育の推進です。現在、日本では文化庁(国語課)が担っています。一方、諸外国では、例えば、ドイツの統合コース(ドイツ語とオリエンテーション)を担っているのは、内務省の連邦移住難民庁ですし、パネル討論で話題になったフランスも、内務省管轄のフランス移民統合局がフランス語研修や市民講習を担っています。韓国の社会統合プログラム(韓国語・韓国文化と韓国社会理解)を担っているのは法務省の出入国・外国人政策本部です。日本版「統合コース」を担うのは、文化庁でしょうか。それとも入管庁でしょうか。あるいは、「やさしい日本語」のように両庁が連携して取り組むのがよいでしょうか。もし、入管庁が(文化庁と連携して)担うとすれば、日本語教育推進法の所管省庁に文科省と外務省だけでなく、法務省も加わることが望ましかったでしょうか。

 第二に多文化共生施策の推進体制です。2018年7月に「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について」が閣議決定され、法務省が一元的に「外国人の受入れ環境の整備に関する企画及び立案並びに総合調整を行う」こととなり、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が策定されました。同方針には、「その司令塔的機能の下、関係府省が連携を強化し、地方公共団体とも協力しつつ、外国人の受入れ環境の整備を効果的・効率的に進める」ともありますが、入管庁が開設されてからのほぼ3年間、「総合調整」を担うことはできても、「司令塔」となって、関係府省を束ねているといえるでしょうか。そもそも、入管法にも法務省設置法にも、外国人支援や共生社会への言及が全くなく、「司令塔」を担う法的根拠が弱いといわざるをえません。筆者は2002年以来、多文化共生社会基本法の制定を唱えてきました。家族帯同を認める在留資格「特定技能2号」の運用が始まろうとしている今こそ、多文化共生社会づくりの基本法が必要ではないでしょうか。

 第三に省庁間、特に総務省と法務省の連携です。「地域における多文化共生推進プラン」(2006年)を策定して以来、総務省は自治体の多文化共生施策を支援してきました。2017年には全国の自治体等の取り組みの好事例を集めた「多文化共生事例集」を作成しました。2020年にプランが改訂され、2021年には新しい事例集も作成されました。一方、2019年4月以来、入管庁は全国の自治体が「一元的相談窓口」の整備・運営を支援する外国人受入環境整備交付金事業を進めています。また、2020年7月には、外国人支援の拠点として外国人在留支援センターが開設されました。今後は、総務省と法務省(入管庁)がより密接に連携して自治体支援に取り組むことが望ましいと思います。特に、コロナ禍で浮き彫りになった情報の多言語化の課題に関して、総務省の外郭団体である自治体国際化協会と外国人在留支援センターの連携が重要になっているといえます。


外国人集住都市会議関連ページ
外国人集住都市会議SUZUKA2021
https://www.shujutoshi.jp/2021/index.html

過去の外国人集住都市会議に関する筆者の記事
外国人集住都市会議おおた2018(2019.3.13)
https://www.clair.or.jp/tabunka/portal/column/contents/114402.php
外国人集住都市会議と多文化共生2.0(2014.11.26)
https://www.jiam.jp/melmaga/kyosei/newcontents92.html#000496
多文化共生都市サミットと外国人集住都市会議(2012.11.28)
https://www.jiam.jp/melmaga/kyosei/newcontents68.html#000559
外国人集住都市会議いいだ2011(2011.11.22)
https://www.jiam.jp/melmaga/kyosei/newcontents56.html#000577
外国人集住都市会議東京2010(2010.11.24)
https://www.jiam.jp/melmaga/kyosei/newcontents44.html#000561
外国人集住都市会議(2008.10.22)
https://www.jiam.jp/melmaga/kyosei/newcontents19.html#000521
外国人集住都市会議(2007.12.20)
https://www.jiam.jp/melmaga/kyosei/newcontents09.html#000506
外国人集住都市会議(2005.11.14)
https://blog.goo.ne.jp/yamawaki_keizo/e/be13a3775a9ac8530248f2f9dd047e7a
外国人集住都市会議は「お国自慢」?(2004.12.27)
https://blog.goo.ne.jp/yamawaki_keizo/e/a6fcdba487dedd7d44c49305231a67e3

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